第一話 ホムロ村にやって来ました
ホムロ村にやって来ました!!
何で来たかって?
決まってるじゃない。ワイバーン狩りだよ、ワイバーン狩り。ゴールドの私は強制参加。しょうがないよね。でもね、温泉はすっごく楽しみなんだ。肌もツルツルになるし。ご飯も美味しいからね。これはとても大事なことだよ。
今年は少し早いけど、この時期になると黒の大陸にいたワイバーンが飛来して来るの、ホムロ村に。ワイバーンのような変温魔獣にとって、今からの黒の大陸はキツいからね。ましてや、動けなくなって寝てる間に狩られちゃうだろうし。そりゃあ、ワイバーンも避難するよね。
その上最悪なことに、他の大陸にいるワイバーンも番を見付けるために飛来して来る。本能だから仕方ないとはいえ、本当迷惑この上ない。ましてや中には、ホムロ山で巣作りするのもいるからね。尚更最悪。
という訳で、この時期ホムロ村周辺は民間人は近付かない。当然と言えば当然だよね。餌になるのは嫌でしょ。
まぁでも、全くいなくなる訳じゃないけどね。村は普通に機能してるし。私たちハンター相手に商売する人は活発に活動してる。ホムロ村はワイバーン討伐の拠点だからね。すっごいよ、村の賑わい。初めて参加するけど、まるで村全体がお祭りのようでテンション上がるよ。縁日みたいで。うん。却ってこっちの方が賑わってるよね。今は観光地や静養地じゃないからね。貴族もいないし。悪く言えば、少し柄が悪くなったって感じかな。親しみ易いってことだよ。私はこっちの方が好きだけどね。
(取り合えず、まずは拠点の確保だよね。宿屋はいつものとこがいいな。空いてるかな?)
五日程出遅れたから空いてないかも。少し不安になる。
と言っても、いつもより飛来が早かったから、そんなに出遅れた感はなかったんだけど、甘かったみたい。既に大勢のハンターたちがホムロ村に来ていた。
本当はもっと早く来たかったんだよ。だけど、なんせ、一昨日までベッドの中だったからね。さすがに無理だった。そもそも、私が馬鹿だったせいでこうなったんだけど。
そのことについては、特に皆と話し合ってはいない。
ただ……目を覚ました私に、シュリナが一言「分かったか?」と訊いてきた。私は小さく頷いた。それだけだ。シュリナもヒスイもソウガも、この事に関して、それ以上何も言ってはこなかった。だから、私も敢えて口にはしない。言葉も大事だけど、態度で示して行こうと心に誓ったからだ。
皆のために、自分の命を大切にしようってね。
ちょっと脱線したけど、もし宿屋が空いてなかったら、ジュンさんとことに泊まろうかな。転移魔法で移動すればいいし。色々話したいことがあるしね。この前やっと里帰り出来たんだけど、あの馬鹿(ハンター試験後に喧嘩吹っ掛けてきた奴)のせいで、黒の大陸にトンボ返りしちゃったからね。全然話せなかった。
そんなことを考えながら、フロントの前に立つ。隣がやけに騒がしいけど気にしない。ワイバーン狩りで気が立ってるからかな。う~ん、どうやら部屋が空いてなかったようだ。そのせいで揉めているみたい。それを見て、ちょっと後悔する。
(はぁ~~無理そうかなぁ……予約いれてなかったし。いれとけばよかったよ)
この宿屋はホムロ村でも一、二を競う人気の宿屋だ。その分お高いけどね。私が泊まってた部屋は、サービス込みで一泊金貨一枚。食事なしでね。因みに金貨一枚で、一月は楽に暮らせる。三食宿付きで。
つまり、結構懐が潤ってないと常宿には出来ないんだよね。貴族ならまだしも。その点から言えば、ハンターには不向きな宿なんだよね。その宿でこれだと無理かな……。でも、訊くだけ訊いてみよ。と、思ってたんだけど。
「お待ちして下りました。チバ様」
フロントに顔を出すと、声を掛ける前なのに支配人さんが出て来た。驚きです。さすがプロです。
「久し振りです。支配人さん」
「ご活躍耳にして下ります」
支配人さんのような大人の人に改めてそう言われると、少し居たたまれなくなるよ。照れてる私を支配人さんは温かい目で見ている。尚更照れちゃうよ。
「ありがとうございます。で、部屋空いてますか?」
素直に賛辞を受け取る。そして、駄目もとで訊いてみた。勿論小声で。
「はい。いつもの部屋を御用意しております」
にこやかに答える支配人さん。いつもと同じ大きさだ。
その声に反応したのは、隣で文句を言っているハンターの皆さんだ。非常に面白くなさそう。対応していた従業員に激しく詰め寄っているよ。それでも、さすがにどのハンターたちも従業員に手を出してはいない。
「「「おい!! 部屋空いてるんじゃないか!!」」」
屈強な体をした男たちに詰め寄られて、完全に従業員はしどろもどろになってる。ごり押ししようとしてるみたい。
(大丈夫かな?)
支配人さんをチラリと見る。従業員さんも支配人さんに視線を送る。明らかに助けを求めてるね。でも、可哀想なことに無視された。
「では、ご案内させて頂きます」
「はい」
マジックバックに全て収納してるから、特に大きな荷物はないので、そのまま支配人さんの少し後ろを付いて歩く。角を曲がっても聞こえてるよ。
「……いいんですか?」
あのままにしてて。
「構いません。これぐらい、自分で対処しなくては。彼にとって良い勉強になったでしょう」
支配人さんがそう言うんだからいいか。何処の世界も、仕事って大変だよね。
私もワイバーン狩り頑張ろう!! でも、ワイバーンってあれに似てるんだよなぁ……翼があるから、蛇じゃない。蛇じゃない。……大丈夫。あっ、その前に、ギルドに顔出さなきゃね。
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
白の大陸に進む前にちょっとした閑話を。
楽しんで頂けたら凄く嬉しいです(^o^)
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




