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〈第十八話 魔物に支配された村(4)〉



 バレーボールぐらいの大きさの目玉のお化けは、ジワジワと近付いて来る。



 どこに口があるか分からないが、「キュー、キュー」と鳴いている。鳴いているでいいんだよね。

 マジ、キモッ!



「ムツキ、距離をとって!!」



 ココが声を発したと同時に、目玉の魔物の目から光線が発射された。



「ウギャ!!」

 


 変な悲鳴が漏れる。間一髪で避けれた。地面に焦げた黒色の線が走る。シュリナたちも、無事避けたみたいだ。怪我が無さそうでよかった。



『『大丈夫ですか!? 主様!!』』

「ありがとう。セッカ、ナナ」



 セッカとナナのフォローのおかげで、間一髪避けれたけど、これは……いつもと逆のパターンだね。

 私は皆と離された。サス君が近付こうとすると、別の光線が行く手を阻む。どうやら、目玉の魔物の狙いは私のようだ。

 意外に頭がいい。連携プレーが出来るタイプの魔物。



「……厄介だね」



 口ではそう言いながら、私は魔物の【ステータス】を確認することに意識を集中させる。体はセッカとナナに任せているから出来ることだ。




 ーー邪眼玉ジャガンダマ

 C級ランク。

 HP 150 / MP 85

 物理、魔法攻撃、どちらも有効。




 一個体の力は低い。プラスも付いていない。でも、この魔物は団体で攻めてくる。連携をとれる頭脳もある。それが、この魔物の最大の武器だ。



 レベルのわりには、倒すのに苦労するタイプの魔物みたい。



『物理、魔法攻撃、どちらも有効。ただ、団体で攻めてくる。結構、めんどくさいタイプの魔物だね。連携もとれてるし』



 皆に情報を流す。こういう時、ほんと念話は助かる。



 その間も、邪眼玉は光線を放つ。目が段々赤くなってきている。どうやら、放つ度に赤くなっていくようだ。充血? 疲れ目? まぁ、当たんないけど。

 さすが、セッカとナナだね。避けながら、徐々に距離をとっている。

 サス君たちも、私の動きに合わせて距離をとりつつ、攻撃を繰り出す。攻撃をしているのはサス君だ。得意な雷魔法で、次々と邪眼玉を地面に叩き付けている。

 こんなに密集してたら、コントロールの必要ないよね。

 結構、数が減ってきた。っていうか、こんなに居たっけ? どこから湧いてきた?



「……もしかして、分裂してる?」



 ふと、疑問が頭を過る。



『それはないよ。ほら、最初、鳴いてたでしょ。あれ、仲間を呼んでたんだよ』



 確かに、「キュー、キュー」と鳴いていた。



『そういうことは、もう少し早く言ってよ、ココ』



 ココに文句を言っている間も、邪眼玉の一匹が「キュー、キュー」と鳴き出した。一匹鳴き出したら、他の邪眼玉も鳴き出す。そして、徐々に数を増やしていく、邪眼玉。



 一体、どこに隠れてたの?

 あっという間に、元の数以上の邪眼玉が集まる。それこそ、すし詰め状態だ。

 


 それを見た、私の精神HPがどんどん削られていく。

 バレーボール程の目玉がギュウギュウと身を寄せてる状態を想像してみて。それは、かなり精神的にダメージを与えるに違いないから。



 倒す方法は、一気に仕留めるのが最適だね。

 さて、どうしようかな……



『ムツキ。俺の力を使ってみろ!』



 ヒスイの力を? あっ、そうか!! 【緑魔法】を使えばいいんだ!!

 ヒスイが何を言いたいか、すぐに理解出来た。

 ずっと練習してきたから出来る筈。私は自分に言い聞かせると、頭の中で【フライ】を唱えた。



 私の体がフワリと宙に浮く。

 十メートル程の高さまで上がる。無数の目玉が一斉に私を見上げる。

 当然、私の精神HPは一気に削られた。黄色で表示される程に。

 マジ、気持ち悪いよ~~。怖いよ~~。別の意味で泣きそうになったが、何とか堪える。



 そんな私めがけて、邪眼玉は一斉に光線を放った。



「「「「ムツキ!!」」」」

 皆が私の名前を叫ぶ。



 瞬時に、私は【魔法障壁】を張った。見えない壁が私を護る。

 煙が私の周囲を覆い、私の姿を隠す。だが、風が吹き、煙がはれた。私が無傷で笑うのを見て、邪眼玉はビクッと身を疎ませる。中には、逃げ出すものもいた。



「……今度は、私の番だね」

 そう言うと、私は邪眼玉に向かって右手を伸ばした。



 赤い魔方陣が浮かび上がる。

 まだ、全体魔法が使えるまでレベルアップしてないけど、こんなに密集してたら大丈夫だよね。

 いつもより多めに魔力を右手に流し込む。魔法陣の大きさが、それに合わせて大きくなる。



 邪眼玉は一気に逃げ出そうとしたが、すし詰め状態なので逃げ出せない。それでも逃げようとしたから、下敷きになって潰されてるのもいた。

 それを上空から見ていた私は、流していた魔力を止めると、地面に降りた。



「今回は見逃してあげる。但し、人を襲ったら、今度は容赦しない」



 私のセリフに、一斉にコクコクと邪眼玉は頷く。そして、姿を消した。



 地面に魔石が転がっている。

 その中で、一匹、潰されて動けない邪眼玉がいた。他の邪眼玉に比べて一回り小さい。



 子供かな?

 表面がツルツルしてて、直接触るのはちょっと戸惑う。しゃがみ込んで観察する。

 正直、魔物にポーションはどうかと思う。それでも私は、マジックバックからポーションを取り出し、数滴掛けてやることにした。

 すると、すぐに動けるようになった邪眼玉は、慌ててその場から逃げ出した。



 合流した皆は、私がした行動について何も言わない。



 ケイとシオンに知られたら怒られるだろう。呆れられるに違いない。それでも、打てなかった。

 自分でも、非情になり切れないこの甘さ加減に、私は苛立ちを感じていた。





 お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ

 

 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m

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