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〈第三十三話 集落〉

 


「獣王。貴方の子供たちは中々の強者つわものだよね」



 沈黙の中、口を開いたのは意外にもココだった。獣王の笑みが深くなる。



「そうそう。普通は出来ないよな、ココ。初対面の相手にいきなり抱きついて、匂いを嗅ぐなんて真似は」



(サス君、話し方が変わってるよ……)



「ましてや、監禁しようとするなんて、ありえないよね。サスケ」

「監禁までは……」

「屋敷から出さないようにするのは、ある意味監禁ではないか」

「まぁ……」



 シュリナの言葉を否定出来ない。



「未婚の女性に対し、あんな破廉恥な真似をするなんて許せません!! 例えそれが、獣人族だったとしてもです!」

 ミレイが私に代わって憤慨する。



「結局やり過ぎて、ムツキに変態双子って呼ばれてるんだから、まぁ、自業自得だよね」



 ココがそう言えば、



「事実、変態だろ」

「変態だな」

「変態ですね」



 シュリナたちとミレイは断言した。



 シュリナたちやミレイの容赦ないもの言いに、獣王は怒りもせず黙り込んだ。どこか嬉しそうな気がするのは、私だけ? 目が笑っている。口角も少し上がっていた。口では「迷惑を掛けてしまい、親として申し訳ない」と謝罪したが。



「「「「「…………」」」」」



 獣王の様子を見て、今度は私たちが黙り込む。



(もしかして、何かのスイッチを入れてしまったかも……)








◇◆◇◆◇







 森の中を雑談しながら、小一時間程歩いている。



「もうすぐ、〈森の民〉の集落だ」

 敬語を止めた獣王(私が頼んだ)が教えてくれた。



「獣王様。〈森の民〉って、獣人族とか、他の種族と交流があるんですか?」

「それはないな」

「全く?」

「ああ。全くだ」

「どんな民なんですか?」

「一言で言えば、プライドが飛び抜けて高い種族だ。自分たちの種族が、一番優れていると思っている」

「……プライドが高い種族ですか」



(五聖獣様の眷族なのだから、自分たちが特別だと思う気持ちは分かるけど……)



 そんな話を獣王としていると、何かが焼けたような、焦げた匂いがした。



 私の鼻は焦げた匂いだけだったけど、獣人族やシュリナたちは、それとは違う匂いを感じ取ったようだった。歩いていた速度が次第に早くなる。調査隊の二人が、一足先に、集落に向かって走りだした。



 ーーやっぱり、何かあったんだ!!



 最後は小走りだった。



 集落が近くなってきたのが分かる。それと同時に、焦げた匂いが強くなってきたからだ。でも今は、焦げた匂いだけじゃない。覚えたくない匂いが強くなってきた。ーー血の匂いだ。



 丸太で囲まれた集落の入口が見えてきた。



 いきなりだった。



 直ぐ前を走っていた獣王が、唐突に足を止める。そして私が、これ以上先へ進まないようにガードする。一足先に集落に向かっていた二人が、獣王の元に戻って来た。彼らは首を横に振る。その仕草だけで、ここで何かが起き、集落が壊滅したことを知った。私は獣王の逞しい腕に手を添える。



「手を下ろしてください。獣王様」



 静かな声に、獣王は目を見開く。促されるまま、獣王は腕を下ろした。私は前に足を踏みだす。その側には、シュリナたちがいる。



「ミレイはここにいて」

「私もついて行きます」



 私はミレイの顔を見てから、軽く頷く。



 一瞬、呆気にとられた獣王だが、これ以上止めることはなかった。



 ーーそこには確かに、嘗ては集落があった。



 でも今は、焼け焦げた家屋に、深く抉れた木々や家屋の柱や壁。

 そして、ハエがたかる死体。

 屋外なのに充満する血の匂いと焦げた肉の匂い。所々、腐敗臭もする。



 生者の気配が一切ない、まさに、死の集落だった。





 悪臭と、真っ赤に染まった地面を私越しに見たミレイが、木陰へと走って行く。調査隊の一人も。



 眉間にしわを深く刻み、厳しい表情をしたまま、私は目の前の状況をただ凝視していた。



「「ムツキ(さん)……」」



 サス君とココが私を見上げ、心配そうな声で名前を呼ぶ。シュリナは私の顔を見詰めている。



 私は集落の中心部に向かって歩きだした。





 

 やっと、プロローグに繋がりました(T▽T)

 本当に、長かったです……


 次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪


 

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