〈第五十話 今、やるべき事〉
セシリアが語った〈魔物狩り〉の件は、おそらく現実になると思う。
変態でも、ロイとミカは現翠の大陸の王の子供たちだ。
その側近の一人である、セシリアが語ったことに虚偽はないだろう。それに、セシリアさんは面白おかしく、そんなことを言う人じゃない。
それに、北に位置する黒の大陸は、夏と秋が短く、その分冬が長いそうだ。
ほんと、そういうところ、よく常世に似てる。
後四か月程で、黒の大陸は冬に入るって、ココたちが教えてくれた。
冬に入る前に、ある程度、魔物を狩っておきたいってことか。
それとも、僅かな秋の間、厳しい冬に備えるために凶暴になる魔物を危険視するからか。
たぶん、その両方だと思う。正しい判断だと思う。
ただ……正直言えば、ショックだった。
何がショックかって?
黒の大陸に住む鬼人たちが〈穢れた者〉として、他の大陸に逃げることが出来ないことだ。
でもその反面、何となくだが、納得する自分もいる。
聖獣の恩恵を受けるには条件があって、その条件を反した時は恩恵は消える。
それは当然だ。受けられなくなるのは。
その反動が、受けていた恩恵に比例して大きくなるのは分かるし、理解出来る。
昔話やお伽噺とかで、よく神様の怒りをかい、村を滅ぼされたとか聞くし……
でもそれは、私の中では物語だったから、現実に起きて、内心複雑だった。
といって、立ち止まるわけにはいかないし、今やるべきことをしないと。
召集されるまでの時間も限られている。
最優先に何をすべきかーー。
皆と相談する。で、決めた。
まず、第一に、全体魔法がスムーズに発動出来ること。
第二に、セッカとナナの魔剣化が解除出来たかの確認。
第三に、出来る限り、多くのポーションやエリクサーを作成すること。
最後に、一番大事なのが、物資の補強することだ。
皆の話を聞く限り、黒の大陸は荒れ果てているだろう。
なら、当然村も衰退し、途中で物資を補強することは難しいと思う。
ましてや、魔物が出没する場所での野宿も考えておかなければならない。転移魔法が出来るからって、それに頼ってしまうのも馬鹿げている。
色々考えて、最高クラスの簡易結界が必要だってことになった。
簡易結界は結界の術を施した魔石に、魔力を補充すれば完成だけど……
「一つ質問。簡易結界の強度は、魔力の量によって決まるの?」
「ある程度はね。結界の強度は魔石の数に比例するよ。ほら、洞窟のダンジョンのセーブポイントを想像してみてよ」
確かに、ココの言う通りだ。
無数に存在する星だと勘違いする程の魔石が、セーブポイントの天井を覆っていた。
「つまり、簡易結界を施した魔石が、かなり必要ってことね」
「そこは、魔石の質に関わります。純度が高く、レベルの高い魔物の魔石なら数を必要とはしませんし、魔力を補充出来る量も多く出来ます」
商業ギルドに在籍し、変態ギルマスの秘蔵っ子だったミレイが教えてくれた。
「なるほど。ランクの高い魔獣の魔石なら、強固な簡易結界が張れるってことね」
「はい」
絶対買っとかないといけない、リスト一位だ。
少々値がはっても手に入れないと。まぁ、お金はそこそこあるから、その点は大丈夫だけど。
「マジックバックを作れるレンなら、作れるんじゃない?」
確かに!! ココの言う通りだね。
さすが、頭がいい。いつも、必要なところに的確な意見をくれる。我がパーティーの頭脳担当だよ。
ドワーフなら、魔力にも精通してるし手先も器用だ。
最悪作れなかったとしても、ダンジョン内なら、実用的な物が割高だが売ってある。【鑑定】のスキルがあるから、ハズレを引くことはまずない。
段々、煮詰まってきたね。
「ミレイ。明日中に、必要な物資を書き出してくれる? 後、予算も」
「はい。畏まりました」
「明後日から、私たち〈洞窟のダンジョン〉に潜るから、ミレイは渡したお金で、物資の補強をお願い」
出来れば一緒に行動したいけど、時間がない以上、別行動で準備をすべきだと思う。
「分かりました。そのお役目、必ずやり遂げてみせます」
深々と頭を下げるミレイに、私は苦笑する。
そんな大袈裟なものじゃないんだけど……
大事な仕事だけどね。
命を掛けてやり遂げます的な雰囲気がするのは、私だけ?
まぁ、深く考えるのはここまでで、取り合えず、今から小瓶買いに行こうかな。
マジックバックに入る量がいまいち分かんないけど、作れるうちに多く作っとこ!
お待たせしました(〃⌒ー⌒〃)ゞ
第三章も佳境に突入!!
次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




