第五話 いざ、瘴気の中へ
遅くなってしまい、本当にすみませんでしたm(__)m
ゼロに引かれながらも、更地にしたおかげですんなりと戻ってこれた。
ほんの三十分程しか離れてなかったのに、硫黄の臭いが増している。臭いが増した分だけ、〈呪い〉が進行しているって事だ。
その事実に、酷く顔が歪む。
間違っても、硫黄の臭いで顔を歪めたんじゃない。現在進行形で、自分たちの罪をゲンブと巫女長に全ておっ被せている、この国の住人たちに怒りが湧いたからだ。
「急がないと」
怒りのせいか、心配する声に怒気がこもる。
「ここからは我らが結界を張るが、それでも安全とは言えん。これだけの瘴気だ。多少なりとも、その身に影響する事を覚悟しておけ」
とても厳しい声だった。シュリナは私たちを見ながら告げる。その目は声と同様険しい。だが……その目の奥が揺れているのが、はっきりと見えた。ヒスイもだ。ここまで来て、心優しい二頭の竜は迷っている。
それを見て、私は自然と笑みが溢れた。シュリナとヒスイの険しい表情が崩れた。
「言ったよね。覚悟ならとうの昔に出来てるって。私もサス君もココも、シロタマも。じゃなきゃ、こんな場所まで一緒に来ないよ。巻き込んだとは思わないで。私たちは自分の意思で、この道を選んだんだから。分かった?」
「すまない」
「悪い」
同時に、謝罪の言葉を口にする。
「謝らないで。こういう時は謝罪の言葉じゃなくて、別の言葉が聞きたいかな」
だって、そうでしょ。仲間なんだから。
「……感謝する」
「ありがとう」
「「「「どう致しまして(キュウ~)」」」」
私たちが綺麗にハモッたところで、そろそろ行きますか。
ココを抱き上げる。魔物と対峙している時は、いつもシュリナかヒスイにココを預けていたけど、今回は私がココと一緒だ。シロタマは私の肩に乗っている。
「この瘴気だ。魔物は出ねーから安心しろ」
確かに。さっきから、全然魔物に襲われていない。気配すらなかった。まぁ、当然と言えば当然か。こんな瘴気の中で、生きていける魔物はまずいないだろう。彼らは人間よりも、その点本能に忠実だ。
足を一歩踏み出す度に、力が少しずつ抜けて行くような疲労感を感じた。
臭いも段々酷くなる。元日本人である私でさえ、吐き気がする程だ。目にもはっきりと瘴気が色濃く映る。常に、黒い靄が掛かっているようだ。特に濃い色をしている所は、瘴気が濃いって事だね。
さっきから、乾いた土を踏みしめてる時と同じ音がする。
シュリナとヒスイの結界を越えて臭ってくる程だ。瘴気にかなり汚染されてるのだろう。そこには、最早命は存在しなかった。
(気休めかもしれないけど……)
ーー【浄化】
試しに浄化の魔法を掛けてみた。
僅かに、硫黄の臭いが薄まる。数回掛けると硫黄の臭いは大分薄まった。呼吸が楽になる。気のせいかもしれないけど、疲労感も和らいだ気がした。皆が大きく息を吐くのが聞こえる。その様子に少し安堵した。
浄化魔法を掛け続けるだけの魔力は十分残ってる。魔力が少なくなれば、エリクサーを飲めば回復する筈。魔力回復薬はまだ作ってないんだよね。材料が一つ足りなくて。この件が片付いたら薬草採取に行こう。その時はゲンブも一緒だ。
一段と濃くなっている場所を避けながら進んでいると、不意によく読んでいた物語を思い出す。
「……こういう時、聖女様か神子様がいればなぁ」
思わず、ポツリと本音が漏れた。
異世界ものの冒険小説の中で登場する、瘴気を打ち祓う〈聖女〉と〈神子〉。
ロールプレイングゲームに酷似しているけど、この世界は現実世界だ。
だけど、究極のボスキャラである魔王が存在しない世界。故に、魔王と対峙する〈聖女〉も〈神子〉も存在しない。存在理由がないからね。その代わり、魔物と勇者は存在するけどね(笑)。
そもそも瘴気が発生する事事態、イレギュラーな出来事なのだ。
「「「「…………(気付いてないのか?)」」」」
シロタマ以外の視線が一斉に私に集まった。シロタマもつられる。
「どうしたの?」
「キュ? キュ?(何? 何?)」
「「「「…………(気付いてないんだな)」」」」
何も言わず、今度は一斉に視線を逸らす。皆の様子に首を傾げた。
理に最も近いとされる最高神に愛され、力の一部を受け継ぎ、結果、人から【亜神】へと進化した少女。
尚且つ、最高位に位置する霊獣と妖精に愛され、神に近い聖獣と魂の契約を交わした事実。
硫黄の臭いを消した事と、自分たちの体に溜まっていた瘴気を消し去った事実。
どれをとっても、〈聖女〉と〈神子〉の条件を満たしているのに。いや、それ以上の存在だというのにーー。
残念な事に、当の本人だけが全く気付いていなかった。
かなり短いですが、最新話更新しました。
長い間更新が滞ってしまい、本当にすみませんでしたm(__)m
加筆修正と同時に更新出来るよう、頑張りたいと思います。
それでは、次回をお楽しみ(*^▽^)/★*☆♪




