〈第二十六話 もっと楽しませてよ〉
今回も、セシリア視点です("⌒∇⌒")
ーー深夜。
屋敷内は灯りが消え真っ暗だった。
そんな真っ暗な中、ギシッ、ギシッと木造の床を軋む音がする。灯りが完全に消えて真っ暗だった屋敷内を、小さな灯りが空中をゆっくり移動する。
メイド服を脱いで、髪をおろし、ラフなワンピースを着たセシリアが、戸締まりなどの最終点検のため、灯りを手に一人屋敷内を歩いていた。いつもと変わらない、深夜の光景。
だが、この日は違っていた。
表面上は一切変わらない。たけど、ムツキが連れてきたエルフの少年以外、全員が起きて行動していた。各自ベットにそれぞれ細工をし、眠っている様にみせる。そしてその裏で、各自持ち場に着き、息を潜め、闇夜に紛れる。気配を完全に消した彼らの存在を、認識することは容易ではない。ほぼ不可能に近い確率だった。
獣人族の中でも、特殊で、且つ最強と呼ばれる、セシリアの部隊にとって、この手の働きは得意中の得意だった。
窓から見える月が綺麗なので、思わずセシリアは立ち止まると、月を見上げた。
「お嬢、獣が一頭、食らい付きました」
姿は闇夜に溶け込み一切見えないが、暗闇から、囁くよりも小さな声で、セシリアは報告を受けとる。
一頭だけか……
まぁ、構わない。その獣に訊けばいいだけの話だ。セシリアは部下の報告に小さく頷く。
月を見上げていた視線を元に戻すと、廊下を進み、最後に、エルフの少年が眠る部屋の扉を開ける。窓が開いているのか、生温かい風が頬を撫でた。セシリアは室内に入る。テラスに出る窓が開いていた。セシリアが窓を閉めようと、灯りを台の上に置いて、テラスに近寄った時だった。
首筋に鋭い痛みと衝撃が、セシリアを襲った。崩れ落ちる、セシリアの華奢な体。その体が、床に直撃することはなかった。背後から受け止められ、床にソッと寝かされる。
「乱暴なことをして、ごめん」
寝かされる時、小さな声で獣は謝った。それから、エルフの少年を肩に抱き上げ担ぐと、音をたてずにテラスに出る。二階から飛び下りた獣は、体勢を崩すことなく着地するが、駆け出し逃げ出すことは出来なかった。
「待ってたよ、獣君」
「ほんと、待ちくたびれちゃったよ、獣君」
「「さぁ、僕(私)たちと遊ぼう!!」」
ロイとミカは心底楽しそうな声を発しながら、黒い獣と対峙する。
「殺してはいけませんよ。ロイ様、ミカ様」
自分が気絶させたはずのセシリアが背後に降り立ったことで、黒い獣は、唯一の逃げ道を塞がれたことを悟ったはずだ。罠だったとことも、気付いているはず。しかし、黒い獣から発せられる殺気は消えていない。衝突は避けられない。仕方なく、黒い獣はエルフの少年をソッと下に下ろした。
「……一つ確認していいか。何故、お前たちは、このエルフの少年を心配しないんだ?」
黒い獣はロイとミカに尋ねる。
「何故って、罪人でしょ」
「それも重犯罪。国家的犯罪者。世界全てを敵に回した者を心配する必要があるの?」
ロイは一蹴し、ミカは反対に問い掛ける。
ーー貴方もそうでしょ。
という、含みを込めて。
「俺たちが犯罪者だと!」
一気に、黒い獣の全身から、殺気が放たれる。
ーーたちね……
三人は内心ニヤリと笑う。
「貴方、嘗て、スザク様の眷族だったそうね。リクって言ったかしら。ジェイ様から聞いたけど、貴方、ムツキ様に不敬をはたらいて、スザク様の怒りをかったそうね」
セシリアの感情が含まない、冷たい声が黒い獣に容赦なく突き刺さる。
「だったらどうした!! 元々、あの人間が〈護りて〉なこと事態がおかしいだ!! 何故、皆気づかない。最も不敬を犯し、世界を危うくしているのは、あの人間なんだぞ!!!!」
吐き捨てるリクの毒に、ミカとロイが黙り込む。今まで抑えていた殺気が漏れ出ている。ニヤリと微笑む口元から、鋭い牙がチラリと見える。
「……それで、貴方は黒いローブの口車にのり、里を出たのですね」
「…………」
「無言は肯定だとみなします。……貴方は知っていましたか。黒いローブの男が、ゼノム=ユリアスという名だということを」
セシリアは鋭い視線をリクに向け追求する。
「……それがどうした?」
「ゼノム=ユリアスは、スザク様の眷族が棲む里を襲撃し、大勢の罪なき者を惨殺した首謀者だったことは知っているかしら。そして、大賢者イオリの手によって、〈呪い〉を掛けられ、〈永久奴隷〉におとされたことも」
「ーーーー!? う……そだ…………嘘だ!!!! デタラメを言うな!!!!」
怒りとショックで我を忘れた者など、三人の敵ではなかった。
リクは獣の姿に変化し、ミカとロイに襲い掛かる。
「ほんと、愚かよね。自分たちの仇の駒になるなんて。ましてや、仲間たちを呪縛から解き放ってくれたムツキを愚弄するなんて、里にはいられなくなるのも当然ね」
「馬鹿の極みって、こういうことをいうんだね。草葉の影で、死んでいった者たちは、君に怨嗟の言葉を吐きかけていることだろうね」
ヒラリ、ヒラリと余裕で交わしながら、ミカとロイは言葉の刃で確実にリクの心を切り刻む。
「五月蝿い!!!! 五月蝿い!!!!」
リクは咆哮する。と同時に、【魔波】を放った。
だが、誰も倒れない。それどころか、近くにいるのに、三人ともニヤリと笑い平然と立っている。
力の差が、歴然と明らかになった瞬間だった。
「「それで終わり? もっと楽しませてよ」」
お待たせしました("⌒∇⌒")
今回も、セシリア視点です!!
黒い獣の正体、分かりましたか?
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




