第十一話 処刑七日前(4)
「とことんブレないね~~」
思わず、心の声が漏れちゃったよ。
精神HPを確実に減らすスライム攻撃を潜り抜け、漸く辿り付いたゴールの先。出たのは広場だった。
そこには何もない。何もね。
となれば、大体この先の展開って簡単に予想出来るよね。ほんとブレない。あっ、天井に魔方陣が現れたよ。
当然、そこから現れたのはーー。
「デカっ!」
予想してた通りスライムだった。
ただ……その大きさが問題だった。広場の三分の二を占める大きさに、さすがに驚愕する。
ニュルニュル。クネクネ。
スライムが窮屈そうに身を捩ってる。そんなけデカかったらね。あっ、表面がボコボコしてきた。
(来る)
思った通り次の瞬間、ボコボコから伸びた触手が私たち目掛けて襲ってきた。デカイ体に似合って攻撃力はかなり高そうだ。避けた箇所の石畳が削られてる。当たったら、確実に骨と内蔵がやられる。念のために物理防御の魔法を全員に掛けててよかったよ。
勿論、攻撃を避けながら【鑑定】するのを忘れてないよ。
【ビックスライム(改)】
改良型済みのスライム。
HP 4500/4500
MP 0/0
物理攻撃有効。
全ての魔法攻撃無効。
(止めがこれか~~)
呆れて何も言えない。完全に引いたよ。
徹底してるっていうか……ここまでされると、少し病的なものを感じるわ。リベンジの枠越えてない? もはや、嫌がらせだよ。それも手の込んだ。まぁ簡単に言えば、強制ヌルヌルの刑ってわけね。それも、改良型のようだし。当然、改良したのはセイリュウ様よね。付き合い方考えるわ。マジで。
「ここまで拗らせてたとは、我も思っておらんかったわ」
疲れ切ったシュリナの声が隣から聞こえてきた。
「もう病気だな」
ヒスイもどこか諦めたようだ。遠い目をしてる。
(ご愁傷さまです)
感想それしかないよね。取り合えず、それは後回しにして、目の前にいるスライムだけど。
「ここに来て、魔法攻撃無効ね……」
ここに来るまで精神攻撃に主点を置いてて、止めは精神攻撃プラス物理攻撃。エグいやり方よね。我慢するしかないか。でも気を付けないと、消化液でドロドロにされちゃうよね。
「睦月。ここは僕に任せて」
カッコ良く登場したのはロイだった。
ここは素直にロイに任せよう。女子グループは後ろに下がって応援だ。
ロイとサス君が前に出る。
ビックスライム(改良)VSロイ&サス君。
先制はビックスライム。
それをヒラリと交わす、ロイとサス君。交わしながら、触手を切る。ボタッボタッと床に落ちる触手。床に落ちた瞬間、触手は溶けてしまった。水溜まりが何個か出来る。
(まさか、あの水溜まり!?)
「ロイ! サス君! 気を付けて!! もしかしたら、その水溜まりローションかも」
言い終わらないうちに、滑ったロイが受け身を取りながら転ぶ。怪我はなさそう。よかった。でもローションまみれだ。真っ白な毛並みが……ん? あれ?
「……ねぇ。ロイの服溶けてない?」
肩の一部とズボンの一部から皮膚が見えてる。それは徐々に広がっていく。
サス君に異常なさそう。ってことは、溶けるのは服だけってことだ。そんな特殊なスライムなんていない。わざわざ改良して作り出さない限りね。
私たち女子グループの周囲の空気が段々下がっていく。
「どうしても、セイリュウ様の封印を解かなきゃいけないの?」
低い声でシュリナとヒスイに尋ねる。
「本当にすまない」
「悪いな、ムツキ。諦めてくれ」
「何を諦めるの? ヒスイ」
別に声を荒げたつもりもないのに、小刻みに震え出すヒスイ。シュリナの後ろに隠れようとしたが、シュリナに蹴られてる。そんな聖竜様たちを冷めた目で見たら、シュリナとヒスイがピシッと凍り付いた。
それを無視して、ビックスライムに近付く。歩く度に、足を付けた場所が凍っていく。
「「……ムツキ?」」
シュリナとヒスイが私の名を呟く。
服がボロボロのロイと体液まみれのサス君が、私が出て来たのに気付いてスライムから距離をとる。
「凍らない液体ってないよね」
魔法攻撃は無効でも、魔力で凍らすのは有効だよね。だって、凍らすのはスライムじゃなくてこの部屋全体だからね。
部屋全体が薄っすらと霜が掛かる。
皆はサス君と聖竜様の結界内に避難済み。
ビックスライムは本能的に恐怖を感じて逃げようとするが、逃げる場所なんて何処にもない。そうしているうちにも、霜が段々真っ白に変化していく。
さて……理科の実験を始めましょうか。
お待たせしましたm(__)m
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