第五話 訓練開始
全文書き直しましたm(__)m
(これって、一応奇襲になるのかな……)
意図せずに放った炎魔法で、四頭(魔石の数)のゴブリンを倒し、2レベルアップしてレベル5になった。ここまで順調だ。でも、素直に喜べない。
だって……隣に居たのが魔物だったからよかったものの、代わりに居たのがハンターだったらと考えると、心底ゾッとする。
正直、魔法を使うのが怖くなった。だからといって、魔法を封印するわけにはいかない。二度と同じ事が起きないように注意しないと。そう心に誓う。フェイの事はすっかり頭の隅に追いやっていた。
「……そんなに魔力流してなかったんだけどな」
流した量はほんの少し。それで、あの威力ーー。
「まず、ムツキが最優先でやらなければならない事は、どれぐらいの魔力で、どれだけの威力を発揮するのかを正確に把握する事だね」
ココの意見に同意件だ。
「少し練習してみますか?」
だね。空き地に居るのは私たちだけ。練習するにはもってこいた。でもその前に、
「浄化」
そう詠唱すると、温かい光が私を包み込んだ。直ぐにその光は消える。
「さっぱりした~~~~」
お風呂に入った後のようなさっぱり感はないが、全身が綺麗になった感は十分あった。
髪もサラサラしてるし、汚れた手も綺麗になってる。勿論、二日着ている服も洗濯したように綺麗になっていた。
一番驚いたのが、歯がザラついてない事だ。浄化魔法って、歯垢まで落とすんだね。ジュンさんが絶対覚えないといけない魔法って言った意味が、よく理解出来たよ。
「綺麗になったところで、練習始めるよ。その前に、一度カードで魔力の確認してみて」
「分かった」
懐から出して確認してみる。
【魔力 798】
【初級炎魔法 3/100】
【初級浄化魔法 2/100】
一回しか炎魔法を使ってないのに、値は3になっていた。レベルアップしたばかりだから、魔力も十分残っている。
「798あるから、何度でも練習出来るよ」
「じゃ、早速やってみる?」
ココが完全に魔法の先生になっていた。
サス君は私の隣で休憩中だ。口を挟まない。こういう所、サス君とココはきっちりと役割分担している。お互い信頼し合ってるからこそだと思う。後で、ココにもサス君にも浄化魔法掛けてあげるね。
「うん。最初は炎魔法からやってみるね」
リベンジだ。時間が少し掛かってもいい。魔力の量を調整する。ハンター試験の時よりも少なく。ほんの少しの量を流す。ココとサス君には、魔力の流れが見えているようだ。
「掌を前に」
言われた通り腕を伸ばし掌を前に向ける。そして小さな声で「ファイヤーボール」と詠唱した。さっきの塊よりはやや小さい。
「前方に狙いを定めて、弓を引くような感覚で、放つ!」
(う~ん。弓なんて引いた事がないしな……よく分かんないから、取り合えずボールを投げるような感覚でもいいかな? 取り合えずやってみよ。投げるのを想像して……)
「狙いを定めて……放つ(投げる)!!」
同時に反動が腕を伝い全身を襲う。見えない人間に押されたかのように、後ろによろける。もう少し強ければ、完全に尻餅をついていた。それぐらいの強さだった。魔方陣は消えている。
で、ファイヤーボールはどうなったかというと……。
ちゃんと、前方の壁に当たってました。直径1メートル程、黒焦げになってましたが……。
「……これって、(一応)成功だよね」
初級魔法の威力ってこれくらいなの?
「……成功だよ。……ムツキ、カードで魔力の確認してみて」
また? 確認してみると、【魔力 795】だった。訊かれたので、そのまま答える。
「たった3しか消費してないの!? 中級魔法のレベルの威力なのに!?」
(中級魔法?)
「でも、カードには初級魔法って書いてるよ」
「睦月さんにとっての初級魔法が、中級魔法のレベルなのでは?」
黙って練習を見ていたサス君が、然程驚きもせずに答える。
「あ~~確かに。ムツキの称号はアレだもんね……その可能性は大だよね」
称号って、【魔法使いの弟子】と【神獣森羅の化身】っていうアレの事?
「ここで開いてみようか?」
「それは駄目です。周囲に人影がないからといって、本当に居ないとはかぎりませんから」
色んな職業があって、その分色んなスキルがあるから、サス君が言うのも分かるけど。そもそも、私のステータスを盗み見る理由が分かんない。
「まさか。警戒し過ぎじゃ「ステータスを確認するのは、うみねこ亭に戻ってからだね」
真面目な口調でココに否定された。
大袈裟だなぁと思いながらも、この件はうみねこ亭に持ち越される事になった。
「(初級を中級レベルと考えて、それを実戦に使うとなると……)サスケ、壁際に移動して。ムツキは後十歩程後ろに下がる」
何を始める気? 不思議に思いながらも、サス君と私は言われた通り移動する。
「OK。それじゃ、実戦の予行練習を始めようか。ムツキ、サスケに向かって魔法を放って。サスケはそれを左右に避けながら、前に移動。出来る限り大きく揺さぶるように」
「了解」
「ちょっと待って!?」
(サス君を攻撃って!! 出来る訳ないじゃない!!)
「ムツキ。これは実戦の予行練習だよ。目の前にいるのはサスケじゃない。魔物だ。分かった? 本気で殺るまでするからね」
にっこり笑ったココの背後に、はっきりと黒い壁を見た。反論、出来るわけないでしょ。
にしても、やるって、するっていう意味じゃないよね。絶対。
それから小一時間、私はココに怒鳴られながら魔法を放ち続けた。
勿論、炎魔法だけじゃなく、五属性魔法全てを使ってサス君を攻撃したよ。しないと、容赦なくココの叱責が飛んでくるからね。
何度も繰り返し魔法を放って気付いたのは、魔法の威力よりも、魔法を発動するまでの時間の短縮、そして、魔法を狙ったところに放てるかの二点だ。重要なのは、やはり魔法を発動させる時間の短縮かな。
魔物は常に動いている。
生きてるからね。当然か。そしてその動きは、当然個々によって違う。
例えば、体がデカイものは狙える範囲が広い。だが、サス君のように魔物自体が素早く動いている場合は、魔法は不利だ。全体魔法なら兎も角、単体魔法なら特に。
その不利を打破するためには、その分量を打ち込めばいい。
簡単に言ったけど、それが結構難関。そこで重要なのが、時間の短縮ってわけ。
ココがいきなり実戦の予行練習をさせた意味が分かった。
何度もやっているうちに、少しずつだけどコツが掴めてくる。と同時に、自然と不必要なものは省かれていく。
一番に省いたのは声に出しての詠唱だ。一度、咄嗟に間に合わず声に出せなかった。それでも、魔法が放てた。それが可能だって分かれば、別に声にする必要はない。頭の中で唱えるだけだ。
次に挑戦したのが、両手打ち。
これはまだまだ練習が必要だ。基本左利きだけど、物を投げるのは右手だから、左のコントロールが甘くなる。それに、物事を同時に二つする訳だから、尚更コントロールが甘くなる。同じ方向の連打なら何とか打てるかな。すっごく、甘い判断で。でもこの時、足の方にも魔力を流してないと反動で転びそうになるから要注意。体力が付くと、足の方は何とかなるかな?
とはいえ、闇雲に打つのではなく、予測をたてないと。魔力の無駄遣いは駄目だからね。
或いは、自分自身が考える方向に誘導するとか。
どっちにせよ、咄嗟の判断力が問われるだろう。さっきみたいに、パニくってたら駄目だよね。判断力を養うって、経験でしか養えないと思うけど、経験がない以上、想像力と多少の無理で補うしかない。
必死で攻撃したけど、さすがサス君。全て避けられ、土魔法で作った壁は軽く飛び越えた。二メートルはあったけどね。
私はゼイゼイ息を切らして地面に両手両膝付いてるのに、サス君は全然平気そうで伸びをしている。息一つ切れてなかった。
まだやらないの? って、目が訴えてるのは、当然無視。サス君にとってこの練習は、ボール遊びの延長のようなものだったみたい。どんだけ、ハイスペックなんだよ!! どっと疲れました。最高霊獣とはいえ、狛犬。サス君はやっぱり犬でした。決して狼ではありません(笑)。
「ムツキ、魔力は?」
「…………462」
(3で計算したら、100発以上打ってるよね!! おい!!)
「まだ大丈夫だね。それじゃ、十分休んでから、魔物を探しに行くよ……あっ? 残念、休憩時間はとれそうでないみたい」
「はぁ!?」
顔を上げると、魔法を打ち込みすぎたせいで、前方の壁が壊れているのが見えた。
散乱する瓦礫の向こう側に、魔犬の姿。完全に魔力の殺る気だ。怖~~。殺気を放ちながら唸っている。
「サスケ、後方。ムツキ一人でやってみて」
(そうくると思ってたよ!!)
文句を言っても仕方ない。
「……ココ。これが終わったら、結界張って三十分の休憩。その間、サス君とココをモフる」
睨みながら、私はココに提案する。
「いいよ。(飴も大事だからね)」
にっこりと笑ってココは承諾する。
見た目猫のくせに、黒い笑みを浮かべたココを可愛いと思ってしまう自分に呆れながら、目の前の魔犬に意識を集中させた。
ーーいよいよ、実戦スタートです!!
最後まで読んで頂き、ありがとうございますm(__)m
暑い日が続きますが、体調には気を付けて下さいね。




