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第一話 新たなクエスト

 


 色々思うところがあったけど、何とか初クエストも無事こなせる事が出来た。


 ギルドに換金に行った次の日から雨が続いたので、丁度いいから休む事にした。休める時に休む事が大事だからね(ココ談)。


 今日は三日ぶりの快晴。


 雨の間ゆっくり体休めたし、そろそろ次の依頼受けないとね。折角、掴めてきた感覚を忘れるのも勿体ないし。そう考えた私は、サス君とココと一緒にギルドの掲示板の前に来ていた。


(あれ? マトガ村の依頼書が掲示板から外されている)


「ムツキが帰った後、マトガ村の危険性を再確認してな、結果、危険性が大幅に減ったと判断が出たから外した」


 背後から声を掛けられる。


 その声に聞き覚えがあった。後ろを振り返ると、やっぱり思った通りギルマスだった。


 相変わらず、爽やかな登場の仕方だ。無骨な人が多い中で、ギルマスのような爽やかな容貌で雰囲気を持っている人はかなり目立つ。プラス、ギルマスなので、かなり私たちは他のハンターたちから注目されていた。


 あんまり見られるのは嫌なんだけどなぁ……。でも、相手がギルマスだから言えないし。でも端から見ると、ギルマスに声を掛けられるのは光栄な事なんだと思う。


「ギルマス、訊いてもいいですか? ……カインさんと保護された騎士さんはどうなりました?」


 ずっと気になっていた。二人は犠牲になったシンさんと最後に組んでいたし、同じ騎士仲間だった。二人が慟哭する姿が忘れられない。


「安心しろ。二人とも騎士を続けるそうだ。新米と混じって、もう一度基礎から鍛え直すと言ってたぞ」


 騎士を続ける事を聞いてホッとした。


「良かった……」


「ああ」


 言葉が続かない。元々話す事ないし。


 掲示板に視線を戻す。何故かギルマスは私の隣に立ち、一緒に掲示板を眺めている。私からの視線を感じたのか、ギルマスは掲示板から視線を外し、私を見下ろす。その目は意外にも優しい。


「……どうかしたか?」


 ギルマスは笑みを浮かべながら尋ねる。


「いえ……ギルマス、何かお勧めのクエストありますか?」


「ムツキ、そのギルマスっていうのを止めないか。俺の事は名前で呼んでくれ」


(いやいや、それは駄目でしょ。副団長さんなら兎も角、新米の私が名前呼びってあり得ないでしょ)


「この前、ハンターになったばかりなのに、ギルマスを名前呼びなんて出来ません」


「一緒に組んだ仲だろ」


「確かにそうですが……。出来ないものは出来ません」


「頑固だな」


 苦笑するギルマス。


「いえ、常識です」


 断固として拒否する。何でそこまで、名前を呼ぶのに拘る。


「では、ギルマスとして命令する。これから俺の事を名前で呼ぶように」


「横暴です。ギルマス」


「ジェイだ。ジェイ=ドルド。一応、ゴールドでギルマスを務めている。改めて宜しくな」


 そう言いながら、ジェイは右手を差し出す。差しだされた手を無下にも出来ないし、私はおずおずと差しだされた手を取るしかなかった。その手をギュッと掴まれた。リアルに手の感触が伝わる。サラリとした、骨太でがっしりとした、男の人の手だった。


 手を放す間際、ジェイは親指の腹で私の親指をそっと撫でた。私は全く気付かなかった。それがどういう意味を持つのかを。


 サス君は足下で唸り、ココは傍観を決め込んでいる。


(なんで、サス君唸ってるんだろう?)


「(全然分かってないな)次は、どんな依頼を受けるつもりなんだ?」


 サス君の唸り声を気にせず、反対に何故か嬉しそうにジェイは私に尋ねてくる。


(ん? あれ? やけに静かなんですけど?)


 今まで騒がしかったギルド内が、水を打ったかのように静まり返っている。


「これなんかどうだ?」


 周りを気にしてないジェイは、ある依頼書を指差す。私は周囲を気にしながらも、ジェイが指さしている依頼書に目をやった。


「薬草採集ですか……」



【依頼内容 薬草採集 (ランクB)】

 ドーンの森に自生する薬草採集。

 〈依頼主〉 薬屋ゼロ=リトル

 〈報酬〉  銀貨一枚(日当)

       危険手当てあり(特に遺跡周辺)

 〈追記〉  最低レベル十五以上を希望する。

       但し、シルバーカードを除く。



 薬草採集の依頼で、ランクBって……マドガ村と同じランクだよね。通常、薬草採集の仕事のランクはEか、いってランクDの仕事だ。なのに、ランクBがつくってことは、かなり危険な場所に自生している薬草だってことだ。場所は、遺跡か?


「……遺跡って、危険なんですか?」


「ムツキは遠い所から来たんだよな。だったら知らないか……」


 誰にも聞こえないような小さい声で、ジェイは呟く。だが、私にははっきりと聞こえていた。


 ーー遠い所から来た。


 その言葉に少し引っ掛かりを感じたが聞き流す。下手に訊き返して、墓穴を掘るのも馬鹿らしいからね。


 そう独り言のように呟いた後、ジェイは私を見下ろすと教えてくれた。


「大陸のあちこちに点在している、謎の建造物のことを遺跡と読んでいるんだ。遺跡の周囲で採れる薬草は、他の薬草に比べてかなり効能が高くてな、高値で取引されている。もともと、ドーンの森で採集される薬草も、そこら辺で採れるものよりも効能がいいしな。ただ……ランクが高い魔物が出没することがあるから、自然とランクが高くなるんだ」


「それで、どうして私に勧めるんですか?」


 私がそう問い掛けると、ジェイは申し訳なさそうな顔をした。


「ムツキはレベルこそまだまだ低いが、ステータスは他のレベル15の奴より遥かに高いだろ。マドガ村の件も無事完遂したしな。それに、フェンリル(サス君)やケットシーを従魔にしてるだろ。十分、対応出来ると思うんだ」


 うん。それは建前だね。


 私はじっと、ジェイの顔を見詰める。


 ジェイは私の視線に耐え切れなくなったのか、視線を外すと、ぽつりと呟いた。


「……グリーンメドウって、はじまりの街って呼ばれてるだろ。ギルドの本部もあるし。初心者が多いんだよな……。そのせいで、この依頼をこなせる人員が少ないんだ」


 なるほど。それが本音ですか? だったら、


「あっ、でも、ムツキが心細いのなら、一緒に潜ってもい「大丈夫です。サス君とココがいるので。ギ……ジェイさん、お気遣いありがとうございます」」


 私はきっぱりと断る。ギルマスに迷惑は掛けられない。


「そ……そうか……ムツキ」


 何故か、明らかに残念そうな顔をするジェイ。


 反対にサス君は機嫌が良くなった。ココは何がおかしいのか、声を出して笑っている。サス君とココの様子に首を傾げながらも、残念そうなジェイを見て、そんなに潜りたかったのかなと心の中で思った。


「分かりました、ジェイさん。いい仕事勧めてくれてありがとうございます。ジェイさんの分も頑張って来ますね」


 私はにっこり笑いながらジェイにお礼を言うと、依頼書を持って窓口に向かった。






 お待たせしました。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 サス君(狛犬の霊獣)ですが、この世界に狛犬が存在しないため、一番近い〈フェンリル(狼)〉として登録されました。

 黒猫のココは使い魔ではなく、実はケットシー。てっきり、使い魔だと思っていたムツキは、ココに叱れましたとさ。


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪


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