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〈第五話 戦闘狂〉



 さすがに、広間での立ち会いは駄目なので、場所を騎士たちの訓練所に移した。

 いつしか、ギャラリーが増えている。



「初めて会った時から、お前のことが忘れられなかったぜ。漆黒の英雄」



 セリフだけ聞くと、熱烈な告白をされてるようだ。いや、違う意味で告白されているのか。

 変態のセリフに外野がざわつく。



「私も、初めて会った人から、あんな激しいアプローチをされるとは思いませんでしたよ。戦闘狂の変態」



 まさか、いきなり殺され掛けるとは思ってもいませんでしたよ。マジで。

 返答した私のセリフに、一層、外野のざわつく声が大きくなる。



「それだけ、俺の思いが深いってことだ(今から、しっかりと受け取って貰うぜ)」

「そういう愛情の押し売りは、ほんと迷惑なんで、今回限りで遠慮して欲しいんですけど」



 心底、うんざりそうに答える。

 だが戦闘狂は、「照れるなよ」と言いニヤッと笑う。



「はぁ~~。照れてませんけど」

 断固否定する。



「素直じゃねーな!」



 セリフと同時に、戦闘狂の周りをマトっていた空気が一変する。



 来るーー。

 感覚的にそう感じた。



 そう感じた瞬間、戦闘狂の持つ大斧が振り下ろされようとしていた。

 早い!! 一瞬で間合いに入って来た。私は紙一重で避けると、距離をとる。



「……クックック……さすがだな。これを避けるとはな」

 心底嬉しそうに、戦闘狂は呟く。



 私がついさっきまでいた場所の地面が、ぽっかりと穴が開いていた。衝撃でだ。彼の大斧は地面に振れていない。

 ミノタオロス並みだね……力を抜くとられる。



『セッカ!! ナナ!! 私も本気で行くよ!!』

『『はい!!!!』』



 再び、目の前に迫る大斧。

 今度は避けない。体を屈め、反対に戦闘狂の懐に飛び込む。ナナに魔力を流し、衝撃波を繰り出す。初めて会った時に、戦闘狂が私に放った技だ。さすがに、斬るわけにはいかないからね。



 戦闘狂の鳩尾に叩き込む。彼の体が、五メートル程吹っ飛んだ。が、膝を付くこともなく、呻き声を上げることもない。

 チッ!! ノーダメージか。さすがに、これくらいで倒せるとは思わないけどさ。



 ざわついていた外野が、いつしかシーンと静まり返っていた。



「…………クックック……ハッハッハ……」



 何が可笑しいのか、戦闘狂は突然体を震わせ笑い出す。

 怖っ!!



「楽しいぜ!! まさか、俺の技で反撃してこようとはな。予想以上だぜ!! ほら、もっと愛し合おうぜ!!」

「それが、迷惑って言ってるじゃないですか!!」



 同時に振り下ろされる大斧。紙一重で避けては、容赦なく打ち込んでくる。大斧なのに、まるで剣のように、軽やかに繰り出される連続攻撃。

 私はそれを双刀で受け流しながら、隙を探す。


 

 セッカとナナに魔法強化してて良かった。してなかったら、絶対、刃が折れてるだろう。物理攻撃対応の防壁を張っているとはいえ。








「……どんな修行の仕方で、あれだけ急激に伸びるんだ?」

 ケイは呆然と呟く。



 ムツキは、ハンターになって僅か三か月というスピードで、ゴールドカードに昇格した。

 それは、今まであり得なかった事態だった。ましてや、あの容姿だ。故に、ハンターの間(特にブロンズ内)から不正じゃないかって、声が上がった。ジェイと仲が良い事が噂に拍車を掛けた。

 その噂を払拭するいい機会だから、今回の立ち会いを許可したのだがーー。



 自分が知っているムツキは、魔法攻撃が特化していて、物理攻撃はおまけ程度しかなかったはずだ。

 確かに霊刀を所有しているから、おまけ程度でも、それなりの実力はあったが……。今は、物理攻撃に特化した、〈豪腕の破壊王シオン〉と打ち合っている。多少は力を抜いてるが。それにしても……



 一か月ちょっとで何が起きた?



「簡単なことだ。魔力を潤滑に手足の先まで流す事が出来ただけだ」

 ケイの横で観戦していたシュリナが答える。



「どういうことです?」

「全身に魔力を流すことで、肉体強化と同時に、身体能力も上がっている。霊刀とシンクロする事で、更に身体能力は強化されているのだ」

「だから、シオンの攻撃に耐えれると?」



 ケイは隣にいるシュリナに尋ねる。



「まぁな。それに今あいつは、大斧と霊刀の間に物理防御壁を張っている上に、霊刀自身にも魔力を流し強化してるしな。必要な場所に魔力を流し、強化する。スムーズにな。だから、あいつと打ち合えるんだ」



 シュリナの代わりに、ヒスイが答えた。

 ケイは言葉を失う。頭では、スザク様やビャッコ様が言ったセリフは理解出来る。出来るが、それを実践出来る人間など……



「ムツキだから出来る戦い方だよ」

「ムツキさん以外に、出来る方はいないだろうな」



 ココとサス君が締め括った。

 ケイは「確かに……」と小さく呟き、頷いた。





 目の前では、もうすぐ決着付きそうだった。



 


 最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m


 次回の更新は、12月23日(土)午前0時の予定です(゜∇^d)!!


 明日からは、「英雄と呼ばれた最強魔法使い、後に彼は魔王と呼ばれることになる」を更新予定ですm(__)m

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