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第七話 風の刃



 周囲を切り裂くような悲鳴が、ドーンの森に響いた。


「ーーーー!!」


 サス君とココに目配せをするより早く、反射的に、私は悲鳴が上がった方向へと走り出していた。


「ムツキ!!」

「睦月さん!!」


 駈け出した私の横にサス君が、肩にココがへばり付いている。ココの爪でもローブに穴は開かない。


「睦月さん!! 前方から血の匂いがします。気を付けて下さい!!」


 サス君は注意すると同時にスピードを上げ、私のやや前方に躍り出る。


(あそこね!! )


 木々の間から、魔獣に襲われているパーティーが見えた。


 怪我をしている仲間を庇って、皆、前方の魔獣ばかりに気をとられている。だから全く気付いていない。自分たちが魔獣たちの罠にかかっていることにーー。


 じりじりと背後から、魔獣の一頭が気配を消し、姿勢を低くし獲物ににじり寄っている。そして今まさに、跳びかかろうとしていた。


(普通の攻撃じゃ間に合わない!!)


「サス君!! あの人たちの周りに結界を張って!!」


 鋭い声でサス君に指示を出す。足を止めると、右手を背後にいる魔獣に向けた。魔力を右手に集める。


 正直自信がない。だけど今は、そんな悠長な事は言っちゃいられない。やるしかない!! 


 掌の前、空中に緑色の魔方陣が現れ発光すると同時に、【ウィンドボール!!】と胸の内で唱える。


 放たれた数本の風の刃は、木々の幹をえぐりながら、パーティーを背後から襲おうとしていた魔獣に無慈悲にも襲い掛かかった。


「ギャン!!!!」


 魔獣は咄嗟のことで避けることが出来ず、断末魔と共に、血飛沫を撒き散らしながら崩れ落ちる。


 その時になって、自分たちの背後に魔獣がいたことに、彼らは気付いた。しかし、まだ彼らの前には複数の魔獣が唸っている。膠着状態だった彼らと魔獣との緊張が、一瞬途切れた。後方に気をとられ、緊張の糸を解いたのは彼らの方だ。魔獣たちはそれを見逃さなかった。


 それを合図に、一斉に彼らに跳び掛かるーー。


「サス君!!!!」


 鋭い声を放つより前にサス君が雷を放つ。跳躍した魔獣たちの体を的確に狙って落ちる。


 この瞬間、立場が逆転した。


 魔獣たちは落雷の衝撃に、「ギャン!!!!」と悲鳴を上げ、地面に体を叩きつけられた。ピクピクと体が痙攣を起こし動かなくなったものもいたが、気丈にも立ち上がろうとする魔獣もいる。


 目の前にいる魔獣は手負いだ。明らかにハンターである彼らの方が優位に立った筈なのに、彼らは魔獣に止めを刺す事を躊躇ためらい止めが刺せなかった。それどころか、一歩踏みだす事すら出来ずにいた。


 手負いの魔獣ほど怖いものはないってことを、彼らは身に染みてよく知っていたからだ。


 少なくとも、この場所にいる時点で、レベル15以上のパーティーの筈だ。実戦はそれなりにこなしている。こなしていたからこそ、踏みだせなかったのだ。


 魔法なら接近戦をしなくてもすむから、危険を冒すリスクも少ない。比較的危険性が少なく倒せるが、残念な事に、彼らの中にそれほどの攻撃魔法を扱える者はいなかった。辛うじて魔法が使える者は、傷付いた仲間のために、その魔力のほとんどを使っていた。


「サス君!!」


 私とサス君の間に余計な言葉は必要ない。名前を呼んだと同時に、私はニ度目の【ウィンドボール】を放った。


 少女の声を彼らは確かに聞いた。その直後、強烈な風の刃がまたも自分たちを避け、周囲を切り裂く。


 木々を。草花を。そして、手負いの魔獣を切り刻む。


 魔獣は断末魔を上げ、地面に沈んだ。もう、ピクリとも動かなくない。青白い光りが、パーティーの周囲を照らす。


「…………助かったのか……」


 一番前で深手を負いながら、剣を構えていた男の口から声が漏れでる。彼らは今自分たちに何が起きたのか、いまいち把握出来ずにいるようだ。


 私は放心していた彼らに「大丈夫ですか?」と声を掛けた。サス君は彼らを驚かせないように、中型犬ぐらいの大きさに姿を変える。


「……君が………助けてくれたのか…………?」


 私は軽く頷く。


「ありがとう。助かったよ。君がいなければ、全滅してただろう」


「お礼はいいです。ほんと、間に合って良かった。あっ!? ちょっと待って。今から回復魔法を掛けるから」


【ヒール】


 傷がみるみるうちに治っていく。傷口も痕も綺麗に消えた。


 またしても、彼らは何故か言葉を失っている。口開いてるよ……? 注意した方がいいのかな?


 私は知らなかった。無詠唱で魔法を使うっていう意味を。


 復活した彼らはこれ以上潜るのを止め、私はここで別れた。彼らは入口に立つ係員に詰め寄った。私が別名〈銀色の冒険者〉だと聞きだすのは、別れてから三十分後である。





 彼らが私の二つ名を知った頃、私はヒール草の群生地を偶々見つけて、意気揚々と採集していた。






 お待たせしました。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 今回は短めです。


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪

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