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第二十話 処刑三日前(4)



「よっ、漸く出て来たか!!」


(慌てて立ち上がったみたいだけど完全に声が上擦ってるよ、アランさん)


 ププ。込み上げてくる笑いを隠そうとはしない。隠すわけないじゃん。だって、みるみるうちに真っ赤になるアランの顔が見たいからね。それに、私を今にも射殺そうとするような殺気のこもった目で、アランとコウに見詰められたら止められないじゃない。本心、からかって遊んでるんだけど。にしても、脳筋は声がでかいってほんとだったんだね。


「五月蝿い。そんな大声出さなくても聞こえてるわよ。で、私に何の用? 罪人とかほざいていたけど、それって誰のこと? まさか私じゃないよね」


 そう口にしたが、私のことに決まってる。


「貴様のことに決まってるだろーーが!!」


(そんなに大声で怒鳴らなくても聞こえてるわよ)


「私が何したって言うの? 後ろ指差されるようなことした覚えはないけど」


 一応、聞いてあげるわ。思ってたより低い声がでた。


「貴様~~」


 アランは獣のように唸る。


「アラン。この女に何を言っても無駄だ」


 言ってくれるじゃない。私をこの女扱いね~~。さすがの私もこめかみがピクピクするよ。当然、皆もね。あっ、殺気も漏れ出してる。まだまだ可愛い程度だけどね。森の中からもヒシヒシと伝わって来るよ殺気が。


 ダブルの殺気に晒されたアランとコウは、耐えきれないのか、「「ウッ!」」と小さく声を発し後ずさる。これしきの殺気でこれって、ほんと情けない。


 とはいえ、いつまでもこんな意味のない会話を続けるのは時間の無駄だ。コウはこの場で罪状を言うのを控えた。おそらく、これ以上は何も言わらないだろう。だったら、取る道は一つ。


「……わざわざ出迎えに来てくれたのに悪いけど、私はこれで」


 こっちから仕掛けることにした。


 絶対、奴等は誘いにのってくる。確信があった。


「さすが、血も涙もない悪女だな!!!! 自分の仲間を見捨てて一人で助かろうとするとは、黒の英雄の名が廃るぞ!!!! 所詮、ズルでゴールドになったことはあるな!!」


 やっぱりのってきた。吠える吠える。


 アランとコウは私がゴールドだということを知っている。しかし、それ以外の人たちは知らない者が大半だったみたいだ。アランが〈黒の英雄〉と発した瞬間、背後がざわつきだす。


 だろうね。にしても、ズルって……。折角、お土産を用意したのに。残念。まぁそれは一先ず横に置いといて、仲間? あ~~なるほど、そうきたのね。


 コウの前に少女が一人立っていた。腕の自由が利かないように掴まれているようだ。少女は何も言わず、ただ俯いていた。


 少女の表情は分からないが、見覚えがあった。王都で会った少女だ。間違いない。マリアが注意するように進言した少女だった。アランとコウが仕掛けた罠らしい。


 黙り込み俯いたままの少女。


 何の反応を示さない少女を拘束する手に力が入ったようだ。痛みで僅かに顔を歪めるが、尚も俯いたままだった。焦れたコウは、少女の耳元で何かを囁く。すると、途端に顔を上げる少女。そして、少女は叫んだ。


「申し訳ありません!! ムツキ様。捕まってしまいました。お願いします。どうか見捨てないで下さい。助けて下さい……」


 最後は弱々しい声でそう告げると、少女は潤んだ目で私に助けを求めた。コウに言わされた感アリアリだ。


 コウは私が何も知らないと思っている。計画自体ね。


 だからこそ、コウは少女を離さない。


 少女が私と知り合ったせいで、人質にされた憐れな少女だと私に思わせる。そう思わせた上で、表向きは私の仲間だと匂わせ揺さぶりを掛ける。


 巧妙で卑怯な作戦。


 仲間じゃないと言えば簡単だが、コウは私がそうしないと踏んでいる。踏んでるからこそ出来る作戦だった。なら、私が取る道は一つだ。


「その子を放して」


 厳しい表情でそう告げると、コウはニヤリと笑った。


「ならば、これを付けろ」


 アランが私に向かって何かを放り投げた。


 拾うと、それは手錠だった。おそらく、魔力を封じる類いのもに違いない。一応念のために鑑定を掛けてみたが、呪いの類いは掛かっていなかった。


 コウとアランは魔力さえ封じれれば、大丈夫だと考えているようだ、魔力を封じられれば、從魔も魔法も使えない。それが普通だけどね……。


 言われた通り、私は手錠を掛ける。


 うんうん。何も感じない。力が抜けていくような感覚も感じなかった。手筈通りに皆は私の影の中に。このままボーと立ってるわけにはいかないし。ここは演技でもしとかないと。というわけで、その場に膝を付く。


「付けたわよ。その子を離して」


 睨み付けながら低い声でそう言い放つと、コウは少女を掴んでいた手を放した。少女は私に駆け寄る。同じ様に膝を付いた。


 一瞬何が起きたか分からなかった。


 感じたのは鋭い痛みーー


「大丈…………夫……?」


 腕を押さえながら少女に向かって倒れ込む。


「念には念をいれないといけないだろ」


 コウの嘲笑う声が頭上から聞こえてきた。


 どうやら、何かの痺れ薬を仕込んでいたようだ。残念だけど、私には効かないけどね。【神獣森羅の化身】の称号があるから。つい、ニヤリと口角が上がる。危ない危ない。


 少女に凭れ掛かるように倒れ込む私の表情は、コウやアラン、少女からは見えない。勿論、アランたちの背後にいる村人や傭兵たちも。


 もし見えたとしても、未来は変わらないだろうが……。





 大変お待たせしました。

 間が空き、本当に申し訳ありませんでしたm(__)m

 そして、最後まで読んで頂きありがとうございますm(__)m


 連載再開します!!


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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