表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/316

残された者たちは


 

 


 暗闇の中へ、魔獣と共に姿を消した少女。


 その場に残った者たちは、為すすべなく、少女を見送る事しか出来なかった。


 ショウたちやゼロは、一度、少女ムツキに命を助けてもらった。そして今回も、少女ムツキの身を犠牲にして自分たちは助かった。


 ーー不可抗力だった。仕方ない。


 ギルドに報告したら、そう言われるかもしれない。


 だが、残された者たちは違った。彼らは自分自身が許せなかった。


 まだ痺れが残る体で、全員、自分たちの不甲斐なさにうちひしがれている。


 ショウたちがどうにか動けるようになったのは、ムツキが遺跡の中に消えてから、しばらくたってからだった。


 まずはじめに動けるようになったのは、意外にもゼロだった。


 次にショウが動けるようになり、それから一時間ほどで、全員が動けるようになった。


 動けるようになったといっても、まだ少し指先が痺れた感じが残っている。武器を握れるまでは回復していない。手先の痺れが早くとれるように、握ったり開いたりを繰り返していると、いきなり視界の端に、フェイが駆けだすのが見えた。


「「「「フェイ!!!!」」」」


 フェイはその声を無視して階段を駆け上り、遺跡に突進しようとしていた。


 遺跡内に足を踏み入れようとした瞬間、何かに激しく体をぶつけた。衝撃を受けた体は、そのまま後方へと勢いよく弾き飛ばされる。


「なっ!!」


「「「「フェイ!!」」」」


 階段下まで弾き飛ばされ転がるフェイのもとへ、全員が慌てて駆け寄る。


「うっーー」


 咄嗟に受け身をとったとはいえ、背中を強打したフェイは痛みに顔を歪めた。呻き声が漏れる。


 アンリは慌ててフェイに回復魔法を掛けた。


 ゆっくりと上半身を起こしたフェイは、憎らしげに遺跡の入口を睨み付けた。


「……結界だね」


 ゼロも遺跡の入口を睨み付けている。しかしその口調は、目付きと反して穏やかだった。そのアンバランスさが、周囲にいるショウたちをゾクッとさせた。


「誰が結界を?」


 ショウが疑問を口にする。


「さぁ……ただ、この遺跡は当たりかもしれない」


((((当たり!! まさか!?))))


 ゼロの言葉にショウたちは息を飲む。


「遺跡の調査はされたのでは?」


 この遺跡は何度か調査された筈だ。だけど、特別なものは何も発見、発掘はされなかったとショウたちは聞いていた。ギルドもそう発表していた筈だ。


 それに毎年、大勢のハンターが白い花(蘇生草)を求めてこの森に入って来る。自分たちもその一人だ。


 なのに、当たりとはあり得ないのでは? ショウたちがそう思うのも当たり前だった。


「S級ランクを有に越える、知的能力を有する魔獣。突然張られた高度な結界。ドーンの森の薬草の効能が高いこと。……まぁ、あくまで僕の想像だけどね」


 ゼロは飄々(ひょうひょう)と答える。


 あまりにも、突拍子のない話だ。しかし、誰も否定する者はいなかった。確かにおかしい。何かある。ハンターとしての本能がそう告げていた。


 様々な思いが皆の胸を過る。分からないことが多すぎた。


 一番の謎は、何故魔獣は、ムツキを連れて行ったのかだ。


(殺して喰うのなら、別に遺跡の中に入る必要もない。その場で喰えばいい。遺跡内に幼獣がいるのなら、餌は沢山あった筈だ。ましてや、餌は動けない。喰い放題だろ。ムツキ一人を連れて行く意味が分からない。何か特別な用でもあったのか。まさか、魔獣にか……)


 あくまで、これは憶測だ。ゼロはこれ以上何も言わず、遺跡の入口を見詰めた。


 色々な思いを胸に抱きながら、ショウたちも遺跡の入口を見詰めている。


 そんな中で只一つだけ、共通した思いがある。


 それは、自分たちを助けるために、単身遺跡に乗り込んだ少女ムツキの安否だった。













 遺跡内に足を踏み入れた瞬間、回廊の脇に備え付けられていた松明の明かりがともる。


 途端、私の目の前には、真っ直ぐに続く薄暗い回廊が現れた。


(遺跡って、こんなに広かった? それにしても、タイミングがいいよね。他に誰かいるの? だったら、誰が灯してるのかな? まさか、それはないよね。って事は、これ魔法だよね。それも高度な……)


 次々に浮かぶ疑問。


 それを魔獣に直接訊く勇気は、さすがになかった。答えが出ないまま、私はサス君とココと共に魔獣の横をついて歩くだけだ。


 ただ……分かっている事もある。


 どうやら魔獣は、私たちを攻撃するつもりも、食べるつもりもないようだ。【神獣森羅の化身】という称号のおかげで、大きな怪我をおっても死ぬ事はない。だけど……さすがに、食べられたら絶対アウトだよね。


(……まぁ、それも今のところはかな)


 やろうと思えば、いつでも魔獣は私を簡単に殺せる。


 この中で一番魔獣が強いことが、隣にいるだけでもひしひしと伝わってくる。今考えているこの瞬間、魔獣の気が変わっても、ちっともおかしくない。緊迫した緊張が支配していた。


 生き残って遺跡を出るために、私は必死に頭を働かせる。


(今は大人しく、魔獣に付いて行くしかない)


 魔獣が不意に足を止めた。そして天井を仰ぐ。


 自然と私は魔獣の横顔を下から見る形になった。心なしか、魔獣がニヤリと笑ったかのように見えた。





 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 今回、前半はパーティー目線で書いてます。ちょっとした、フラグも立ててみました。後で、ちゃんと回収します("⌒∇⌒")


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ