表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
201/316

第一話 自分の身は自分で守って下さい



「…………何やってるんですか? ゼロ」


 思わず、敬語で訊いてしまったよ。


 予定通りにケイとシオンを、村まで荷馬車と一緒に送り届けて戻ってみたら、ゼロが手綱を握り、スタンバイして待っていた。私たちが使う予定の荷馬車に乗って。


 一緒にいたミレイは、私からスーと視線を外す。……反論出来なかったんだね、ミレイ。という事は……。


「ちょっと待って!! まさか、一緒に行く気? 冗談だよね」


 思わず突っ込んでしまったよ。


 だが、突っ込みを完無視して、王子様は平然と言ってくれた。爽やかな笑みを浮かべながら。


「おかえり、ムツキ。さぁ、出発しようか。必要な物は全部積み込んであるから」と。


(いやいや……)


「ゼロ、冗談きついよ」


 口元がヒクヒクと引きつる。


「冗談? 僕は至って本気だけど」


 平然とゼロは答えた。


「いやいや、そもそも、シルバークラスじゃないと黒の大陸に入れないじゃない。それに、すごく、危険だって分かってる!? Aランクの魔物も沢山いるんだよ!」


 勿論、反対したよ。


 レベルが高い魔物が多く出没する場所に赴くのだ。


 商業ギルドのギルマスとはいえ、ハンターとしてはシルバークラスの資格を持たないゼロにとって、黒の大陸は危険過ぎた。自殺行為と同じだ。


「ムツキやミレイのように、討伐には参加出来ないけど、自分の身を守れるぐらいは強いから、大丈夫だよ」


 荷馬車から降りたゼロは答える。


「そう言われても……」


 簡単に承諾は出来ない。


「ムツキ。君が、僕の身を心配して、言ってくれてるのは嬉しいよ。でも、こればかりは譲れないんだ」


 表情に比べて、その声はとても厳しいものだった。厳しい分、覚悟を決めてるように思えた。


「理由を訊いてもいい?」


「前に、僕の夢について話したよね?」


(夢……? 確か……)


「蘇生草のこと?」


「そう」


 ゼロは頷く。


 薬屋を営んでいるゼロにとって、蘇生草は幻の花。それはおそらく、ゼロだけじゃないだろう。


 蘇生草は、エリクサーを生成するのに使う材料だ。ゼロにとって、エリクサーの生成は究極の夢なのだろう。理解は出来るよ。理解出来るけど……今、夢の後押しは出来ない。


 ゼロには内緒だが、実は私のマジックバックに蘇生草を乾燥させたものと、私が生成したエリクサーが入ってる。ゼロには絶対に言えないよね。


 まぁ、それは一先ひとまず置いといて、現実的に考えて、ゼロが言っていることには矛盾があった。


「でも、咲くのは初夏でしょ。それに、豊かな大地と清水がある場所でないと繁殖しなかったんじゃなかった? 初夏と同じぐらいの気温だったとしても、呪われた大地に、神聖な蘇生草が生えてるとは思えないんだけど」


「確かに、可能性は低い。限りなくゼロに近いと思う。でも、それは絶対じゃない」


 真剣な目をしてゼロは答える。


「今じゃなくても、いいんじゃない?」と言い掛けたが、そのセリフを飲み込む。ゼロを見ていたら言えなかった。


 ゼロはとても親切だ。頭もとてもいい。カリスマもある。容姿を別にしても、とても良い人だと思う。だけど、いつも一線を置いて他者と接している印象を受けていた。それは同時に、自分を見せない事と同じ事だ。そんなゼロが、初めて自分を表に出している。そんな気がした。


 確かに、ゼロの言う通りだと思う。


 絶対に生えてないとは言い切れない。だけど……命が関わっている。簡単に、無責任に許可を出すわけにはいかない。許可を出すって事は、命を背負う覚悟がいる。


「……自分の夢のために命を掛けるの?」


「愚かだって思う?」


 苦笑しながらゼロは尋ねる。


 私は首を横に振る。


 夢を持つことが出来るってことは、凄く幸せなことだ。どんな無謀な夢でも。


「ううん。思わないよ。思えるわけない。反対に、羨ましいよ。…………ゼロ。本当にいいんだね。すごく、危険だよ。Aランクの魔物も多く出没するんだよ。はっきり言って、ゼロを護ることに重点をおけない。それでもいいんだね?」


「ああ。構わない。覚悟のうえだ」


 真剣な表情で答えるゼロ。その表情には、一片の曇りもなかった。


「……分かった。ドーンの森とは違うことだけは、覚えといて」


 私は真っ直ぐゼロの顔を見詰める。深い溜め息を吐いてから了承した。了承した途端、満面な笑みを浮かべ、私に抱き付こうとするゼロを避けると、荷馬車に飛び乗った。


 続けて皆が荷馬車に乗り込む。ゼロは手綱を握った。


 荷馬車がゆっくりと動き出す。


 国境に差し掛かり、ギルドの係員と兵士たちにハンターカードを見せてから、国境を通過する。


 やっぱり思った通り、彼らはゼロの同行に難色を示したが、ゴールドである私が賛成したことと、本人の強い希望で、なんとか通過することが出来た。ほぼ無理矢理押し切ったんだけどね。取り合えず、ひと安心。


 私はマジックバックから、余分に作っていた御守りを一つ取り出すとゼロに渡した。


「私が作った御守り。魔力を込めているから、身を護ってくれる筈」


 仲間になったのなら、渡しておかなくちゃね。


 取り合えず、向かうのは西の中継地点。


(機能してればいいんだけど……)






 大変、お待たせしましたm(__)m

 本当にすみませんm(__)m


 やっと、出発しました。長かった~~(^o^;)


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ