〈第三十四話 王都潜入〉
タイトル変更しましたm(__)m
魔物を蹴散らしてきた俺とシオンも、さすがに城門の検問には緊張していた。当事者であるリックとクロードは尚更だ。
しかし、拍子抜けする程、すんなりと王都内に入れた。
俺とシオンがハンターカードを見せただけだ。リックとクロードのフードを取って、顔を検めることもなかった。
形だけの検問だ。
王宮に続く、寂れた大通りを馬に乗ったまま進んでいると、
「…………もう、この国はおしまいだな」
シオンがポツリと呟く。とても小さな声だったが、全員の耳にははっきりと届いた。
俺は否定も肯定もしない。それが答えだ。当事者であるリックとクロードさえも、否定する言葉が見付からなかったようだ。
仕事が疎かになっていたから、そう思った訳じゃない。
俺もそうだが、おそらく全員の脳裏には、さっき城門を通した兵士の顔が浮かんでいた筈だ。
表情を無くした兵士の顔をーー。
終わりが見えない魔物の討伐。
不眠不休の中でのやり取りの日々。
そういった中で、疲れ果て、表情を無くすのはまだマシだと、ハンターを生業にしている俺は正直思った。
だけど、俺とシオンがゴールドのハンターカードを提示した時、そのカードを見ても、兵士たちの表情は変わらなかった。無表情で、濁った目で事務的に確認するだけ。
魔物討伐のプロが、それも最強クラスの者の来訪に、安堵や喜びの表情を一切見せなかった。最期まで無表情のまま淡々とこなす。
そしてそれは、一人だけじゃなかった。
直接、検問に関わっていた兵士とは別に、組んでいたもう一人の兵士も同様だった。
その様子に、俺とシオンは不審を抱き、何らかの魔法が掛けられている可能性を感じて、兵士の【ステータス】を覗いてみた。リックとクロードもだ。何らかの呪いが掛けられていた場合、【ステータス】にその事が記載されるからだ。
だが、兵士の【ステータス】画面は全く綺麗なものだった。ただ……異様に、HPとMPが低かったが。数値から見て、立っているのもやっとの状態の筈。
なのに、彼らは動いている。
その動きはキビキビしたものではないが。
その状態でも、苦痛を感じないで動けるのは、色々な箇所が麻痺してしまったからか。
どちらにせよ、王都の城門を護る兵士がこの状態では……
シオンが呟くのも尤もだった。
「…………これが、逃げ出した結果なんだな」
リックが吐き出す。その声はとても低く、重かった。
「だけど、逃げ出さなければ……」
どう慰めればいいのか分からなかったクロードは、何度も言ったセリフを繰り返すしかなかった。
逃げ出さなければ、死んだ筈だ。クロードが濁した言葉を理解しながらも、リックは首を横に振る。
「……これは、僕の罪だ」
「あぁ? 何、今更なこと言ってんだ?」
威嚇するように、シオンは言い放つ。
容赦ないその言葉に、リックは俯き、唇を強く噛み締める。クロードは思わず顔を上げるが、シオンは一瞥し黙らせる。
「全ての罪が、お前たちにあるとは、さすがに言わねーが。いいか、よく見とけ。この光景をな。これが、お前たちが選んだ未来だ」
シオンが言う、この光景ーー。
店など一軒も開いていない閑散とした街中で、道端に力なく座り込む鬼人たち。
魔物が出没する外には出ずに、王都に留まることを選んだ鬼人たちだ。
よく見れば、女子供、老人の姿が多い。戦う術を持たないが故に、王都に残ることにしたのだろう。
少なくとも、魔物討伐のプロじゃないが、戦える鬼人たちが大勢いる。生存確率から言えば、残る方が高いと判断したのだ。その時は、それが最良の判断だと、心から思った筈だ。
しかし、結果は……
座り込む鬼人たちは、俺たちを見て顔を上げるのも、腕を伸ばすことすらも苦痛な様子だ。
それでも、「あー」とか「うー」とか、言葉にならない声を発して必死で気を引こうとしている。
それを見て、俺とシオンは苦悶の表情を浮かべた。だけど、馬を停めることはしない。
しかし、リックとクロードは、今すぐ助けようと荷馬車を停めようとした。
だが、俺とシオンはそれを許さない。
「荷馬車を停めるな! 一人だけ助けてどうする? パニックが
起きるだけだろーが!」
「っ!! それでも!!」
シオンの容赦のない無慈悲なセリフに、リックは全身の血が沸騰した。リックはシオンにたてつく。
一時の感情で、我を忘れるのは愚の骨頂だ。こんな所で騒ぐのもな。
「もし、荷馬車を停めるのなら、ここで君たちを切り捨てる」
横から、俺は静かだが、威圧を込めた声で告げる。
「…………クロード。荷馬車を停めろ! 俺は同族を見捨てる事は出来ない」
リックは低い声でクロードに命じた。
二人ともシルバーだ。頭では、俺とシオンが言っている事は理解出来るだろう。俺とシオンが本気なのも分かっている筈だ。
それが、正しいこともーー。
それでも、この情景を見てしまうと、リックは感情が爆発しそうになった。心が悲鳴を上げる。助けなければ!! っと。その気持ちは、俺もシオンも理解出来る。
二人がどういう判断を下すか。
俺は事の成り行きを、冷静な目で見詰める。
荷馬車は泊まらない。
「クロード!!!!」
手綱を握るクロードに、リックは怒鳴り付ける。その腕を強く握った。
「……今の俺たちに何が出来る? 荷馬車を停めてからどうする? 今ここにある食糧で、飢えで苦しんでいる全員が賄えると思うか?」
「…………」
クロードの腕を掴む手が少し緩む。
前方を見据えたまま、クロードは言葉を続けた。
「……俺たちは、もう二度と道を間違ってはいけないんだ」と。
リックは掴んでいた手を放すと、力ない声で「…………そうだな」と呟く。
辛いとは、口が裂けても言えない。
だからといって、顔をそむけ、彼らから目を逸らすことは許されない。
なら、出来ることは一つだろう。
リックとクロードは顔を上げた。
荷馬車と二頭の馬は、王宮に向かって足を進める。
もう少し、王都編続きます("⌒∇⌒")
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




