〈第四話 やっぱり豪華でした〉
さすが、王族の特権だ。
何時間も並ぶことなく、すんなりと王都に入ることが出来た。
いいのかなぁ~~。少し気が引けるが、ここは素直に甘えておこう。お昼ご飯抜きたくないし、抜いたら五月蝿いしね。並んでいる人の視線が突き刺さるけど。
王族としての執務が忙しい中、迎えに来てくれたロイとミカは少し不機嫌そうだった。私に引っ付くことが出来なかったからだ。私の両側は、シュリナとヒスイ、足下にはサス君がいるからね。ココはミレイの腕の中で大人しくしている。
そんなロイとミカに案内されながら、王都内を進んで行く。
王宮には来たことがあるが、それ以外は初めてだ。まず、人の多さに驚いた。当然だけど、ハンターと商人の姿が目立つ。王都に入る人は人族が多い。
だけど、通路を抜け、広場に出た私の目を釘付けにしたのは、行き交う獣人の数と姿だった。ホルンにも獣人は多くいたが、朱の大陸の国境に一番近い町だからか、人間も多くいた。数は半々ぐらいかな。だけど、王都は。
熊!! 虎!! ウサギ!! 狼!! 色んな動物の獣人が闊歩している。
姿も様々だ。
耳と尻尾以外は人間と変わらない者。顔や体の一部が獣で、他は人間と変わらない者。全身が獣の姿をした者。っていっても、四足歩行ではなく二足歩行だ。体も大きい。
あ~~あの熊さんの胸に飛び込みたい!! フサフサしてるんだろうな。それとも、ゴワゴワしてるのかな? 確かめたいよ~~。
立ち止まり、目を輝かせる私に、皆は深く溜め息を付き、生温かい目で私を見詰めている。若干、二人を省いて。
そんな視線が注がれてることなど一切気付かずに、私は「まさに天国……」と呟く。そんな私に焦れたのか、
「「ムツキ! 行くよ!!」」
耳元で男女の艶のある声が、夢ね世界から無理矢理引き離す。同時に、ガシッと両腕をサイドから組まれると、私はズルズルとロイとミカに引き摺られて行く。
もうちょっと、この天国を味わっていたかったのに~~。無情にも、組まれた腕を放してくれない。そして、ポイッと停めてあった馬車に放り込まれた。
勿論、行き先は王宮だ。
大満足したよ。
やっぱり、王宮のお昼ご飯は豪華だった。
◇◆◇◆◇
約束の時間の三十分前、私たちは召集場所の広間の扉の前でロイとミカと別れた。
何故か機嫌のいい王宮騎士に、私は持って来た召集令状を見せる。
「お待ちしておりました、漆黒の英雄様。どうぞ、御入り下さい」
その二つ名で呼ぶのは、マジ、止めて欲しい。恥ずかしくて、どうにかなりそうだよ。っていうか、何で、王宮騎士にも私の二つ名が知れ渡ってるんだよ!! 誰!? 広めた奴!! 出て来い!!!!
王宮騎士が恭しく扉を開け、中に入ると、大声で恥ずかしい二つ名を連呼する変態がいた。
「漆黒の英雄、遅かったな!! あれから、また強くなったんだってな。さぁ、早速、殺ろうぜ!!!!」
ぶれないね~この戦闘狂の筋肉馬鹿は。
私とミレイがいる周囲の温度が、明らかに下がった。
「……ミレイ。貴女の元上司を伸してもいいかな?」
ミレイを見ずに尋ねる。
「どうぞ、どうぞ。私の汚点を消して頂けるのなら、喜びに勝るものはありません」
快くミレイは承諾する。
それじゃ、ミレイの許可もとったことだし、手合わせお願い出来ますか? 戦闘狂の変態、王都バーミリオンのギルマス様。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
御約束通り更新出来て良かったです。
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




