第三話 念話を覚えました
「こっち側は混んでるね」
換金ブースと違ってこちらのブースは結構賑わっていた。十人以上並んでいる。
しょうがないよね。このブースは依頼を請けるだけでなく、レベル十五になるまでの月一の報告なども一括で行ってるんだから、混んでて当然だ。三十分は待つかな……。
「そんなに待つのか!?」
シュリナが少々うんざりした様子で尋ねてくる。
「待つよ。一人、一人の対応時間は換金ブースより短いけど、人数がその分多いからね~~」
小声で答える。
にしても、小声で話すのって思いの外気を使う。人が密集してると特に。トーンを落とさないと、悪目立ちするし。声を出さずに会話出来る方法があればいいんだけどなぁ……。
「あるぞ」
「あるの!?」
思わず、大声で訊いちゃったよ。
前に並んでいた大柄な男が怪訝そうに振り返る。気まずさから、誤魔化すようにニコッと微笑むと、男は慌てて前を向いた。
(変な子って思われたかな)
小さく溜め息を吐く。
だけど、その様子を見ていたサス君とココは違ったみたい。「「あーー」」という意味不明な声を上げる。
(何? どうかした?)
サス君とココに訊こうとした時だった。
『…………聞こえるか?』
シュリナの声が聞こえた。
ちゃんと、はっきりと聞こえているのに、耳元の方から聞こえてこない。直ぐ隣にシュリナが居るのにだ。私はどこから聞こえてくるのか、まるで分からなかった。強いて言うなら、頭に直接響くって言った方が近いかな。正直、不思議で気持ち悪い。
『気持ち悪いとは、ずいぶんな言い方だな』
口調とは違い、その声は幾分か笑いを含んでいた。
(どこから聞こえてるの?)
『念話だ。ムツキの意識に直接話し掛けている。ムツキにも出来るぞ。やってみろ!』
『なるほど! テレパシーみたいなものね。……だけど、簡単に言うよね。やってみろって。やり方教えてもらってないのに』
声に出さずに文句を言う。だか意外と、
『出来ているぞ』
出来てたみたい。意外な言葉が返ってきた。
「えっ?」
シュリナの言葉に、また思わず声が漏れる。
あっ、また前の人が振り向いた。慌てて、誤魔化すように笑みを浮かべる。男は顔をしかめて前を向く。完全に、私変な人扱いされてるよね……。苦笑しか出ない。
またしてもそのやり取りを見ていたサス君とココは、「「最悪……」」 と声を揃え呟く。その声は私には聞こえない。
『出来てるの?』
『ああ。出来ているぞ。ムツキは筋がいい。元々我と〈魂の契約〉を交わしているのだ。意識を繋げるのは造作もないことだ』
『へ~~。……だったら、サス君とココとも出来る?』
サス君とココは、一応従魔として登録している。たからといって、街中で大声を発するのは出来る限り避けたい。目立ちたくないからね。グリーンメドウのような長閑な街ばかりではないだろうし。出来る限り、目立つ行動は控えたい。面倒なトラブルに巻き込まれるのは絶対嫌だし。
『……可能だ。元々、二頭共ムツキの従魔だからな。契約という名でムツキと繋がっている。ムツキを媒介にして、我と同じように念話を交わすことは出来る』
『分かった。ありがと、シュリナ。サス君とココに訊いてみる。もし、いいって言ってくれたら、晩にでもお願い』
『分かった』
快く、シュリナは承諾してくれた。
シュリナとの念話が一段落した時だった。
「……チバ様」
私の名前を呼ぶ声が隣から聞こえた。隣を見ると、四十歳ぐらいの男性が立っていた。
「お尋ねしますが、ムツキ=チバ様で間違いありませんか?」
丁寧な口調で尋ねてくる。
小さく頷く。男性の物腰はとても柔らかだったが、それがかえって緊張を生む。意識しない何か、本能的なものがそうさせた。
そんな私の様子を見た男性は、フッと口元に笑みを浮かべると要件を述べた。
「ムツキ様。ギルドマスターがお呼びです。すみませんが、マスター室まで一緒に来て頂きませんでしょうか?」と。
拒否権はなさそうだ。
「分かりました。一緒に伺います。その代わり、私の従魔も一緒ですが、宜しいですか?」
「勿論、構いません。それではご案内致します」
男性は微笑むと、私の数歩前を歩きだす。私はその背中を見ながらついて行く。途中、係員の人が頭を下げるのを何度も見た。
(もしかして、副マスター?)
ついて行けば分かることだ。
男性は階段を上がる。どうやら、二階にマスター室があるようだ。そのままついて行くと、廊下の一番奥のドアの前で立ち止まる。そして、ドアを三回ノックした。
「チバ様をお連れしました」
「入れ」
中から、若い男性の声が聞こえた。
マドカ村以来かな。そんなに時間が経ってないのに、懐かしいと思ったことは皆には内緒ね。
お待たせしました。
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございますm(__)m
長くなりそうなので、ここで一旦切りました。
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




