第九話 討伐開始
完全に寝不足です。欠伸が何度も出てきます。
初めての、本格的な討伐。初クエストなのに、こんなんでいいのかな? でも、眠い。
寝不足の原因は、目の前にいるギルマスとイエール副団長のせいです。他の騎士さんたちは巻き込まれただけだって、ちゃんと分かってるから。
だって、ツートップのギルマスと副団長さんが野宿するのに、部下である騎士さんたちがベッドで熟睡は出来ないよね。いくら、気にしなくていいって言われてもね……出来ないわ。
あっ、でも、今晩も野宿するけどね。鬼とか言わないでよ。だって、今更、宿屋に泊まるのはね~~。お風呂には入りたいけど。そこは我慢かな。正直、泊まるのは無理です。
巻き込まれた騎士さんたちの何とも言えない顔を見て、ちょっと良心が痛んだので、皆に浄化魔法を掛けました。喜んでもらえて良かったです。今晩も掛けてあげようと思います。
で、今はというと、皆で朝食中です。
「これが、新しい見取り図だ」
カフィを飲みながら、ギルマスは見取り図を皆に回す。
カフィはコーヒーに似た飲み物だ。朝の定番だね。原材料は果物の豆だって聞いた。何の果物だったかは忘れたけど。
勿論、私はカコアだ。因みに、ココもサス君もカコア。牛乳が似合うのにね。ココもサス君も牛乳が苦手って、ちょっと意外だ。カコアに入れて飲むのは全然平気なのにね。
回ってきた見取り図に視線を落とす。
「黒いバツ印がハイオークの出現場所ですね」
見取り図は毎日更新している。
今日の見取り図はいつも違い、四つに色分けされていた。
(四つに別れて分担するって事ね)
ココとサス君も見取り図を覗き込む。
私たちは討伐担当。他のハンターたちは現場の情報収集が主な仕事だ。
主に彼らはマトガ村に潜り、村の見取り図の作成と魔物の出没箇所、そして、どんな種類の魔物が生息しているかを調べる。その途中で、魔物に接触した時は迷わず討伐する。危険でとても大事な仕事だ。彼らのおかげで、素人の私でも比較的安全に潜る事が出来るんだから。
じゃあ、ショウたちも見取り図作成に関わってるのかな? めっちゃ、方向音痴だったよね。グリーンメドウの前で迷ってたよね。う~ん、謎だ……。出会った時の事を思い出しながら、見取り図を眺めていると、
「ああ、そうだ。その周辺は俺が担当する」
ギルマスが勝手出た。
(うん。それが妥当だね。ギルマスは赤担当か……。ん? もしかして、危険区域ごとに色分けしてる?)
「緑と黄色は騎士たちに。青はムツキに任せる」
「「「了解!!」」」
私たちが担当するのは、一番入口に近い場所だ。そして、逃げ易い場所でもあった。
青の区域だけあって、比較的、生息する魔物もレベルが低いものが多いようだ。うん。やっぱり、一番危険度が低い場所だったね。だからといって、危険じゃないって事にはならないんだけどね。……取り合えず、私に出来る事は、割り振られた仕事をやりきるだけだ。
「騎士たちは、勿論知ってると思うが、並行して、死角になりそうな場所は徹底的に破壊する事。特にムツキ、分かったか」
「はい」
魔物がこの村に生息するようになった大きな理由は、住人たちが暮らしていた建物が、身を隠すのに適したためだ。つまり、棲みかに丁度良かったわけ。
いくら魔物を討伐しても、建物をこのまま放置していたら、また別の魔物がこの村を棲みかに選ぶ。それを防ぐために、魔物が隠れそうな場所は徹底的に破壊する必要がある。それに、天敵である私たちハンターが暴れた痕跡があれば、魔物は危険を察知して近付かないしね。一石二鳥ってわけ。
「今日、村に潜るのは俺たちだけだ。タイムリミットは日没まで。それまで、せいぜい派手に暴れて来い!!」
敢えて、ギルマスはハイオークの件を口に出さない。まぁ、出さなくても分かってるからなんだろうけど。出て来たら狩るだけだ。超、単純。
「「「了解!!」」」
副団長さんと騎士の皆が早速潜って行った。皆、張り切ってるね~~。
私たちもそれに続こうとした時だった。ギルマスに呼び止められた。
「ムツキ。くれぐれも無茶はするな。今回、初めての討伐だ。何かあれば、すぐに逃げろ。逃げる事は恥じゃないからな」
爽やかな笑みを浮かべ、ギルマスは私の頭をクシャと撫でる。突然の行為にビクッとするが、不思議とこれっぽっちも嫌じゃなかった。反対に、その大きな手に安心感さえ感じる。やっぱり、緊張してたのかな。ギルマスがそう言ってくれて、少し肩の力が抜けた。
「はい」
自然と笑みが溢れる。
(ん? どうかした?)
ギルマスが一瞬、凄く驚いた表情をした。だが直ぐにいつもの表情に戻ると、颯爽と潜って行った。
驚く程、変な顔になってたのかな? でも、嫌な顔されなくてよかった。でも、耳が真っ赤になってたよね。気のせいかな? よく分かんないけど、直ぐにいつものギルマスに戻ったし。気にする事ないよね。
私は気持ちを切り替えると、サス君とココと一緒に皆の後に続いた。
早速、派手な破壊音が聞こえてくる。
さて、いよいよ初めての討伐が始まった。




