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【閑話】黒衣の男

 ジェイ視線です。



「結局、奴は何がしたかったんだ?」


 王宮の執務室で報告を聞きながら、俺は深い溜め息を吐く。


 全てのハンターギルドの頂点に立ち、朱の大陸を治める勇王でもある俺は、眉間にしわを寄せ唸っていた。


 一応定期的にキャリーバードからの報告は受けてはいたが、やはり直接聞いた方が良いと判断したから呼んだんたんだが。というより、意味がいまいち理解出来なかったとから呼んだといった方が適切か。


 黒の大陸から戻って来たばかりのケイとシオンから直接聞いても、奴の行動の意味が読めないでいた。


 ーー奴。


 それは黒衣の男。


 闇落ちした元愚王子ゼノム=ユリウスの事だ。


 彼は愚かにも勇王になりたくて、〈護りて〉になろうとした。聖竜に認められれば勇王になれると考えたからだ。ゼノムは〈護りて〉の存在を完全にはき違えていた。


 そしてあろうことか、私兵や騎士、ハンターを雇い、スザク様の眷族を襲った挙げ句、巫女長様を誘拐し、スザク様に直接謁見しようとした。その為には、神殿を血に染める事も厭わなかった。


 幸いにもこの時、大賢者イオリがこの場に居合わせたので、巫女長の誘拐は未遂に終わった。しかし、女、子供を問わず大勢の眷族を殺害し、集落に火を放ったのは間違いなく、愚王子であったゼノムだ。


 大賢者イオリは愚王子ゼノムの愚行に怒り、彼と彼に付き従った者を全て永久奴隷に堕とした。何百年掛かっても解けない〈呪〉という加護を与えて。


 それは、魔王を名乗った英雄の手によって平安な世が訪れてから起きた、最も凄惨な事件だった。その傷痕は今も色濃く残っている。


 当然、ゼノムの名は完全に抹消され闇に埋もれた。


 確かに埋もれた筈だった。


 それが二か月前、突如表に出てきたのだ。それも、ムツキが頭角を現した時期と重なっている。


 まず初めが、ホムロ山の魔物の件だった。次が、死後直ぐに緑の民の族長の両目(魅了眼)を奪った件だ。そして今回、偽王と偽巫女長に接触した。


 黒衣の男に関して殆ど何も判明していない。


 特に重点を置いて探っているのは二点。


 一つ目は、ゼノムの居場所を特定出来ない事だ。あらゆる機関を使い調べているが、未だに掴めていない。悔しいが後手の一方だ。


 二つ目は、その目的だった。まだ、緑の族長の件は魅了眼が目的だと考えられるが、ホムロ山の件や偽王たちの件は、何故か分からないでいた。


 特に疑問だったのが、偽王たちの件だった。ゼノムは彼らに()()()だけだ。()()()訳ではなかった。その差は大きい。


 ゼノムが接触した時、既に偽王も偽巫女長も道を踏み外していた。混乱させ、長引かそうと画策したとしても、ムツキの前に現れ邪魔をしてない時点で、意味がないとしか言えない。しかし……。


 今まで姿を現さなかったゼノムが、姿を現してまでしたかった事。それに意味がないとは当然考えられなかった。一つ一つが、自分たちには知り得ない、それぞれの目的があったと考えた方が納得する。


(……奴が何をしたいか、全く分からない)


 それさえ分かれば、先手が打てるのに。


「別に意味なんてないかもな」


 項垂れる俺の神経を逆撫でするように、シオンが能天気な事をぬかした。


「目的がないなんて、あるわけないだろ」


「そうだぞ。少しは考えろ」


 怒り半分呆れ半分の俺とケイに、シオンはいつも通りに飄々(ひょうひょう)と答えた。


「考えるのはお前たちの役目だろ? お前たちに分からない事が俺に分かるわけないだろーが。……ああ、そういえば、ムツキも俺と同じ様な事を言ってたぜ」


「はぁ!? シオン、ムツキに喋ったのか!!」


 黙っているように指示してた筈だ。


 ムツキにはある程度精査してから話そうと考えていた。これ以上、ムツキに負担を掛けたくなかったからだ。


 自分には制約が多い。だから、直接護りたいと思っても不可能だ。特に他の大陸にいる時は。代わりに出来るのは、ムツキの負担の一部を背負う事ぐらい。それでも、出来る事があって俺は嬉しかった。なのに、こいつは……。怒りが沸々と湧いてくる。


「喋ったのは俺じゃねーよ。喋ったのはリードだ。俺は偶々その場に居ただけだ」


(喋ったのか、あのオッサン)


 頭が痛くなってきた。黙っていた自分が馬鹿らしくなる。


「(敢えて止めなかったのか、この馬鹿は)それで、ムツキは何と?」


 頭を抱えた俺を横目にケイが尋ねる。


「もし、世界を混乱させたかったら、こんな中途半端な真似はしないだろうって。悪趣味な嫌がらせに近いんじゃないかって、言ってたぞ」


「「……悪趣味な嫌がらせ?」」


 思ってもみなかった台詞に、唖然とした俺とケイは綺麗にハモる。反対に、シオンはいつもと変わらない。ある意味、こいつが一番腹が据わっている。


「ああ、嫌がらせだってよ。……だって、考えてみろ。百年以上も姿を隠し通す事が出来る奴が、こんな中途半端な真似で姿を消すなんて考えられない。本気でるなら、当に、黒の大陸は再起不可能な状態になってるって、ムツキは言ってたな。俺も同感だな。……一つでも大陸を再起不可能し、聖竜を殺せば復讐は叶う。今回は絶好の機会だった筈ってな。それを棒に振ったんだ。復讐が目的じゃないだろう。とはいえ、何を考えてるか分からないから、警戒はしとくって言ってたぞ」


「「………………」」


 二句が付けない俺とケイに、シオンは止めの一撃を与えた。


「訳が分かんねー目的を考えるよりも、拠点を探した方が手っ取り早くねーか? 目的なんざ、捕まえてから本人に訊けばいいだろ?」


 ぐうの音も出ないっていうのは、正にこの事だった。


「………………それなら、およその検討はつく。おそらく、ゼノムは〈深淵のダンジョン〉を拠点にしてるとしか考えられない」


 ケイもシオンもさほど驚かない。その可能性があるって事も想像していたようだ。


 ハンターギルドと商業ギルド、そして各大国の情報機関を屈指しても消息が掴めない。とするならば、考えられる場所は一つしか残ってなかった。考えたくないが……。




 ーー〈深淵のダンジョン〉


 この世界で最大のダンジョンであり、正体不明のダンジョン。一度入れば出る事がかなわない、別名〈人喰いダンジョン〉。


 その入口もまた不明とされている。何故なら、入口が常に移動しているからだ。






       呪われた黒竜【黒の大陸編】完結



 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 参考までに、大賢者イオリは先代の伊織さん(♀)です。黒衣の男については、【神殿編】と【黒衣の男編】に詳しく書いています。


 後一話【閑話】を入れる予定です。


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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