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第二話 眷族

 大幅に加筆修正しました。



(よく、のこのこと来れたものね)



 姿を現した者たちに、私は嫌悪感を隠す事なく睨み付ける。勿論、シュリナやヒスイたちもだ。

 あまり詳しい事を知らない筈のゼロやミレイでさえ、不快感を表に出している。



 正直、同じ空気を吸うのも嫌だった。

 彼らの視界に入るのも、私の視界に彼らが入るのも、不愉快で仕方ない。

 言葉が悪いけど、反吐を吐きそうだよ。マジで。

 なのに、彼らは私たちの気持ちに一切気付く事なく、当然のように頭を軽く下げ、挨拶を口にしようとする。聞きたくない私は、その台詞を途中で遮った。



「ようこ「シュリナ、ヒスイ。ゲンブのいる神殿まで案内して」」



 迷う事なく、私はシュリナとヒスイに道案内を頼む。ゲンブがいる神殿まで。怒りを含んだ声が、若干、低くなるのはしょうがないよね。



 台詞を遮られ、無視された事に腹を立てたのか、彼らがいる場の空気が瞬時に悪くなった。

 ガタイのいい男性が私を睨み付けていたが、そんなの全然怖くない。受け流す。無視無視。



「「こっちだ」」



 私の意図を、シュリナたちはちゃんと汲んでくれる。シュリナとヒスイは、神殿がある方角へと体を向けた。私と同様、完全に彼らを無視している。ゼロもミレイも同じだ。



「じゃ、行こうか」



 これ以上、この場にいる必要はない。ゼロとミレイには悪いけど、休憩はもう少し先で。

 私の声を合図に全員が動こうとした。その時だった。



「お待ち下さい!! 神殿に、関係のない人間、ましてや、魔物を近付ける訳にはいきません!!」



 長老か、族長か、まぁ、どっちでもいいけど。とにかく、その中で一番偉いだろう人物が声を荒げる。



「はぁ~~」



 地を這うような低い声を放つ。



(今何て言った? 一緒に行くなって言ったよね。それって、私の仲間を穢れた者だと言ってるのかな)



 いい根性してるよね。今が急ぎじゃなかったら、完膚なきまでに叩きのめしてやるのに。プライドごとね。

 でも今は、残念な事にそんな時間はない。必死で気持ちを抑え込む。代わりに、彼らを冷たい目で一瞥すると、シュリナとヒスイに尋ねた。



「駄目なの?」と。


「構わん」


「こいつらなら、全然OKだぞ」



 当然よね。さて、五聖獣であるシュリナとヒスイから了承を得た。だったら、良いよね。まぁ、反対されても一緒に行くけどね。



「じゃ、安心して行こう「なりません!!」」



 あくまで、彼らは私たちの行く手を阻むつもりのようだ。

 リーダー格の男性の声を合図に、彼らは広がる。私たちを取り囲むように。



 へぇ~~誰に喧嘩売ってるのか分かってる? 絶対、分かってないよね。だから、こんな事が起きてるんでしょ。



 今度は、私たちが殺気立つ。私たち周囲の空気が震えた。体感温度が低くなる。



 口先だけか。戦い慣れていないの丸わかりだな。



 連れて来た屈強な男性が、殺気に当てられて片膝を付いている。小刻みに体を震わす者もいた。腰を抜かす者も。



 情けないの。ちょっとしか、殺気を放ってないのに。全員戦闘不能か。……意外なのは、ゼロが平気だったって事だ。もしかして、ゼロって強いのかもしれない。ふと、そんな事を考えていたら、



「ほ~~。我らを足止めするつもりか」


「面白いじゃねーか」



 その声はどこか楽しそうだ。完全に喧嘩を買うつもりでいるね、シュリナもヒスイも。よく見れば、私以外の全員がそのつもりのようだ。

 勿論、私も参戦したかったよ。

 でも、今は時間が惜しい。こんな所で、時間をロスする訳にはいかない。ここは、心を鬼にして、私はシュリナとヒスイの名前を呼ぶ。

 私の意図に気付いたシュリナとヒスイは、少しクールダウンした。それを確認した後、



「…………五聖獣の一角である、スザクとビャッコが黙認している。貴方たちが口を挟む余地はない。今すぐ、下がりなさい」



 せめて、威厳があるように、かなり低い声で言い放つ。ここまで言って道を開けないのなら、仕方ない。



「それでも、認める訳には参りません」



 リーダー格の男性は、きっぱりと拒否する。



「へぇ~~。その権利が、自分たちにあると?」


「はい」



 五聖獣の立場よりも、自分たちの立場が尊重されるべきだと言い切ったよ、この人。躊躇ためらうことなく。馬鹿だね。



「……悪いけど、私はそう思わない。もし邪魔をするなら、排除する。これは、警告よ」



 私は少し、魔力を放ちながら言い放つ。本気だった。周囲の温度が少し下がる。



 護りてとはいえ、たかが人間の小娘にプライドを傷つけられ、彼らは憤る。



「なんと、乱暴な言い方だ!? それが、護りてが言うべき言葉か!? 我々は断固として、ここを退くわけにはいきません。我々は、ゲンブ様の「まさか、自分たちが眷族だからとは、さすがに言わないよね」」


「…………それは、どういう意味です?」



 そう訊いてくるって事は、自分たちが眷族だと思ってた?

 まぁ、ここに現れた時点で、そうかなぁって思ってはいたけど……。そこまで、馬鹿とはね。

 それとも、もう引くに引けないのか。どちらにせよ、自業自得だと思うけどね。



「意味? それは、自分たちが一番良く分かってるじゃないの? ……主であるゲンブに、現在進行形で毒を盛り続けてる貴方たちが、眷族なんて、さすがにそこまで、面の皮は厚くないよね。それとも、うっすらと気付きながらも、信じたくなかったとか? それとも、まだ自分たちの()()()()()()()()から、自分たちは正しいと信じているのかな? それに、すがってるの?」



 辛辣な言葉を投げ掛ける。



「…………何を言ってる?」



 ついに、敬語もなくなったよ。さっきまでの勢いはどこにいったの? 余程、動揺しているのか、余裕がないのか。顔色が段々悪くなっていく。その表情を見て、私は確信する。



 やっぱり……思ってた通り、貴方たちは気付いてたんだと。気付きながら、放置し続けてきたのか。



 だとしたら、その罪は非常に重い。



「だって、そうでしょ。シュリナ、ヒスイ」



 私は敢えて、シュリナとヒスイにバトンタッチした。さっきから、言いたそうにしてたもんね。まぁ、私が言うより信憑性があるし。ダメージはきつい。でも、手短くね。

 それに、眷族を名乗る彼らに止めをさせれる。



 勿論、シュリナもヒスイも、その辺は理解出来ている筈。だから、ニヤリと二頭の竜は笑ったのだ。



「偽巫女長を擁立し、ゲンブに仇なしたのは、お前たちだろう」



 まず始めに、シュリナが口を開いた。



「何を仰られます!! 巫女長様が体調を崩され、役目を果たせないために、急遽、主の言葉を聞ける者が代理を務めたまでの事。主の恩ためにし「そもそも、それが間違いだろ」」



 ヒスイが遮る。感情のこもらない声が、却ってヒスイの怒りの深さを思い知る。



「元々、我ら五聖獣が生まれ変わった時点で、新しい巫女長が誕生する。分かるか。巫女長は我と繋がった存在。我らがどうこうしない限り、巫女長は体調を崩す事はない。絶対にな」


「…………どういう意味です?」



(マジで知らなかったのか……)

 


「意味? おかしな事を言うのね。ヒスイが言った通りじゃない。……この大陸の守り神である聖獣ゲンブの選定を一介の眷族が覆し、それを貴方たちは、いや、この大陸に住む鬼人たちは承認した。結果、ゲンブはこの大陸の加護を放棄。この大陸は魔物が闊歩し荒れ果てた。魔物は鬼人を喰らい、大地は血に染まり、聖獣ゲンブはその身に穢れという〈呪い〉を受ける事になった。そしてその呪いは、勿論聖獣ゲンブと繋がっている巫女長にも影響する。……ここまで言って、まだ分からない?」



 小刻みに震えている。やっと自分たちが仕出かした罪の重さを理解出来たらしい。理解出来たからといって、その罪が消える事はないし、今更遅すぎるけどね。

 両膝を付き項垂れる男を、私は冷たい目で見下ろす。



 この時、私は罪を理解したと思っていた。

 それが間違いだったと、直ぐに気付いた。呪詛のように男は呟く。



「…………嘘だ……嘘だ。嘘だ。嘘だ。出鱈目を言うな!!!!」



 男は私に飛び掛かろうとしてきた。その目は最早、正気の目ではなかった。狂気をはらんだ目だ。私は真っ直ぐその目を受け止める。

 敢えて何もしなかった。

 する必要がなかったからだ。だって、男の手は私には届かないのだから。



 ドサッ。何かが地面に落ちる音がする。



「「護りてに何をする気だ?」」



 凍えるような低い声を発し、シュリナとヒスイは男を見下ろす。



 一瞬、男は自分の身に起きた事を理解出来なかった。



 だが直ぐに、焼け焦げるような激痛が男を襲う。断末魔のような悲鳴を上げ、男は地面にのたうち回る。

 同行していた男たちは為す術なく、その光景を見詰めるしかない。



「これ以上、ゲンブが血に染まるのは可哀想だから、止血だけはしてあげる。でも、傷は治さない。痛みを受け入れなさい。ゲンブと巫女長は、これ以上の痛みを今も味わっているのだから。……貴方たちを裁くのは私じゃないし、ここにいるシュリナやヒスイじゃない。……勘違いしているようだから教えてあげるけど、貴方たちに加護があるのは、貴方たちが正しいからでも眷族だからでもない。ヤーンの森が血に染まるのを防ぐため。〈呪い〉を受けた身で、聖域近くまで血に汚染されたくないでしょ。現に、貴方たちが選んだ偽巫女長は森にさえ入れない。気付くべきだったわね。それとも気付いてたけど、どうする事も出来なかった? どっちでもいいんだけど。まぁでも、早く気付いたとしても、ゲンブの選定に異を唱えた時点で、貴方たちの命運は決まってたでしょうね」



 絶望に変わっていく男の表情を見下ろしながら、私は淡々と言い放った。そして、容赦なく止めを刺す。



「そうそう。最後に言っとくけど、私は大切な仲間を苦しめる貴方たちを許しはしない。そんな貴方たちに、私の大切な仲間を委ねる事など出来ないでしょ」




 ……そう。既に眷族だった者たちの命運は決まっていたのだ。








 大変、お待たせしましたm(__)m

 本当にすみませんm(__)m


 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 出来る限り早く更新出来るように頑張ります!!


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

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