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〈第十話 本日は定休日〉

 


「ムツキちゃん、今日一日、付き合ってもらうわよ!」



 食後のコーヒーを飲んでると、ジュンさんが珍しく語尾を強めて迫ってきた。



 セッカとナナはホットミルク。シュリナとココはカコアを飲んでいる。サス君はカフェオレだ。双子以外は、相変わらず、体に悪いものを飲んでいる。



(ていうか、武器がミルクを飲むのってありなの? そもそも、朝ご飯も食べてたし。平気そうに飲んでるから、ありなんだろうけど……)



 それにしても、いきなり幼女(霊刀)が二人増えても、ジュンさんはいつもと全然変わらない。まぁ、幼女の正体気付いてると思うけどね。にしても、ジュンさんの懐の大きさに、改めてすごいなと感心した。



「どうかしたの?」

 コーヒーを飲むのを止めて尋ねる。



(何か、手伝って欲しいことでもあるのかな?)



 ジュンさんが休日に、そう切り出してくるのは珍しかった。



 まだジュンさんには話してないが、実は二、三日後に出発しようと考えていた。旅の準備はほぼ整ったしね。よく休んだし。



 皆と相談して、次に行くのは翠の大陸に決めた。



 翠の大陸は獣人が統治する大陸だ。



 グリーンメドウを拠点にしたとしても、一度旅に出たら、しばらくは帰ってこれない。だから今日は、日頃お世話になっているジュンさんのお手伝いでもしようかなと思っていた。



 だが返ってきた言葉は、意外なものだった。



「もうすぐ、ムツキちゃんは、五聖獣様たちに会いに行く旅に出るでしょ。その前に、どうしても覚えておいて欲しい魔法があるの!」



 私はジュンさんに何も話していない。だけど、ジュンさんは全てを知っている。



 シュリナが、五聖獣の一角スザク様だってことも。後一年足らずで、結界に穴が空いてしまうこともだ。



 そして唯一、五聖獣だけがその穴を塞ぐことが出来ることも知っている。当然、私が何をすべきなのかもだ。



 何故、ジュンさんが知ってるのか。



 それは分からない。私は、ジュンさんのことを何も知らないから。ココが話したかもしれないし。伊織さん(♀)が話したのかもしれない。



 ただ唯一、私が知ってるのは、ジュンさんが伊織さんの友人だったことだけだ。それだけで十分だった。過去なんて知らなくてもいい。私にも人に語りたくない過去ぐらいある。私にとって過去など、どうでもいいことだ。



 だから、尋ねようともしない。それはココも同じ。何故ココが私の従魔になってくれたのかも、私は訊かなかった。



 なので、今回も訊かない。



「覚えて欲しい魔法って何?」

 私はウキウキしながら尋ねる。



「ウフフ……何だと思う? それはね、【転移魔法】よ!!」



「【転移魔法】!!」



 私は思わず大きな声を上げ、立ち上がった。テーブルに手をついて身を乗り出す。



(転移魔法って、あの転移魔法だよね!! 瞬時に移動できる魔法。ファンタジーの世界で必ず出てくる魔法だよね!! 最高!! 魔法使いのジュンさんなら、習得しててもおかしくないよね。習いたいです!! 今すぐ習得したいです!!)



「宜しくお願いします!」

 私はジュンさんに頭を下げた。



「勿論! お茶を飲んでから始めるわよ!」



「はい!!」



 私はコーヒーを一気飲みしてから、二階の部屋に置いてた鞄を持ってきた。



「セッカ、ナナ、双刀に戻って!」



「「はい。主様」」



 双刀に戻った霊刀を、私は鞘に戻す。



(よし、準備万端!!)



 満腹なシュリナは飛ぶのがしんどいようで、私の両肩に肩車のように座り、冷たい手を頭に回している。……重たいんだけどなぁ。ココとサス君は足下で待機。そして、私の前にはジュンさん。



「魔法を発動する前に、まず注意点ね。いい、ムツキちゃん、【転移魔法】は瞬時に移動出来る便利な魔法だけど、便利な反面、魔力の消費が大きいの。まぁその点は、ムツキちゃんは大丈夫だと思うけど。……行ける範囲は、術者が行ったことがある場所に限定されるわ。それと、術者の熟練度次第によって、同行する人数も限定される。無理して移動すると、出た先がとんでもない場所だったりするの。昔知り合いが、無理して移動してね、二階程の高さの空中に放り出されたの。結局、足を骨折したわ。まだ下が普通の地面だったからよかったけど、それが貴族の塀の上だったらって想像してみて。下手したら、串刺しにされて死んでもおかしくない。【転移魔法】はとても危険な魔法なの。その事だけは覚えておいて」



 普段は見せない厳しい表情で、ジュンさんは私に説く。



【転移魔法】に限らず、私は魔法は危険なものだと思っている。それこそ、回復魔法でさえもだ。扱い方一つで毒にも薬にもなる。それが魔法だ。魔法って、一つの奇跡の形じゃないかなって私は思ってる。奇跡は時に人を魅了し惑わすこともある。自分自身さえも。



「先生、質問!」

 私は左手を上げる。



「はい。何でしょう、ムツキちゃん」



「どうやったら、無理してるって分かるんですか?」



「魔法を発動したら分かるわ。行き先の場所の名前が赤くなるから」



(行き先が赤くなる?)



 私は首を傾げる。



「やってみたら分かるわ。さぁ、始めるわよ! 【転移魔法発動 行き先は〈ホムロ村〉】」



 足元に浮かび上がった魔方陣は、私たちを包む。



 そして、私たちの姿はうみねこ亭から消えた。








 ◇◆◇◆








 出たのは森の中。周囲に、人の影はない。



(出るところも、考慮しなくちゃいけないんだね)



 わざわざ、森の中に出たってことは、そういうことなのだろう。



「ムツキちゃん、今日は一日付き合ってもらうわよ!」



 目をキラキラ輝かせながら、ジュンさんは私の腕を掴んだ。そして、ホムロ村に向かって引っ張って行く。



「今から、温泉卵を食べに行くわよ!!」





 おはようございます。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 グリーンメドウ編終了!!


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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