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教会



 陽が暮れてから落ち合うのは意外と足が付きやすい。ハンターや商人、夜の町に繰り出す面々でも。夜の町はそれだけ、皆注意深いって事です。


 まぁ、当たり前なんですけど。物取りやスリに喧嘩、トラブルに合わないように気を配ってますから。トラブルに合って怪我しても自己責任。休めば、その分だけ暮らしに影響が出る。なのに、男たちは喜んで遊びに繰り出すのだから、馬鹿としか言えませんよね。


 それでも、陽が暮れてから落ち合わなければいけないのなら、まず素人が指定しそうは場所は、酒場の裏口とか路地裏辺りになりますか。


 実はそこが一番危ないんです。というか、色んなその道のプロが特に目を配ってる場所ですからね。だから、ある程度の玄人になると、昼にその手の話をするのが通例ですが、今回は時間がありません。


 となると、一応人目に付きにくい場所で、人の出入りが多くても特に不審がらない場所になりますよね。


 そんな場所を見付けるなんて……考えるのも億劫になりますよ、ほんと。


 だけど、マリア様が日々使ってるのはカシキ教の信者。信者の中でも、マリア様が出す数々の試験をパスした信仰が厚い信者たちです。属にいう、狂信者たちとも言えますね。


 平民、商人、ハンター、貴族。様々職種と身分の者が一緒の建物にいてもおかしくない場所。


 そして、色々な言い訳がまかり通る場所。


 そうなると、一つしか思い浮かびません。


 教会です。


 実際主は、護りて様の()()使()()()を集めたり、共有する過程で、何度も教会を利用している。立派なストーカーです。勿論、狂信者たちもですが。


 そして今も、神官長室の奥にある秘密の小部屋で会合中。


 私も参加しております。一応、試験にはパスしておりますから。でも、私はストーカーではありませんよ。そこは、強く言っときます。


「……それで、あの愚か者たちは今どうしているのです?」


「教祖様を陥れる計画をたてております。大神官長様」


 メイド服を着た中年の女性が答える。その声はとても静かで冷たい。


 この方は愚か者たちが匿われた屋敷のメイド頭です。それから、大神官長とは、勿論マリア様の事です。


「その計画とは?」


「それについては、私が。卑劣にも、年端もいかない子供を使うようです」


 中年の女性と目配せしてから答える。答えたのは、二十代後半の青年だった。小綺麗な格好をしている。この方は、匿われた先の執事を務めております。


「子供?」


「はい。辺境卿が治める領地の中で、ヘムル村という村があります。特にこれといった特徴がない、長閑な村です。その村の名前が会話の中で何度か出てまいりました。そして昨日、村長夫妻が投獄されたそうです。孫娘を残して」


「投獄ね……」


「はい。不敬罪だそうです」


 不敬罪とは……自分の事は完全に棚にあげてますね。愚かにも程があります。


 不敬罪という言葉が出た途端、この部屋にいる全員がうっすらと口元に笑みを浮かべる。勿論、私もです。


「それで、その村の映像は記録しているわよね」


 否と言わせない迫力があった。これぐらいの迫力で怯むようでは、試験には受かりません。


 少し逸れましたが、マリア様が【先読み】で見た映像と共通している場所があれば、まさに、ヘムル村が護りて様を断罪する場所として特定出来ます。特定出来れば、如何いかようにも手が打てますからね。


「それは私が。こちらを御覧下さい」


 初老の貴族の男性が、魔法具にうつした映像を再生させる。


 この方はメイド頭と執事を送り込んだ方です。辺境卿の血筋の本家筋に当たる御方で、今回の件は当初から関わっております。分家の分家とはいえ、自分の一族から裏切り者が出た事に、怒り心頭で、事が終わり次第、彼らの身柄は……答えるまではありませんね。ああ、勿論既に、辺境卿の貴族籍は剥奪していらっしゃるようです。馬鹿な辺境卿の親子は気付いてないようですが。ほんと、馬鹿ですよね。


 長閑な村の景色が空中に浮かび上がった。


 村の出入口に建物の映像。特に詳しく細部にわたって映し出されたのは、石の塔の映像だった。二塔ある石の塔の中央には、石で造られた床の舞台がある。


「その映像を大きくしなさい」


 くいるように見ていたマリア様が反応したのは、舞台下から石の塔を撮った映像でした。


 マリア様がニヤリと笑います。黒い、真っ黒な笑みです。呪い殺せそうな程真っ黒です。こんな笑み、護りて様には到底見せられませんね。私もですが。


「クスッ。これで、場所は特定出来ましたね」


「「はい」」

「そのようで」


 この場にいる全員、間違いなくマリア様と同類です。何度も言いますが、私は違いますよ。


「それで、投獄された村長夫妻は石の塔に?」


 初老の貴族は軽く頷く。


「……(一応)救出しますか?」


 ずっと黙って主の後ろに控えていた私は、この会合で初めて口を開いた。


「あやつらに加担する者だぞ」

「そうです。村長夫妻は不運ですが、教祖様の御身に害を及ぼそうとする者の一味です」

「私もメイド長の意見に賛成致します」


 猛反対された。


 まぁ、当然ですね。村長夫妻は巻き込まれただけですが、孫娘は脅迫されたとはいえ、愚か者たちに加担する以上、その罪は免れないでしょう。私も心情では皆様と同意見です。ですが……。


「そうですね。(一応)救出しなさい」


 主も同じ考えのようです。含みも。


「「「大神官様!!!!」」」


「畏まりました」


 しかし、皆様方は声を荒げます。私は頭を下げました。


 マリア様は軽く溜め息を吐いた後、重い口を開き仰いました。


「私も、心情では皆さんと同じ意見です。……しかし、我らの光である教祖様がどう思われるか、考えてみなさい。お優しく、慈悲深い御方です。悲しまれるに違いないでしょう。我らを薄情だと詰るかもしれない。冷たい目で我らを見るかもしれない。最悪、教会を閉じよと命ずるかもしれない。……貴方たちは耐えられますか?」


 その御言葉に、ハッとした皆様方。崩れるように膝を折り、冷たい床に両手を付くと、ハラハラと涙を流す。


「……村長夫妻と孫娘は、教会が保護します。いいですね」


「「はい」」

「異存はありません」


 保護ですか……それも教会で。あーーいい笑顔ですね、マリア様。



 



 お待たせしましたm(__)m

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 今回も引き続き、侍女目線でした。


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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