〈第二十話 魔物に支配された村(6)〉
「それで、どうするつもりだ?」
シュリナが代表で訊いてきた。
皆、私を見ている。邪眼玉も(潤ませながら)。
仲間の私を見る目が、なんか残念な子を見ているような気がするのは、私だけかな。
文句を言いたくなるが、考えなしにポーションを与えたのは事実。はい、すみません。私が悪かったです。何も言えません。でも、これだけは言わなければ、
「いや、いや、無理だから!!」
ちゃんと拒否しました。顔の前で右手を左右に振る、ジェスチャーを付けてまで。ここまで拒否すれば、邪眼玉にも伝わるだろう。
邪眼玉はシュンと肩を落とす。目玉だけど。肩もないけど。ポロポロと涙を溢す。
涙……魔物に?
皆の視線が痛い。私も罪悪感で、心がズキリと痛む。でも、邪眼玉を仲間に加えることは出来ない。これ以上はちょっと無理です。
私の意思が固いことを知って、邪眼玉は小さく「キュ~~ン」と鳴くと、姿を消した。
後味の悪さだけが残る。
「……これからは、考えずに行動するな。分かったか」(ヒスイ)
「ムツキさん。これから、気を付けたらいいんですよ」(サス君)
「優しさが、相手を傷付けることもあるんだよ」(ココ)
「……少しは懲りたか。馬鹿者が」(シュリナ)
容赦なく、グサグサと突き刺す。皆の言う通りだ。
私はあの邪眼玉に酷いことをした。何気ない行動が、邪眼玉を傷付けた。魔物だけど、泣かした。魔物でも感情があることを、私は忘れていた。ちょっと、引きずるかな。
消える前の寂しそうな姿が脳裏を過る。「ごめん」と、私は心の中で邪眼玉に謝った。
そんなことがあったからって、手を休めるわけにはいかない。黙々と襲ってくる魔物を倒しながら、塀を簡単だが修理していく。
二時間程で、私の割り振られた箇所は終わった。
村の中央部に戻る。そこには、既に作業を終わらせていた、ケイとシオンが退屈そうに待っていた。
「遅かったな!!」
「意外と時間が掛かりましたね」
シオンとケイが声を掛けてきた。
「ごめん。待ちました? 塀の修理もしてたから、遅くなりました」
「塀の修理ですか?」
ケイが不思議そうに尋ねてくる。
「っていっても、土魔法で塞いだだけの簡単なものだけど。折角、魔物を一掃したのに、侵入されるのは嫌だしね。やった所は、自分の持ち場だけだから、あんまり意味ないかもしれないけど。しないよりは、ましかなって思って」
「「…………」」
シオンとケイは驚いた顔を見せた後、ニヤリと笑った。
何か嫌な予感がして、私は思わず一歩下がる。
「ムツキ。壁とか作れますか?」
警戒する私に、ケイは尋ねてきた。
「壁ですか?」
「そう、壁。出来れば、二メートルぐらいの高さの壁が欲しいかな(閉じ込めるのに)」
「出来ますよ」
素直に答えると、ケイは嬉しそうにシオンに話し掛ける。
「これで、一気に対処出来ますね。シオン」と。シオンは「ああ。ラッキーだったな」と答えた。
何に!?
「意外と、あいつらの対処は骨が折れるんだ」
だから、何に!?
「「それじゃ、行こうか?」」
ケイとシオンがにっこりと笑いながらハモる。
何処に!? 怖いんですけど。
身の危険を感じた私は、無意識に三歩後ろに下がる。
しかし、さすがゴールドクラス。獲物を逃がすつもりはないみたいだ。至近距離で挟まれるように立たれて、私は逃げ場を失う。
「…………私に拒否権はありますか?」
一応、訊いてみる。
「あると思う?」
「あるわけねーだろ」
そうですね。ないですね。はい、分かりました。
「で、何処に行くんですか?」
「教会だ」
教会?
「この村の地下通路に閉じ込められてるのを、解放するんだよ。その地下通路の入口が教会にあるわけ。……それで、ムツキ、何が閉じ込められてるか知りたい?」
ケイがにこやかに訊いてくる。シオンもニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべて、私を見ている。
私は勿論、首を横に振った。
当たり前じゃない! 聞きたくないし、知りたくない。何が閉じ込められてるかなんて、絶対に!!
「そう? でも、後より今知った方がダメージ少なくない?」
この時、私は思った。
ケイさんとシオンさんは絶対ドSだと。
「「臭い!!!!」」
ヒスイとシュリナが鼻を押さえて、上空に逃げる。サス君もココも鼻を押さえてむせていた。
確かに臭い。人間でも顔をしかめる臭さだ。皆には辛いよね。乳製品の腐った匂いをこのまま嗅いでると、私でも吐き気がしてくる。
教会の外からでもこんなに臭うのに、中に入って囮になって誘導している、シオンとケイには脱帽ものだよ。
「サス君、結界張ったら。少し臭いがマシになるかも」
何気に言ったことだが、正解だったみたいだ。臭いが大分マシになった。サス君とココがゼイゼイと荒い息を整えながら、伸びている。
戦う前からこれ?
苦笑しながらも、ココを抱き上げ、サス君の背中を撫でる。
言われる通りに、私は二メートル程の土壁を、教会の出入口を取り囲むように張り巡らせた。
歩く死体。
ゾンビは頭が弱い。脳が腐っているからなのかは知らないけどね。だから、動作も鈍い。だけど、強い。打たれ強いのだ。普通の剣で心臓を突いても、足や腕を切断しても迫ってくる。映画のように、噛まれたらゾンビになったりはしないけど。それでも、かなりの手強さだ。
弱点は、火と頭を潰すこと。
首を切り落としても、頭を潰さない限り体は動き続ける。
広い場所でないと不利なのだ。なんせ、下手に切断したら、その部位が迫ってくるからね。という訳で、適度に広い場所、そして、逃げられない場所が戦いに最も最適な場所というわけだ。
私が土魔法を使えたって知った時、ケイとシオンは同時にその作戦を思い付いたらしい。
「間もなく来ます!」
復活したサス君が、低い声で告げる。結界の効力を上げたようだ。
私は教会から離れると、土壁を背に立つ。出入口から、まずケイが飛び出した。その次に、シオンが飛び出す。
「赤竜様と緑竜様は?」
私の横に移動したケイが訊いてきた。私は上空を指差す。
「臭いから逃げた」
「ハッハッ。確かに臭いからね」
ケイとシオンは苦笑する。
そんな話をしている間も、教会の出入口からわらわらと、歩く死体が悪臭を放ちながら出て来た。
お待たせしましたm(__)m
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




