表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
274/316

救出



 ヘルム村郊外ーー。


 人も家畜も眠りに付いた時間帯。


 一切の音がヘルム村から消えた。些細な音でさえも響きそうな中で、三つの影が音をたてずに動き回っている。


 月明かりが三人を照らし出した。


 全身黒装束に身を包んでいるので、顔は伺う事は出来ない。出来ないが、影の大きさから、女一人に男二人だと推測出来た。


 影らは村の端に位置する石の塔へと向かう。完全に地理が頭に入ってるのか、全く迷うことなく最短距離で進む。


 石の塔に辿り着いた影は一旦その足を止めた。木々の影に同化し身を潜める。


「見張りは二人ですね」


 呼吸音ぐらいの小声で、女が話し掛ける。普通の人なら、まず聞き分ける事も出来ないぐらい、小さな小さな声だ。特別な訓練を受けてるからこそ、聞こえる声だった。


「見張りはどうとでもなるが、アレはどうするんだ?」


 影の一人が塔の入口を指差す。一見、どこにでもあるようなドアが三人には光って見えた。つまり、何らかの術式(罠)が仕掛けられてるってことだ。


 問題なのはその術式。


「……あの術式の基盤は、泥棒避けの結界ですね。……おそらく、触れると音がなる仕組みのものだと。それにしては、術式が複雑ですね……」


 スキルを発動してなくても、これくらいは解読出来ます。でも、複雑に絡んでいる術式を解読するには、やはりスキルを発動しないといけませんね。


「解読出来るか?」


「最悪無理なら、直接窓からの侵入でもいいだろ?」


 慎重派の男と、行き当たりばったりでも何とかなるだろと思っている男。まぁ、行き当たりばったりでも、それを後押しする程の実力があるから言えるんですけどね。なければ、只の馬鹿です。


 それにしても、久し振りに組みましたが、相変わらず正反対の二人ですね。これで、息がピッタリなんだから不思議ですよ、ほんと。


 思わず、マスクの下で苦笑してしまう。


 それだけ、二人共プロってことですよね。私も負けてはいられません。さて、それじゃスキルを解放しますか。


 ーー固定スキル【解読】発動。対象、魔術術式。


 当然、声には出しませんよ。常識です。


 発動した途端、魔方陣に描かれている様々な文字と図形が、ばらばらになって空中にポツポツと浮かぷ。やがてそれが、意思を持ったように動き出し小さな魔方陣を作り出す。


 いつ見ても、この光景は幻想的で綺麗ですね。残念なことに、スキルを持つ私しか見ることが出来ませんが。薄暗い洞窟内で光苔が一斉に光出した時と似てますね。


 解読に費やした時間は二分程。


 うっわ~~マジですか? 思わず、声に出しそうになりましたよ。あのマリア様が、ロイという人物をやけに警戒していた意味がよ~く分かりました。これだけの罠を仕掛けられるんです。魔法に関しても、知識、実力ともずば抜けていますね。頭も固くなく、柔らかい。ただ性格は……。えげつないことを平気でしてますね。容赦なく。お腹の中は絶対真っ黒ですよ。勿論、ドSですね。


「……お待たせしました。やはり、ベースは泥棒避けの結界ですね。派手な警戒音がなる仕組みのものです。あとそれに、毒と呪いが付いてますね。因みに、触れると転移しますよ」


「転移?」


「おそらく、この術式を仕掛けた者の所ですね」


 アランとロイについて一切、二人には何も話していません。あくまで、仕事の内容についてだけです。その背後は特に必要ありませんからね。その点、彼らはプロです。徹底してますね。とはいえ、さすがに何も知らないとは思いませんが。おくびにも出さない点も、プロだと思います。因みに、私は一応、彼らの素顔も名前も知りません(一応ですが)。


 話が少し反れましたが。触れると、毒と呪いで血を吐き、のたうちまわりながら苦しんでいる様を、ロイとアランに見られるってことになります。うん。えげつないよね。やっぱり、ドSですよね。


「マジで? そいつ、性格悪くないか?」


「ほんと、いい趣味ですね」


 マリア様といい勝負です。


「となると、壁をよじ登るしかないのか……」


 確かに、これだけの罠が仕掛けられてるのなら、慎重派の男の言う通り、壁をよじ登るのが正解だと思います。


「一応、魔法を解読出来たので、それを無効化することは出来ます。だけど、正直お奨め出来ませんね。無効化した瞬間、相手に間違いなく気付かれますね」


「だろうな。気付かれて、潜られたら面倒だな」


 そうですね。面倒ですね。ただ、面倒ですめばいいんですが。


「それに、気付かれないように助け出すのが、今回の依頼条件だった筈」


 確かに。依頼条件を満たさなければ、再起不能に落とされたあげく、変なトラウマを植え付けられますね。間違いなく。誰にとは、口が避けても申せませんが……。


 となれば、取る手は一つ。


「壁をよじ登りますか」


 私の提案に男たちは軽く頷いた。


 入口脇に立つ見張りの背後を取ると、口元に眠り薬を染み込ませた布を当て眠らせる。


 あっという間に見張り二人を片付けた後、三人は石の塔の屋根にロープを引っ掻ける。力をいれて二度程引っ張ってみる。外れないのを確認してから、するすると三人は、石の塔の壁面を登って行く。


 最上階の牢屋から、僅かだが光が漏れている。


 三人は窓に近付いた。


 微かだが人の声が聞こえる。


 こんな時間に話し声? もしかして気がふれたの? 心配になって窓から室内を覗き込む。


 そこにいたのは、年老いた夫婦が二人と中年の貴族と息子だった。


 辺境卿……?


 これでも一応、マリア様と一緒にいたのですよ。彼らの顔は記憶済み。間違うわけありません。


 もしかして、グルなのですか?


 そんな考えが頭を過る。どう見ても、老夫婦は不敬罪で捕まったようには見えませんし。そもそも、顔寄せ合って話をしている時点でおかしくありませんか。100%黒で決まりですね。


「どうする?」


「ここまで来て手ぶらで帰るのか?」


 どうしましょう。老夫婦が想像通りグルならば、救出は無意味。却って悪手になる。確認する必要がありますね。なので、当然、


「少し様子を見ます」


 そう答えてから、念のために持って来ていた魔法具のスイッチを押した。


 外に私たちが居るとは知らない四人は、声を潜め話を続けている。窓ガラス越しだが私たちには関係ない。はっきりと聞こえてくる。


「…………お前の孫娘、命令通り()()()と接触したぞ」


 例の娘? おそらく、護りて様の事ですね。


「そうですか……。あの子は無事なのですね。約束は守りました、辺境卿様。なので、例の件はよしなに。宜しくお願い致します」


 例の件……? 例の件が何かは分かりませんが、護り様を貶める事に加担したのは間違いなさそうですね。許せませんね。


「にしても、お前の孫娘、お前たちを助けるために必死で頑張っておるぞ」


「……あの子は優しい子ですから…………」


 ホッとした様子を見せる村長夫妻。それは、孫娘の無事な様子を聞いてのものか、それとも、作戦が無事進んでいるのを知ってのものか。たぶん、両方だろう。もしかしたら、後半の方が比重が大きいかもしれない。


 辺境卿は、そんな村長夫妻の顔を見て低い声で嗤う。


「何て顔をしている、村長。その子を使って、この辺境卿であるわしから金を巻き上げようとするお前たちが。良心でも痛んだか?」


「私は間違った事はしてません。村長としての役目を果たしただけです。これで、この村は救われます」


 村を救うために孫娘の気持ちを利用し、あまつさえ、護りて様を害しようとした訳ですか。分かりました。そうですか、ウフフ。


「「………………」」


 あっ、すみません。殺気が漏れてたみたいですね。私もまだまだです。気を付けないと。辺境卿たちが凡人以下で良かったです。


「予定変更です。このまま戻ります」


「分かった」

「了解」


 私たちは音をたてずに来た道を戻ったのだった。


 




 大変お待たせしましたm(__)m


 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ