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第五話 異世界版旅のお供

 


 旅のお供。


 この世界において、それはお弁当でもお菓子でもない。ましてやバナナでもない。当然某旅行誌でもない。


 それは、ずばりポーションである。


 ポーションは回復薬のことだ。十センチぐらいの小瓶に入っている。


 命を脅かすような怪我や病気には効かないが、ちょっとした怪我や、食あたり程度なら十分対応出来る。ちゃんとした薬なのだが、意外にどこでも売っている。露天にさえ出品されているのだから、不思議だ。


 但し、店によって効能と売値に差があるので注意が必要。グリーンメドウだと、やっぱり、ゼロさんのお店の品が一番品質が良いだろう。特に効能が。まぁ値段は、効能に比例してるけどね。それがかえって良心的だと思う。


 一応、【神獣森羅の化身】の称号を持ってるから、毒や麻痺の耐性はあるし、身体強化の付与も付いてるから、よほどの魔物でない限り私を傷付けることはまず出来ない。よほどのレベルっていうのが今いちよく分かんないけど。でもまぁ、打ち身や擦り傷は出来るし、ココやサス君、それにシュリナには必要だから、ある程度買っておこうと考えてた。


(二十本ぐらい必要かな……? それ以上は荷物がかさばるし、重たいよな。う~~ん。悩む)


『だったら、自分で作ったらどうだ?』


 ギルドからの帰り道、ゼロさんのお店に向かいながらそんなことを考えていると、シュリナが念話で話し掛けてきた。


 そうそう、これは余談だが、実はシュリナも念のために私の従魔としてギルドに登録しておいた。実は昇級の他に、ジェイさんがマスター室に呼んだ理由の一つがこれだったんだよね。


 さすがの私も、五聖獣様を!! って思ったよ。不敬ですまないだろうって。しかしこれから先、旅の中で、もしシュリナの姿を、赤竜レッドドラゴンの方を人に見られた時の混乱を考えたら、従魔登録しておいた方が、混乱が少ないと判断した結果だった。シュリナも嫌な顔をせずに応じてくれたし。まぁ、いいかな。


 因みに、この世界においてドラゴンは、神聖で且つ畏怖の対象らしい。どこの世界も同じだよね。


「自分で作れるの?」


 思わず、声に出して訊いてしまった。その声に、サス君とココが反応した。二匹とも私を見上げている。相変わらず可愛い。


「シュリナが、ポーション手作り出来るって言ったんだよ」


 サス君とココに説明する。


『材料と水さえあればな』


 もし自分で作れるのなら、願ってもないことだ。 


 最悪手持ちの材料がなくなったら、薬草を途中で採取すればすむ話だし。ポーションの材料の薬草は道端に生えてるんだから、原材料はタダ。水は水魔法を使えばいいんだけど……。魔法に関しては正直ちょっと不安かな。後必要なのは小瓶か。小瓶は雑貨屋さんで買ってもいいし。綺麗に使えば、使い回しも出来る。


「一回、作ってみようかな」


 取り合えず、ゼロさんのお店で薬草を買わなきゃね。








 ◇◆◇◆◇







 という訳で、早速ゼロさんのお店にやって来ました。


 カランカラン。


 お店のドアを開けると可愛く呼び鈴がなった。


「いらっしゃいませ。ムツキちゃん」


 出迎えてくれたのはゼロさんだった。


 相変わらず、キラキラしてるよね。王子様風の容姿も健在だ。ん? 外が騒がしいな。後ろを振り返ると、ドアに張り付く複数人の女性の姿。思わず、少し引いてしまった。店内に入る時は誰もいなかったのに、ゼロさんが出てきた瞬間どこからか出てきた。この前もそうだったよね……。


「ムツキちゃん、疲れとれた?」


 ドアに目線を向けたゼロさんが苦笑しながら尋ねてきた。


「うん。ゆっくり眠れたから」


「それはよかった。……で、僕に会いに来てくれたのかな?」


「そうですよ。ゼロさんに会いに来たんです」


 一瞬、ゼロさんの目がビックリしたように見開く。まさかと思ったようだ。


「あのね。ゼロさんに教えてもらいたい事があるんだけど。……ポーションの材料ってどれかな? ヒール草の他に何か必要な薬草ある?」


「まさか! ムツキちゃん、ポーション作るつもり?」


 意外だったのだろう。見開いていた目が更に見開く。


「うん」


 私は頷く。


「作り方知ってるの?」


 ごもっともな質問だ。


「私は知らないけど、シュリナが知ってるから」


 ゼロさんはシュリナの存在を知っている。っていうより、バレた。帰路の途中で。でも、シュリナがスザク様だってことは知らない。ただの赤竜レッドドラゴンの赤ちゃんを保護したと思っている。


 何故、保護かって?


 S級ランク【ドーンの森、魂の解放】を攻略したからだ。


 かつて、森を生活の基盤にしていた民がいた。


 民が崇めていたのは、赤竜レッドドラゴン


 ところが赤竜を手にいれようとした悪者が、森の民を襲い惨殺した。森の民はまだ子供だった赤竜の幼体を守るために、結界を張った。


 その結界は赤竜の幼体を守ることには成功した。


 成功したが、惨殺された民の魂までその土地に縛り付けることとなってしまった。民の魂を解き放つためには、赤竜の結界を解かなければならない。


 私の前に現れた黒い魔獣は、森の民に代わって結界を守っていた。いつか現れるかもしれない、主の結界を解く能力を持つ者が現れるのをーー。


 つまり、能力を持つ者が私で、結界の中で長い間眠っていたのがシュリナだった。ということだ。


 これが、公表された表向きの話。真実は少し違うけどね。


「ドラゴンは物知りって聞くからね。一応、ヒール草と水があれば出来るよ。僕のところは、相乗効果で効能を上げるために、色々な薬草やキノコの乾燥したものをいれてるね。はい。お茶をどうぞ」


「頂きます」


 冷たい紅茶を飲みながら一息つく。


 ヒール草と水だけで出来るんだ。意外に簡単? と思ってたんだけど。


「材料はそれだけですむけど、作るのは難しいよ。シンプルなだけに」


「その点なら大丈夫だ。小僧が心配する必要はない」


(王子様を小僧扱いって……)


 苦笑する。ゼロさんは特に不愉快に思っていないようだ。よかった。


『……ムツキは、あのような男が』


『あのような男?』


 意味深な言葉を投げ掛けられた。


『…………』


 シュリナは無言のままだ。


「ムツキちゃん、一応、ヒール草を乾燥させたものを扱ってるから、それでいいかな」


 紙袋一杯のヒール草を手渡してくれる。


「うん。それで大丈夫。乾燥させても効能は同じなの?」


「乾燥させた方が効能は上がるよ」


 ヘェ~~。それはいいこと聞いたね。乾燥させた方が日持ちもいいし、何よりも荷物が軽くてすむ。


「一回、どれぐらいの量を使うの?」


「葉っぱ五枚ぐらいかな」


 葉っぱ五枚ね。早速、作ってみようかな。


「ありがとう、ゼロさん! お茶ご馳走さまでした」


 お礼とヒール草の代金銀貨一枚を支払ってから、店を出ようとドアに手を添えた時だった。


「ムツキちゃん。一度作れたら、持って来てもらっていいかな?」


「いいよ!」


 首を傾げながらも快く承諾した。


 帰りに、小瓶買って帰ろう。





 お待たせしました。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m

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