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第三十一話 神罰 (1)



 やっぱり、一番最初に復活したのはアランだった。まだ額が痛むのか、手を当てたまま私を睨む。


(うんうん。これからだよ)


 花畑の頭をしてても、この面子(めんつ)の中で一番肉体が出来てるのはアランだからね。騎士団長の息子はまだ呻いているし。怪我治したよね。


「…………一体、俺たちに何をした?」


 低い声で唸るように尋ねる。


(まだ、自分の立場に気付いてないようね。焼き印を見たらすぐに気付くのに)


 余裕がない様子に自然と笑みが浮かぶ。それを見て、アランの殺気が一気に膨らむ。だが同時に、皆の殺気に当てられて今にも倒れそう。さすがに、騎士団長の息子のようにお漏らしはしてないようだけど。でもそれも時間の問題かな。


「私? 何もしてないよ」


 しれっと答える。


「嘘吐け!!!!」


 アランが怒りを露にする程、笑みが深くなる。


「嘘じゃないんだけど」


 正直に答えてるんだけど、どうやらアランたちは納得してくれないようだ。全員敵意剥き出し。でもまぁ、子犬が威嚇しているみたいで全然怖くもないけどね。そんな中、


「………………腕が……俺の腕が!!!!!!!」


 錯乱したように喚き出す騎士団長の息子。


(気付くの遅っ)


「腕ならここにあるわよ」


 意地悪しないでちゃんと教えてあげるよ、私は。サス君の足下を指差す。もう肉塊かしてて腕じゃなくなってるけど。何かこういうの目にして気持ち悪くならなくなった自分が少し悲しくなる。


「あ……………あーーーー俺の腕が!!!!!!」


 男が恥ずかし気もなく突っ伏して号泣する。


「何て酷いことを!!」

「貴様!!!!」


 外野が騒がしい。


「いやいや。あんたたち、私を殺そうとしたよね」


 思わず、突っ込んでしまったよ。


「睦月さん。何故、あの男の命を助けたのですか?」


 口調はサス君らしいが、感情を隠そうとはしない。勿論、外野は無視だ。


「それはね。彼らはこれから色々働なきゃいけないからだよ」


「働く?」


「そう。セイリュウ様は()()んだって」


 それだけで、サス君は理解したようだ。


 サス君と同じように、この台詞を正確に理解した人は何人いるんだろう。この映像をリアルタイムで見ている人たちは、せめて理解してて欲しいと心から願う。


 ()()ってことの意味をーー。


 当然と言えば当然か。目の前にいるコイツらは、事の重大性を全く理解していないようだ。知ってたら、今尚、罵詈雑言を喚いたりしないよね。許しを乞うよね、セイリュウ様に。コイツらの花畑振りは重々分かってたけど……。改めてまざまざと見せられて、ちょっとソウガが可哀想になったよ。


 村人たちも(まば)らだけど起き出した。そろそろ頃合いかな。


「……さっき、私がしたことじゃないって言ったけど、額の焼き印を付けた者は知ってるよ。でもね、教えてあげない。自分で考えれば。でも、ヒントは教えてあげる。知りたければ、自分のステータス開けてみれば」


 懇切丁寧に教えてあげる義理はない。そこまで親切じゃないからね。それに、まだやることがこの村に残ってる。


 サス君が背中に乗せてくれた。安定感のある背中だね。目線が変わって楽しい。それに、モフモフの毛が気持ちいい。思いっきり背中に顔を埋め匂いと毛触りを楽しむ。癒されるわ~~。


 その癒しの時間を邪魔する者がいた。


「…………どういうことだ? 何故、私たちが?」

「嘘だ……嘘だ…………嘘だ……」

「魔女!! お前が俺たちを嵌めたのか!!!!!!」


 素直に自分のステータスを見たんだろう。アランの怒号と共に風の刃が私たちを襲った。しかし、その攻撃は一切私たちには届かなかった。瞬時に魔法防壁を張ったからね。当然、物理防御も張った。


 次々と襲ってくる風の刃。同時に、水の刃も飛んでくる。炎の矢も飛んで来た。スキルの業も放たれる。一斉攻撃を受けるが、これくらいどおってことなかった。びくともしない。


 土煙が立ち上がる。


 それを利用して、無謀にも騎士団長の息子が飛び込んで来た。その勇気は誉めてあげよう。意図も簡単に、サス君に踏み付けられて蹴っ飛ばされた。吹っ飛ばされた騎士団長の息子は、「グハッ」と呻き、逃げ惑う村人たちの上に落ちた。潰れる村人。


 アランたちの魔力が尽きたのか、攻撃が終る。


 土煙が消えた。


 当然、無傷な私たち。


 信じられなくて呆然とする、アランたち。その場に崩れ、膝を付く。そんな彼らを冷めた目で見下ろす。


「それでお仕舞い? なら、行こうか」


 その場を離れようとする私の耳にアランの呟く声が聞こえた。


「…………全く効かない」


 サス君の足が止まる。


「当然でしょ。これでも、ゴールドだよ。これくらいの攻撃、屁でもないわ」


「不正に入手したものじゃないのか……」


「そもそも、そんな不正出来るわけないでしょ」


 完全に馬鹿にした声でそう吐き捨てた。


 ハンター試験は平等に行われる。白いカードを受験者が掴んで決めるものだよ。どうやって不正するのよ。少なくとも、アランと騎士団長の息子は受けてるよね。


「…………俺たちは間違ってない。間違ってない。間違ってない」


 そう思いたいのか。思い込みたいのか。分からないが、同じ言葉を繰り返すアラン。そんなアランに寄り添い、睨み付けるコウ。その目は今も殺意がありありと見える。


 スーと私の中で何かが冷める。


「ーー驕るなよ。竜人が」


 とてもとても冷たい、凍えそうな程の低い声が出た。その声は決して大きくはない。なのに、周囲の動きを完全に支配し止めたのだった。





最後まで読んで頂きありがとうございますm(__)m

約束通り、神罰ターンの始まりです!!

それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪


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