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第一話 書面

明けましておめでとうございますm(__)m



 ジュンさん家に二泊した私たちは、一旦ホルンに戻るつもりだった。


 そのつもりだったけど……今目の前に、ホルンにいる筈の二人が仲良くご飯を食べていた。


「何で、二人がここにいるの? そもそも、何で当然のように昼御飯食べてるのかな?」


 呆れながら、銀色の尻尾とケモ耳を持つ友人に突っ込んだ。


「一度、食べてみたかったんだよね」


「そうそう。ムツキが美味しいって、いつも言ってたお店に、ど~しても行きたかったの」


 ちっとも悪ぶれない猫科(ホワイトライオン)の双子。


「ちょっと待って。店の名前言った覚えなかったんだけど……何で、知ってるのかな?」


 思わず納得しそうになったよ、オイ。


「そうかな~」

「聞いた気がするけど」


 そうなの?


「私、言った?」


「「言った」」

「「言ってない」」


 双子とサス君たちの声が綺麗にハモる。ミレイを見れば軽く首を横に振っている。


「……言ってないんだね」


 勿論、信じるのはパーティーの皆だ。


 呟いた声は小さかったけど、ミカとロイには聞こえた筈。獣人だからね。なのに、聞こえないふりをしてご飯を食べている。それを見て、溜め息混じりの苦笑が漏れる。


 正直ちょっと引いたけど、まぁ、ミカとロイだしね。それで納得出来るのも、少し問題のような気がするけど。許せるんだよね。どうしてか。


「で、どうしてここに? 本当にご飯を食べに来ただけ?」


 二人の食事が一段落したところで訊いてみた。


「そうだよ。一番の目的はね」


 ロイが答える。


 一番の目的ね……やけに、意味深な言い方だ。


「セッカとナナの件が済んだら、ムツキ、蒼の大陸に行くつもりだよね?」


 ミカが訊いてくる。


「うん。そのつもりだけど」


 次のクエストまでの一か月、蒼の大陸を攻略するつもりだった。


 余裕までとはいかないけど、転移魔法で王都まで飛べば大幅に移動時間を短縮出来る。当然、その手筈は調えていた。ジェイに頼んだだけだけど。


「一旦、ホルンに戻るつもりだった?」


 ロイが訊いてくる。


「うん。戻るつもりだった。それがどうしたの?」


「良かった~~。行き違いにならなくて」


 心底、安心する二人。まるで、一緒に行くって言ってるような気がするのは私だけ? そう感じたのは私だけじゃなかったようだ。


「どういう意味だ?」

「まさか、一緒に来るつもりじゃないよね?」


 同時にサス君とココが声を上げる。ニアンス的に、来んなって遠回しに言ってるよね。結構喧嘩腰だ。勿論、ロイとミカは気付いている筈。


 だけど、ロイとミカはさらりと流し、ニッコリと微笑む。


「「一緒に行くつもりだよ」」


 いやいや、何でかな? ……ん? 何か引っ掛かる。何で、ホルンで待たなかったのかな? ただ一緒に来るだけなら、ホルンで待ってもよかった筈だよね。寧ろ、そうすべき。ジュンさんのご飯が食べたかったのは別としても。それに、セシリアさんの目を盗んでここまで来れるかな?


「……何かあったの?」

 

「やっぱり、ムツキは勘がいいよね」


 ロイが苦笑する。


 その時だ。様子を見に来たジュンさんがタイミングよく声を掛けてきた。「ムツキちゃん。二階に上がって貰えば?」と。


 頷くと、二階に場所を移した私たち。


「ここが、ムツキの部屋なのね!!」

「ムツキの濃厚な匂いがする!!」


 変態に変貌したミカとロイは、異様に興奮しはしゃぐ。ミカは目をキラキラ輝かせているし、ロイは深呼吸を繰り返す。


 ベッドにダイブしようとしたミカは、サス君に体当たりされて床とキスをする。ロイは爪を出したまま抱き付くココの地味な、でも痛い攻撃に悲鳴を上げた。いつもの光景だ。うん、安心するね。


「お茶をご用意しました」


 ミレイがお茶を運んで来た。


「ありがとう」


 良い匂い。それに美味しい!! うみねこ亭の名物ドリンク、完全に習得したね、ミレイ。これで、新鮮な果物があれば何処でも飲めるよ。私には頑張っても無理だからね。


 和んでいる私とミレイを他所に、直ぐ側で熾烈な争いが起きていた。


 六畳一間に座る所はない。一脚しか椅子ないし。後はベッドだよね。私は別に構わないんだけど、サス君とココがでんと座っているので座れない。やけに悔しそうなミカとロイ。反対に、サス君とココは機嫌が良さそう。


 で、結局ミカが椅子に。ロイは立ったままだ。一応、皇子と皇女なのにこの扱いって……。


「……何かホルンであったの?」


 落ち着いた所で訊いてみる。


「実は、黒の大陸の件が済んでから、父上宛に、何度か白の大陸から書面が届いてて……」


(白の大陸……)


 歯切れが悪くなるロイ。私が眉をしかめてるからだ。チラチラとロイは様子を伺う。


 正直言えば、天王にいい印象はない。いい印象どころか、最悪な印象しかない。出来れば二度と会いたくない人物ベスト3に入る程だ。一度しか会った事がないけどね。たった一度でそこまで入る人物って、どうよ。


 天王は私に、偽鬼王を秘密裏に殺せって言った人物だ。


 要は、暗殺だよ、暗殺。


 当然私は即座に拒否した。


 すると、断られると露程も思っていなかった天王と、同席していた皇子は怒りを露にした。天王は怒鳴ったりはしない分、感情のこもらない冷たい声で、私を詰った。皇子は声を荒げた。


「白の大陸から書面ね……」


 呟く声と共に、室内の温度が数度下がる。暑いから丁度いいくらいだけど、サス君とココ以外は鳥肌がたっている。


「そんな書面、無視したらいいんですよ、睦月さん」


「そうだよ、ムツキ。聞かなかった事にしたらいいんじゃない」


 五大陸の王からの書面を無視しろっていう、サス君とココ。


「勿論、無視するつもり。……でも、どんな内容の書面が来たかは知っときたいよね」


 堂々と無視をするって宣言した私に、反論する声はない。ロイとミカは会談の内容を聞いていたし、ミレイはムツキ至上主義、そもそも反論する気持ちを持たない。


「天聖祭って知ってる?」


「天聖祭?」


 それって、白の大陸で開催される祭りか何か?


「あ~成る程ね。そういう訳か……」


 ココには分かったようだ。


「どういう事?」


「天聖祭って、白の大陸で最大の祭りだよ。五大陸の中で一番盛大な祭りって言ってもいいね」


 ミカに代わってココが教えてくれた。


「へぇ~~そんなに盛大な祭りなんだ」


(まぁ、納得出来るかな。自分たちが一番優秀だって思ってるようだし)


「そう。その祭りの一番の見せ場が、巫女長様からの御言葉なんだよ。つまり、聖獣麒麟(きりん)様の御言葉」


 ココがそこまで言って、私でも理解が出来た。


「あ~そういう事ね」


 サス君とミレイが私を見る。


「つまり、一番の見せ場がなくなったから困ってる訳ね」


「そう。何でも、神殿から何も言って来ないそうだ。で、困った天王がムツキにとりなしてもらいたいって言ってきたんだ。あくまで表面上は、祭りの招待客としてだけどね」


 ロイが苦笑しながら答える。


「はぁ~~そんなの、断るに決まってるじゃない」


 返事を返すまでもない。完全な拒絶。それで十分だ。


 そもそも、旅をしている理由忘れてない? 分かってたら、そもそもそんな台詞吐けないよね。あり得ない。麒麟様の言葉は大事かもしれないけど、要は自分たちの保身のためだよね。


(つまり、また私を利用しようとしている訳ね。ほんと、懲りないよね……)


 呆れて物も言えない。


「そうだよな。父上もそう考えて、障りのない返事を返してたんだが、等々痺れを切らしたらしくて、先日、ホルンに使者が来たんだ」


「使者?」


「天王の娘よ」


 ミカが苦々しい顔で答える。どうやら、ミカはその天王の娘が嫌いなようだ。ロイも苦手なみたい。私も会った事はないけど、好きになれそうにないタイプかも。


 そこまで言われて、ミカとロイがここにいる理由が分かった。


「だから、ホルンに戻らないように言うために、グリーンメドウに来た訳ね」


 来てくれて、感謝。


「ふむ。だが、一緒に蒼の大陸に行く理由にはならんな」


「まだ、何か隠してる事があるんじゃねーの?」


 ここにいる誰の声でもない声が、私たちの間に割って入ってきた。





 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


【いざ、竜人の国へ編】が始まりました!!


 今年も頑張りますので、宜しくお願い致しますm(__)m

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