第十五話 処刑五日前
水を統べるセイリュウだけに、ソウガの眷族が生活する村は湖の中洲に創られていた。
他の五聖獣様たちの集落に比べて、ソウガの眷族は多種族だ。竜人族もいれば魚人族もいる。ちらほらだけど獣人もいた。でも皆、水に関する特性があるみたいだけどね。
初めて見たよ、カバの獣人。小さい赤茶の耳と尻尾が超可愛かったよ。毛が生えてない耳と尻尾もなかなかだよね。モフモフとは違う魅力がある。それから蛇の獣人もいたよ。首や頬の一部が白い鱗だった。瞳孔は縦長かな。是非とも近くで見てみたい。でも実行したら、変質者の一員になるよね。絶対。あ~~ほんと罪作りな種族だよ。幸せと不幸せは常に両隣にあるんだね。勉強になったよ。
それとね。魚人族が存在するのは知っていた。図鑑でも見たし。魚人族の特徴って、耳がヒレのようになってるんだよ。触ったらマシュマロみたいに柔らかいよね、絶対。あ~~触りたい。誰か触らせてくんないかな~~。それから手もね、水掻きが付いてるの。足にも付いてるんだって。さすがに、背中は付いてないみたい。あっ、でも、完全に魚顔の魚人族もいたよ。かなりの猫背だったけど、背中にヒレはなかった。ちょっと残念。
そうそう、巫女長様は元魚人族と他種族のハーフなのかな。他の魚人族に比べて小さかったけど、耳はヒレだった。水掻きは付いてなかったみたいだけど。
封印を解いた後、寄った村で物凄い歓迎を受けた。村人全員にだ。
うん。初めてだね。
だって……昨日の晩から始まった宴はまだ終わってない。ギブアップしていた人が戻ってきたりして、参加人数はあまり変わってないし。盛り上がってるし……。陽気な眷族たちだ。
そんな彼らを見ていると、心底、ソウガは眷族に愛されてるんだって分かる。皆すっごく嬉しそうだもん。性格はアレだけど。
にしても、笑ってる顔を見るのはいいよね。こっちまで幸せな気持ちになるから。暫く逗留しようかな。アランたちのこともあるし。無視するのもいいけど。たぶんそれは無理だよね。まだ、処刑フラグは折れてないからね。
(狙ってくるとしたら、恐らく、私が森を出た後よね)
私ならまずそこを狙う。私のパーティーの頭脳であるココも私と同じ考えだった。だって、旅をしている私の居場所は封印を解いた時点で分かってる筈だし、アランたちが拠点にしている村はこの森から一番近い村だ。待ち伏せにするのはもってこいだよね。
まぁ、それは一先ず横に置いといて、料理は美味しいし、眷族さんたちも良い人たちだ。とっても居心地がいい村なんだけどさ……一つだけ慣れないことがあるんだよね。っていうか、正直戸惑う。超~~戸惑う。
それは、お風呂。
大きな浴槽でお湯は並々と張られてる。湯の色が乳白色なのは入浴剤。普通そう思うよね。だったら、良かったんだけど……。その色の正体は入浴剤じゃなかった。勿論、想像つくよね。
そう。お湯と一緒に投入されているのは、スライム。それも、ソウガが改良した特別版。水中に棲み、お湯の中でも大丈夫。そのスライムの主食は体の垢。お湯のヌルヌルはスライムだった……。
眷族さんたちは嬉しそうにヌルヌルを刷り込むんだって。垢と一緒に古い角質も一緒に取れるから、肌はいつもツルツル。番の人も好感触。これから狙う人の心もギュッと掴んでいる。なので当然、ソウガの恩恵に眷族全員心から感謝してるんだって。特にお姉様たちが。
これって、一種の共存ってやつかな。
(でもさ……スライムだよね…………)
スライムって知って反射的に飛び出してから、お湯には浸かれないでいる。効能は良くても、あのダンジョンにいたニュルニュルのスライムを、どうしても思い出しちゃうんだよ。それが、全身を這うんだよ。無理、無理。絶対無理。
無理なんだけどさ……正直、心が凄く痛むんだよね。だって……満面な笑みを浮かべながら「どうでしたか?」って訊いてくるんだもん。「スライムが気持ち悪くて精神的に無理です。入れませんでした」なんて、絶対口が裂けても言えないじゃん。傷付けちゃう。となると、
「ありがとう。肌がツルツルになったよ。気持ち良かった」
って、答えるしかないよね。ニコッと笑いながら。折角用意してくれたんだもん。その気持ちだけで、とても嬉しいからね。
因みに入れなかったのは私一人だけだった。他の皆はスライム風呂を満喫したんだって。
(何で……?)
皆、私が神経質過ぎるって言ってるけど、私の反応って特に神経質じゃないよね。解せん。
お待たせしましたm(__)m
今回、とても短いです。




