〈第二話 元が人故に彼らは侮った〉
ーー護りてになったのは、嘗ての仲間の五聖獣たちのためであって、貴方たちのためじゃない。
私は四大陸の王の前で、そう断言した。
沈黙が円卓の間を支配する。
これ以上、この場に自分がいる意味はない。私は踵を返し、王たちに背を向けた時だった。天王が沈黙を破った。
「ゲンブ様が望んでもか?」
怒りを無理矢理抑え込んた低い声で、天王は威圧的に言い放つ。まるで私を責めるように。
私のことはどうでもいい。何て思われても構わない。威圧的な態度で迫られても許そう。
そんなことよりも、ゲンブの名前を利用したことに私は憤る。
「……今、何て言いました? 私の聞き間違いかな。確か、ゲンブが望んでいると言いました? ……いつから、貴方はゲンブになったんです? それとも、自分はゲンブと同等の存在だと?
天王、ゲンブはそんなことを望まない。絶対に」
怒りが沸点を越えると、妙に冷静になる。私は静かに、感情がこもらない声で言い放った。
五聖獣たちは、私にそんなことを望みはしない。例え、自分の身が滅んでもーー。だから、勝手なことを言わないで!! だけど、私の思いを無視して叫ぶ。
「無礼な!! 聖獣様を呼び捨てにするなど!!!!」と。
心底、うんざりする。
感情的な声を出して睨み付ける配下の者たちにも、ここまで言っても納得しない天王にも。
これ以上、何を言っても通じない者たちの相手は、正直したくない。怒っても無駄だ。不愉快な気持ちだけが残る。
「……はぁ~~。何を言っても無駄のようね」
大きな溜め息を付いてから、呟く。
同時に、今まで黙っていたヒスイも、心底不愉快そうに眉間に皺を寄せ毒を吐いた。
「キリンは何で、こんな奴を天王に据えたんだ?」と。それに対して、シュリナが答える。
「なる者がいなかったからだろう」と。
ほんと、身も蓋もない。
「だったら、空位の方が、まだマシだったんじゃねーか」
「確かにそうだな」
「今からでも遅くねーだろ」
「我なら、即時にそうするな」
五聖獣の一角である、スザクとビャッコに完全否定された、白の大陸の二人。
私は呆然自失になった二人に視線を合わせることなく、無言のままその場を後にした。
「………………我々は間違っていない」
消え入りそうな声で天王は呟く。円卓に肘を付き、頭を両手で抱え、何度も同じセリフを繰り返している。いつも、威風堂々としていた天王の姿は、もはやそこにはなかった。
止めを刺したのは、スザク様とビャッコ様だ。
五聖獣の二角が、天王を切り捨てた。
五聖獣は意思を共有することが出来ると聞いたことがある。だとするなら、当然、この事はキリン様に伝わっているだろう。
それが何を意味するのかーー。
この場にいる全員が理解していた。
だが、当の本人たちは、何故そう言われたのか全く分かっていない。故に、今尚、そのセリフが出るのだ。
「……天王、何故立たなかった?」
獣王が静かな声で天王に話し掛けた。
「……どういう意味だ?」
焦点の合わぬ目で、天王は獣王を見詰める。
「護りて様が着席しないと言われた時、天王以外の王は全員立ち上がった。何故、貴公は立ち上がらなかった?」
「…………」
「忘れたのか? 我々は、先代の護りて様から、この大地を託されたに過ぎないことをーー」
「…………」
天王は無言のまま、獣王から視線を外さない。
「五聖獣様たちが何故眠っていたのか、その理由も王なら勿論知っているだろう。先代の護りて、アキラ=カシキ様の転生体を待っていたことをな。護りて様も言っていたではないか、嘗ての仲間のために護りてを引き受けたと。
まだ分からぬか?
先代の護りて様の転生体が、今の護りて様だ。
つまり、この場において、最上位は護りて様だった。五聖獣様でも、ましてや王である我々でもない。
最上位の御方が立っているのに、我々が着席出来る訳ないだろう。だから、天王、貴公以外の王は皆立っていたのだ」
「五聖獣様より上とは!! 何を仰っているのです!? 獣王様」
異議を唱えたのは、後ろに控えていた、天王の配下の者だった。感情を剥き出しにしたその姿に、天王以外の者は眉をしかめ不快感を表す。殺気を放つ者もいた。
「護りて様は亜神。神獣シンラ様の化身と言われている。聖獣である五聖獣様よりも、当然、上ではないか?」
「神獣!? 亜神!? 元は人でしょ!!」
そう吐き捨てる。
「人か……。確かに、元は人なのかもしれない。でも、今は亜神。神族に属する御方だ。天王も、お前も内心そう思って侮っていたから、そんな態度がとれたんだな」
獣王の代わりに答えたのは、勇王だった。
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
本文に登場する、アキラ=カシキの物語を「英雄と呼ばれた最強魔法使い、後に彼は魔王と呼ばれることになる」にて、連載中です("⌒∇⌒")
こちらも宜しく(゜∇^d)!!
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




