〈第三十二話 魔方陣〉
地下に続く階段は簡単に見付かった。
見付けたのは、意外にシロタマだった。僅かな空気の流れを感じ取ったらしい。全体が目玉だからかな?
「ありがと」と言いながら、ソフトタッチで撫でる。サス君のようにガシガシと撫でたら、壊れそうな気がするからね。なんせ、目玉だから。
シロタマは「キュキュ~~~~(褒められた~~)」と嬉しそうに鳴きながら、体を擦り付けてくる。ほんと、可愛いなぁ~~。
地下に続く階段を見付けたのはいいけど、下が目視出来ない程暗い。
私はマジックバックからランタンを取り出し、灯りを付けた。灯りの原料は魔石だ。
「じゃ。準備も出来たし、行こうか」
サス君が一番前だ。そのすぐ側にはシロタマ。次に、ランタンを持った私が。その両隣にはシュリナとヒスイが陣とる。足下にはココ。私の後ろにゼロが、一番後ろをミレイが続く。
魔物の気配はしないけど、念のために、一番戦闘力が少ないゼロが真ん中だ。それに、罠が無いともいえないからね。
やっぱり、あったかいや。
階段を降りるにつれ、ほんわかと温かい空気に包まれる。
心配していた罠も何もなく、私たちは階段を降りて行く。二階分程降りた時だ。今度は回廊に出た。そのまま先を進む。数分歩くと、
「「もうすぐ、着くぞ」」
シュリナとヒスイの緊張した声が耳元でした。
「うん……」
シュリナたちの緊張が移ったのか、私の声も自然と固くなる。
進む毎に、魔力の濃度が濃くなる。
もうすぐ、魔方陣の所に着く。顔を上げれば、すぐ先に光が見える。
私たちは迷わずに足を踏み入れた。
その空間だけが明るかった。
五メートルぐらい先の石畳の床に、三メートル程の大きさの魔方陣が描かれている。微かだが、光っていた。
靄……霧……?
白い靄のようなものが見える。少し、キラキラと光っていた。
「見えるか、ムツキ。それが、この村の住人たちだ」
シュリナが教えてくれる。
ミレイとゼロ以外は見えているみたいだ。同じ場所を目で追ってたからね。
「どこにも行かなかったんだ」
「あいつらにも、意思はあるからな。この場所が気に入ってるんだろうな」
そうか……
ヒスイの言葉に納得しながら、つい手を伸ばしてみると、住人たちが近付いて来た。おそるおそる、私の指先に触れてくる。
受け入れてくれたのか、気に入ってくれたのか分かんないけど、住人たちは私の側を漂っている。
「上手く機能すればいいんだけど……」
そう呟きながら、私は魔方陣の縁にしゃがむと、魔方陣の端にソッと触れてみる。
すると、一瞬だが、強く輝いた。
確かに、間違いなく輝いた。
吃驚して、手を退けてしまう。途端に、元の状態に戻る。
「……もしかして、私の魔力を吸収してる?」
「うむ。魔力が足りなくて、上手く機能していないからな」
やっぱり、魔力を吸収してたか~。まぁ、いいんだけどね。多少吸収されたぐらいで、倒れたり、気分が悪くなったりしないから。
因みに、私の魔力は測定不能。∞だ。
「魔力を流したら、使えるようになる?」
私がそう訊くと、周囲を漂っていた住人たちのキラキラが強くなった。
「使えるようになるんだね」
そう言ってるような気がして、住人たちに尋ねてみる。すると、さっきよりもキラキラ度合いが増す。念のために、シュリナとヒスイに視線を移すと、コクリと二頭は頷く。
「だったら、やってみるしかないよね」
そうと決まれば早い。早速、もう一度魔方陣に触れてみる。皆は魔方陣を見詰めている。
魔方陣がポッと光り出した。
吃驚して手を離してしまった時は、そこまで心に余裕がなかったから気付かなかったが、触れた箇所が熱を持っている。
ポッと光り出した魔方陣は、徐々に輝きを増していく。と同時に、触れた箇所も熱を帯びてくる。
熱いと思いながらも、我慢出来ない程じゃない。我慢しながら、私は不思議な感覚に戸惑っていた。手先が熱いのに、時間が経つにつれ、体の芯が冷えてくるような感覚がしたからだ。
魔力が流れていくって、こういう事なんだと実感した。
怪我をした箇所から、血液が流れ出ていくような感覚に近いかな。
「無理するな」(シュリナ)
「ムツキ。一遍にしなくていたんだぞ。少し休むか」(ヒスイ)
「そうです! 少し休みましょう」(サス君)
「ムツキ。休憩しよう」(ココ)
「ムツキ様。一旦お止め下さい!」(ミレイ)
「ムツキ。皆の言う通りだ。一旦休もう」(ゼロ)
皆が、口々に休憩をとるように言ってくる。
別に、体調は悪くないんだけど……貧血も起こしてないし。そう思いながらも、私はどこか嬉しかった。
「まだ大丈夫。それで、どこまで回復したか分かる?」
「……今で、四割程度だ」
シュリナが厳しい顔をしながら答える。
まだ、四割程度か……。
五分近く流しているのに、それぐらいしか溜まっていない。
意外と、魔力を消するもんなんだ。
「当たり前だ。この魔方陣をこの場に刻み込み、定着させたのは、誰だと思っている!」
「この村の住人たちの魔力で、漸く維持していたんだぞ。維持だけでだぞ。いいか! 今、ムツキがしているのは、この場にもう一度、魔方陣を新たに描いている事と同じなんだ」
シュリナとヒスイが呆れ半分、怒り半分で声を荒げる。
そうなの?
「「だから、今すぐ休憩しろ!!」」
いや、まだ大丈夫だから。
一向に手を止めない私に、シュリナとヒスイの鉄拳が飛んできた。
「いたっ!!」
竜だから、勿論本気で殴ってる訳じゃないけど。本気で殴られたら死ぬからね。本人は、撫でてるつもりだと思うけど、マジで地味に痛いんです!!
酷いと思わない。
「「…………(思うか!!)」」
無言だけど、はっきりと聞こえてるんだからね!!
結局、他の皆にも嘆願されて、二回休憩を挟み、私は魔方陣を蘇らせることに成功した。
ーー向かうは、ヤーンの森!!
最期まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
次回は、王都に向かったギルマスたち目線になります。お楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




