表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/316

第四話 地図に載らない村

 


 こんな田舎の道まで、きちんと舗装されている。


 多少ガタガタと揺れるが、荷馬車は一度も脱輪することなくスムーズに進んだ。マトガ村までの道もそうだった。細かい所まで舗装されてるのは国が平和で豊かな証拠だと思う。


「ムツキちゃん。もうすぐ、ドーンの森に到着するよ」


 今回の依頼の雇い主であるゼロが、何故か馬の手綱を器用に片手でさばきながら前方を指さす。


(……凄い……でも、これって森なの……?)


 圧巻だった。ゼロの隣に座っていた私は、遠目からでもはっきりと広がるその光景に目を奪われる。ぽかんと口が開いたままだ。


 小高い丘を越えると、緑の壁が突然現れた。ドンッてね。そう、壁だ。壁! 森っていうより、樹海。見た事ないけど。そして緑の壁の前に、立派な村が出来ていた。


 ーー地図上では載っていない村。


 有名なダンジョンや、B級ランクの仕事のすぐ側で出来る村だ。マドガ村に出来ていたのと規模が違う。断然、こっちの方が立派だ。


「ゼロさん! 村が出来てる!! 凄い。凄いです!!」


 思わず二回言ってしまった。興奮した私は、ゼロの服を掴み引っ張る。


「早く行きたいのは分かったから、服を引っ張らないように。危ないからね」


 ゼロが微笑みながら注意する。私は「すみません」と謝ると、慌てて手を放した。


 そんな私とゼロの様子を荷台から眺めている四人。


「はぁ……。ムツキちゃんって、癒されるわ~~。女の子が一人いると華やかになるわね」


 うっとりとしたアンリが独り言のように呟く。荷台にいた全員ははっきりと聞こえていた。


「「「…………」」」


 誰も返事をしない。何とも言えない異様な空気が漂う。一緒に乗っている他の三人は若干引き気味だ。


 興奮していた私は、荷台の異様な空気に全く気付かない。しかし、サス君やココは勿論気付いていたし、聞こえていた。サス君とココは私を見上げると、「またか」と大きな溜め息を吐くのだった……。


 それはさておき、道中、危険な魔物や強盗にでくわすこともなく、私たちを乗せた荷馬車は無事ドーンの森に到着した。






「ーー!! 久し振りだな、ゼロ。今回はお前さんも潜るのか?」


 村に入る門を守っている傭兵が声を掛けてくる。その声は、何かにおどおどしているような、落ち付きがないような感じがする。目線も明らかにズレてるような……。ゼロさんが直視出来ないのかな? 美しさも罪だね。


「ああ。どうしても欲しい薬草があるからね」


 ゼロは慣れているのか、苦笑いを浮かべながら答える。


「で、後ろに乗ってるのが、雇ったハンターたちか?」


 傭兵は荷台に乗っているショウたちに目線を向けた。言いながら、ショウたちのハンターカードを確認している。まず、戦士のショウが見せ、最後に獣人のアキが見せた。


「ああ。それと、隣に乗っているこの子もね」


 そうゼロが答えると、傭兵は一瞬驚くが直ぐにゼロの冗談だと思ったようだ。


「ゼロ、一瞬、本気にしちまったじゃねーか! 隣のその子、お前の妹か?」


(ゼロさんの妹!? 滅相もありません!! こんな美形な人の妹なんて! 普通の容姿をしている私が!?)


「違います!! 私もハンターです」


 そう力強く否定した私は、自分のハンターカードを懐から取り出す。


「シルバー!!!!」


 傭兵は私のハンターカードを手に取り、完全に固まっている。当然そうなるよね……。


「……シルバーで冒険者…………シルバーで冒険者……」


 何度も繰り返し、呪文のように呟いている。よほどショックだったのか、焦点が定まっていない。


 ゼロはそれを見て軽く溜め息を吐くと、体を傾け、固まっている傭兵の手からハンターカードをひょいと取り上げると、私に渡す。


「それじゃ、通るよ」と、まだブツブツ言っている傭兵に一言声を掛けてから、馬のお尻を軽く叩いた。


 傭兵はまだ固まったまま、呟いている。


(シルバーカードの威力って……なんか、怖いな……)


 私は手元にあるハンターカードをマジマジと見詰める。その顔は自然と厳しいものになっていた。


「シルバーカードって、上級職だからね。上級職を得られるのは、ハンター全体で極僅か。10パーセントも満たないかな。普通は、ブロンズで生涯を終えるよ」


 ゼロは私の顔に視線を移した後、前を向き、教えてくれた。荷台にはブロンズがいるのに。


 私は懐にハンターカードをしまう。


(10パーセントも満たない……?)


 少ないとは思っていたけど、まさか、そこまで低いとは思ってもみなかった。ゼロの言葉を噛み締める。


「……それよりも、少し傷付いたなぁ。そんなに、力強く否定しなくてもよかったんじゃない?」


 ゼロが少し拗ねたような言い方で私を責めた。何の事?


「そんなに僕の妹って思われるのは嫌?」


「えっ! 妹って言われた事を否定したことですか? 当たり前じゃないですか! ゼロさんのような美形で、王子様風の人の妹なんてありえませんよ! 平凡な顔をした私が、ムリムリ」


「「「「「え?…………」」」」」


 全員が、キョトンとして私を見詰める。一瞬、皆の動きが止まった。


 私は皆の反応に首を傾げる。


((((マジで!?))))


 私以外の皆が、一斉に突っ込みをいれた。それを見たサス君とココは、またしても大きな溜め息を吐いた。


 皆の反応の意味が分からなくて首を傾げる私と、溜め息を吐くサス君とココ。


 そして顔を若干引きつらせている皆を乗せた荷馬車は、真っ直ぐ村の中を進んで行くのだった。





 お待たせしました。

 最後まで読んで頂き、本当にありがとうございますm(__)m


 ドーンの森編の、始まり始まり~~!!


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ