〈第三十一話 そういうキャラだった?〉
……今、何て言いました? シュリナさん。
「我が知るわけなかろう」
やっぱり、聞き間違いじゃなかったんですね……
私のショックを気にもとめず、さも当然のようにシュリナは言った。
そして、ミレイが淹れてくれたモモスの紅茶を、グピグピと美味しそうに飲んだ。
シュリナ以外全員、シュリナが遺跡までの道のりを、知っているとばかり思っていた。疑いもせずにね。なので当然、
「「「…………」」」
無言だ。
サス君たちとミレイは唖然としている。
その気持ち、ほんとよく分かるよ。
地図もなければ、情報もない。手探り状態で進むの? 磁石が利かない森の中を? そういうのを無謀って言うんだよ。
「ほんとに知らないの?」
信じたくなくて、再度尋ねる。
「そう言っているだろう」
シュリナは素っ気ない。
私たちの心配をよそに、平然と紅茶を飲み干し、ミレイにお代わりを貰うと、手作りスコーンをモグモグと食べている。
「……マジで」
思わず、私は頭を抱え込む。シュリナがこんな悪趣味な冗談を言うわけない。
「看板とかーー」
「あるわけなかろう」
「そうですよね~。あったら、かえって怖いよね。ハッハッ…………で、どうするの?」
ちょっと、現実逃避しかけてた。
「道なら、ムツキ、お前が知っている。ゲフッ」
「はぁ!?」
知るわけないでしょう!?
シュリナの言葉に、皆が私の顔を一斉に見る。私は勢いよく首を左右に振った。
「知っているというよりは、導かれると言った方が正しいか……」
「……どういうこと?」
「説明しなくても、自ずと分かることだ。…………ところで、気付いているか?」
シュリナが最後まで言うよりも早く、サス君が私たちを庇うように飛び出し、低い唸り声を上げている。
「魔物!?」
一所に長居し過ぎたみたいね。
「ムツキさん、魔物ではありません。この気配は人です」
魔物じゃない?
「人? ハンター?」
「それはない。この聖域内に、人は入って来れないはずだ」
シュリナは少しも慌てる様子がない。その様子に、私は少し違和感を感じたが、それよも……
聖域内? ここが!?
「えっ!? でも、ドーンの森には大勢のハンターが潜ってたよね」
「だが、遺跡内には入れなかっただろう」
あー、なるほど。
ということは、ここは既に遺跡内? だとしたら、私たちの近くにいるのは……
「ビャッコ様の眷族?」
「違います!」
サス君がきっぱりと否定する。
「だったら、サスケがここまで警戒するはずなかろう」
「つまり、眷族でない人間が、ビャッコ様の結界を越えて来たっさてことね。で、何人?」
「五人程です! 囲まれています!」
「ココ、例のお願い!」
いつもと同じように、ココに幻影をだしてもらおうと思った。
「その必要はない」
シュリナがココを止めた。
「あれは、眷族ではないが加護を受けている。敵ではない」
ーー加護を受けている?
「あれとは、我が主のことか? 魔物風情が、舐めた口きくんじゃねーー!!!!」
男性の怒号と共に殺気が放たれる。が、攻撃を仕掛けてくることはなかった。
いや、出来なかった。
殺気が放たれたと同時に、ガタイのいい男が木の上から落ちてきた。おそらく、怒号を上げた男だ。男は動けない。細くて長い、黒色の尻尾と三角の耳がある。獣人族だ。
「だっ……大丈夫ですか!?」
ピクリとも動かない男に、私は駆け寄ると声を掛けた。反応は全くない。
「愚かな男だ。聖域内で我を魔物と呼び、殺気を放つとはな。死にたいのなら、聖域内から出ろ。直ぐ、死ねるぞ」
冷ややかな声で言い放つ。相手は全く聞こえてないだろうけど。
「ムツキ様、気を失っているだけです。今のうちに止めを刺しときますか?」
真面目な顔でミレイは指示を仰ぐ。
「「「それは駄目!!!!」」」
勿論、速攻で否定しました。
「構わんぞ。我が許す」
「シュリナ!!!!」
何、許可出してんのよ!!
「そうですか……」
私に反対されて、しょんぼりするミレイ。
「ミレイ、残念そうにしない!!」
というか、ミレイ、そういうキャラだった?
「……悪いが、部下の息の根を止めるのは止めてくれ」
苦笑混じりの声が、前方から聞こえてきた。
姿を現したのはーー
ミレイさんが……(T▽T)
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




