ソウガの想い
同胞の視線が突き刺さる。
これが、実際の刃物ならめった刺しにされてるな。
いや、同胞だけじゃないか。側に控えていた巫女長の目も我を鋭く突き刺している。一応、我が主なんだが、おい。忘れていないか。……まぁそれは、今はどうでもいい。当然と言えば当然か。罰とはいえ、ここにいる全員の最愛の者を気絶するまで追い込んだのだから。
「理由があるのだろう。セイリュウ」
怒りを押し殺した低い声でスザクが尋ねる。
反対に、すぐ手が出るビャッコは珍しく無言だ。スザク同様怒りを押し殺し、ただただ我を睨み付けている。
声を大にして言いたいが、我もしたくてしたわけじゃない。出来れば、こんな乱暴な手なと使いたくなかった。我にとってもムツキは愛し子なんだ。
だけど……使わなければ、いつかムツキは、アキラと同じ運命を迎えてしまうと危惧したからだ。
迎わないようにすればいい。勿論そうする。だけど、この世に絶対はない。
現に、何度もムツキは似たことを繰り返している。
我はムツキの人生について、どうのこうの口を挟むつもりはない。他の同胞たちも同じ気持ちだろう。ムツキが笑っていてくれればいいんだから。そして願わくば、側でその笑顔を見れればこれ程嬉しいことはない。
口を挟むつもりはないが、出来ればそんな未来を選んでほしくはなかった。なかったからこそ、かなり荒い手をつかったのだ。スザクとビャッコ以外の従魔を追い出してまで。
「お前たちの目を通して、我はムツキを見てきた。今までも似た様なことを何度も繰り返していたな。そして、極めつけが今回の件だ。スザク。ビャッコ。ムツキは何故、自分の命に大してあんなに無頓着なんだ?」
我がそう尋ねると、スザクとビャッコは険しい顔をする。
怒ったり不快に感じたからじゃなく、悲しいのだ。セイリュウにはその気持ちが痛い程分かる。自分も同じだからだ。
「おそらく、幼少時の体験が大きく関わってるからだろうな……」
その言葉に我は頷く。過去世からの性格よりも、幼少期の影響が大きいと考えていた。
現に、ムツキは過去を殆ど語らない。
語らないのは、暗に話す機会がないからなのか。それとも、特に突出したことがなかったからなのか。
結果は二つとも違った。最悪な方に。
ムツキの過去を知ったのは偶然だった。黒の大陸の次王の前で自分から語ったからだ。
淡々と語る過去は、決して幸せなものじゃなかった。赤の他人でも眉をしかめ、悲痛な表情を見せる程だった。だからこそ、その地獄の日々が大袈裟ではなく真実だと分かった。
「幼少期が孤独だったせいか、ムツキは自分の懐に入った者に対して、特に大事にする傾向がある。行き過ぎな程にな」
表情を曇らせながらスザクは告げる。
その大事な者の中に、自分がいることも勿論承知していた。自分もムツキのためならその命を掛けることも厭わない。
だがそれは、あくまで最終手段だ。色んな手段を試した上で、足掻いた上で、どうしても他に手がないならまだ分かる。ムツキは納得しないだろうが。
でも、ムツキは違う。
間がないんだ。ほぼない。極端過ぎるんだ。
自分の命に無頓着だから、平気で道具として扱うことが出来る。優先順位が全く違うんだ。大事な者たちの下に自分の命がある。普通は逆なのに。それはモンスターとの戦いの場面でも垣間見えた。
どんなにスザクたちがムツキを大事にしても、言葉にしても、その優先順位が変わることはなかった。
それをスザクとビャッコを通して、我はずっと見ていた。その度に歯痒い思いをした。そして、今回の件だ。
だからこそ、我はこの手段に出た。
愛しい存在だからこそ。
失いたくない存在だからこそだ。
「ムツキの優先順位は変わらない。これから先も、簡単に変わらないだろうな。だとしたら、それを逆手にとればいい。自分の命を道具にするのなら、しないように釘を刺せばいいだけだ」
「我らを釘に使ったのか?」
「ああ。もし、自分が死んだら、この世界を護るために我らがどういう行動をとるか、ムツキに疑似体験させた。……そんな顔をするな。嘘は吐いていないだろ? 実際、魔力と生命力を吸い取られるんだから。ムツキから吸い取ったのは魔力だけだ。痛みは全く感じないようにしたから安心しろ」
そう告げられて、いまいち納得出来ずに厳しい表情をするスザクとビャッコ。
そうだろうな、と我は思う。甘い、いや、優し過ぎるスザクとビャッコには到底出来ないことだ。
「まぁ、釘っていうより、枷だろ。それは」
ずっと黙っていたビャッコが会話に加わる。言葉の端々に、我を非難する気持ちが含まれてる。
「言葉は悪いが、そうだな。文句があるのか? ビャッコ。だったら、他にどんな手がある?」
ビャッコの気持ちを無視しそう我が問うと、ビャッコは口を噤み黙り込む。
スザクは深くて長い溜め息を吐いた。
「理解した。セイリュウ。お前がそこまでした理由がな。たが、これっきりだ。次はない」
厳しい声でスザクは我に釘を刺す。思わず、笑ってしまった。
「分かってる。そもそも、この手は一回しか使えない。後はスザク、ビャッコ、お前たちが仕上げろ」
一回しか使えないからこそ、このタイミングで仕掛けた。
枷が定着するかどうかは、スザクとビャッコの行動次第。まぁ、特別に何かする訳じゃないから、まず大丈夫だろう。ここでしくじったら、ピンクスライムの次の餌は決まりだな。
ビャッコがブルッと震えた。
「……何で、ムツキはお前のことを脳筋だと思ってるんだ?」
心底不思議そうにビャッコが尋ねる。
それはこっちが聞きたい。そもそも脳筋だったら、スライムの研究なんかしていないだろ。負けず嫌いは認めるが。少々突っ走ることもあるけど、決して脳筋じゃない。
「さぁ、我は特に隠してないんだが。でも、出来れば内緒にしてて欲しいな、ビャッコ」
「言わねーよ」
「ありがとう。ビャッコ」
ニッコリ笑いながら言うと、ビャッコの口元が引き攣らせている。隣を見れば、スザクもだ。思わず首を傾げる。
何故だ? 我の笑みはそんなに見苦しいものなのか? これは、じっくり話をしなければならないな。今後のために。
いきなり、処刑ですか?【蒼の大陸】完結
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
第十六章 いきなり、処刑ですか? 完結しました(パチパチ)
いつしか、十六章まで続いてます。ほんと、長いですよね( ̄▽ ̄;)
閑話を数話書いてから、白の大陸編始まります!!
これからも、応援宜しくお願い致しますm(__)m
少しでも、退屈しのぎになれば嬉しいです。
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




