表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/316

第十六話 称号※

 


(今日も賑わってるなぁ~)


 一階から聞こえてくる陽気な男たちのダミ声を聞きながら、私は頬を緩める。商売繁盛は良い事だよね。


 陽が暮れると、うみねこ亭はがらりと変わって飲み屋になる。


 客のほとんどがお酒を飲んでいるからか、ジュンさんはお店の手伝いをさせてくれない。すごく忙しいのに。


 いい年した大人が、こんな可愛いげのない、そこら辺にいるような子供を相手にするとは思わないけどね。それとも、教育的問題なのかな。下に下りる事も嫌う。


 ハンターの仕事をしている私に、教育的問題は関係ないと思うんだけどね。でも、なんだか大事にしてもらってる気がして、実は嬉しかったりする。


 この日も、いつもと同じ様に二階に上がり部屋に入ると、ベッドに腰を下ろした。


 水差しから果実水をコップに移し一口飲んでから、私は固定スキル【銀行】を発動させる。


 昼間にギルドからもらったお金を【銀行】に預金するためだ。勿論、ジュンさんに立て替えてもらっていたお金、金貨二枚を差し引いた分だよ。


 それでもかなりの額だ。ほんと、この時ばかりはこの固定スキルを持ってて良かったと思う。お金を持ち歩かなくてすむだけで、緊張感が全然違うからね。預けたお金が何処にあるのかは、よく分かんないけど。異世界だしアリかな。深く考えるのはやめとこ。


 そんな事を思いながら、残った残金を【銀行】に預けたすぐ後だった。ココが私の名前を呼んだ。


「どうしたの? ココ」


「……昨日の晩、ジュンに訊いたんだけど」


「何を?」


「何をって。初級魔法が中級魔法レベルだった件だよ」


「あ~その件ね」


 実は少し気になっていた。


「その件以外に何があるんだい」


 半ば呆れ気味にココが答える。サス君も呆れ気味だ。


(やっぱり、初級魔法のレベルじゃなかったんだ。初級で中級レベルって……)


 まるでラノベの世界だね。主人公がチートだったって、ありがちじゃない? でも、私は主人公のがらじゃない。主人公になれる程の容姿じゃないしね。


「それで、ジュンは何て言ってたんた?」


 サス君が先を促す。


「ステータスに答えがあるかもしれないって」


「「ステータスに?」」


 珍しく、サス君とハモった。じゃ、早速見てみるか。


 私は声を出さずに【ステータス】と呟く。直ぐに、ステータスの画面を開いた。私を挟んで両側にいたサス君もココも画面を覗き込む。


 レベルが13になったことで、能力値が魔力と魔耐を中心に大幅に向上していた。知力も上がっている。だけど、体力は伸びがいまいちかな。運もそれ程伸びてない。


 だが、それ以外はなんの変化もないよね。あるとしたら、スキルの項目の下、備考の欄に、従魔登録されたサス君とココの事が記載されてるぐらいだ。


 サス君とココの件を除くと、特別に称号が増えたわけでもないし、新たなスキルを覚えたわけでもなかった。


(職業が熟練して覚えるスキルは、冒険者にはない筈だし……。そもそも熟練する程、仕事をこなしてないしね。だったら、何が原因なのかな? う~ん)


 取り合えず、ココに訊いてみよう。


「……どこも変わってないけど?」


 首を傾げながら、私はココに尋ねる。


「ムツキ、【称号】の説明出してみて?」


(称号の説明?)


 あ~そういえば、まだ一度も説明文を読んだことなかったよ。初めてステータスの画面を見た時、ショックを受けて直ぐに閉じたし。完全にスルーしてた。


 説明文を出す方法は、確か……文字をタップすればよかった筈。とりあえず、やってみようかな。タップと。


 私は関連がありそうな、【魔法使いの弟子】の文字をタップしてみる。あっ! 出てきた。




【魔法使いの弟子】

 魔法使いになったばかりの者を指す総称。

 魔法使いとは異世界を渡る能力を有する者である。故に、その者が持つ魔力は膨大といえよう。

 弟子とはいえ、魔法使いは魔法に特化しており、その者が放つ魔法は、通常より10パーセント増として放たれる。熟練すればするほど魔法の威力は増す。



(………………マジですか……?)


 目が点になる。


 だから、魔法の威力がすごかったの? これが【称号】の力?


 私はステータスの画面を見詰めながら考える。


 見てて気付いた。【称号】は、【スキル】の補助的みたいな感じだって事に。


 だったら、逆に【称号】に合わせて【スキル】を覚えれば、かなり強くなるんじゃないのかな。だとしたら、【称号】は一種のチートじゃない? まぁそれは置いといて、私の魔法の威力が凄かった理由は分かった。


「……この【称号】の力だったんだね」


 半ば呆然とポツリと呟く。そんな私に、ココが更に声を掛けてきた。


「…………ムツキ、もう一つの【称号】も出してみて」


 ココはもう一つの称号を出すように言う。サス君はずっと黙ったままだ。何か反応してよ。


 私は頷くと、もう一つの称号【神獣森羅の化身】の文字をタップした。




【神獣森羅の化身】

 神獣森羅に認められ、神力の一部を与えられし者。

 神力を与えられたことによって、その者は亜神へと進化する。

 神獣森羅はどの世界においても、最も愛され崇拝される神獣だ。それは化身であっても同じである。故に、この称号を持つ者は、全てのステータス異常は()()となり、傷付けることは出来ないだろう。




「う~~ん」


 読んでて、マジで頭が痛くなってきた。


「「………………」」


 サス君もココも言葉が出ないのか、黙って画面を見詰めている。


(神獣森羅の化身になったから、亜神へと進化したのは分かったけど……)


 最後の一文が私を唸らせる。


 ーー全てのステータス異常は無効となり、傷付けることは出来ないだろう。


 つまり要約すると、毒や呪い、麻痺は無効であり、魔物に襲われても、トラップに引っ掛かっても、重症化しないっていう意味にとれるんだけど……。まさか無傷じゃないよね……。


 考えるだけで、顔が引きつる。


(例え無傷でなくても、完全なチートじゃん!! 最強チートじゃない!! 私に魔王でも倒せっていうの!?)


 私は思わず心の中で叫んだ。


 だが、少し冷静に考えてみると、私が亜神(神族)だから、こんなチートを手に入れれたんだと思う。ほんと、溜め息しか出ないよ。下手に怪我が出来ない。


(マジで重い。重すぎる……)


 なんかさ……段々人間離れしているような気がするのは、私の気のせいじゃないよね。……人間じゃなくなったんだけどさぁ。人間でいたいよ。これって、我が儘かな?




 因みに……


〈只今の貯金額〉

 金貨  20枚

 銀貨  15枚

 銅貨   0枚

 青銅貨  4枚


 初めてのクエストで、一年以上余裕で楽に暮らせる額を稼ぎましたとさ。




          


        初クエストです【朱の大陸】完結



 お待たせしました。

 今日も、最後まで読んで頂き、本当にありがとうございますm(__)m


 初クエスト前に、サス君とココが従魔登録しました!!


 それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ