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〈第二十三話 白い花の名は〉

 


「森の中に薬草園があるの?」



 ボルンの街を出て、三十分ほど森の中を歩いている。



「後少しで着く」

「でも、こんなに街から近くにあったら、気付かれそうじゃない?」

「その心配は無用だ。結界を張っているから、まず、気付かれる心配はない」

「結界ね……でも、まさかドラゴンが薬草を栽培してるって、普通思わないよね。シュリナは、そういうのしてないよね?」

「我がすると思うか。そんな面倒なこと、よほどの物好きじゃなきゃする訳なかろう」

「だね~~」

「まぁ、この大陸が、農業に秀でた大陸だということが、背景にあるかもしれんが。……もうすぐ着くぞ」



 木々を抜けた先で、シュリナが止まる。



 目の前には拓けた空間が、そこには……



「綺麗……一面真っ白だね……」



 真っ白な花を咲かせた花畑が、見渡す限り一面広がっていた。



「あの花って……まさか!?」

「ココ、どうした? あの薬草を知ってるのか?」

「このアホが!!」



 ココがサス君に飛び蹴りをいれる。猫らしからぬ動作だ。まぁ、猫じゃないけどね。



「ココが驚くのも無理はない。この場所は遺跡から出る波動と似ているからな。栽培に適しているのだろう」



(遺跡? 真っ白な花? ……ん? どこかで聞いたことがあるような……確か、ゼロが言っていたような……)



 そこまで考えて思い出した。



 ゼロが一生に一度、その目で見たいと言っていた、幻の花。

 初夏の時期しか咲かない花。

 空気が綺麗で、限られた場所しか自生しない花。



 ーーその花の名前は。



 薬草の名前を口にしようとした時だった。後ろにいたジェイが口を開いた。



「……ムツキ。そこに薬草園があるのか?」

「え? どういう意味?」



 ジェイの言っている意味が理解出来なくて、私は首を傾げる。



「俺には、ただの原っぱにしか見えないんだが……」



 ジェイ自身も困惑している。



(原っぱ……?)



「ミレイも原っぱに見えるの?」

「はい……」



 ミレイにも見えていない。



「言っただろう。結界が張られておると」



『確かに、結界が張ってあるって言ってたけど、ジェイはシュリナの加護を享(う)けてるはずだよね』



 私はまだミレイに、シュリナの正体を話していない。もしかしたら、賢いミレイのことだ、薄々気付いているかもしれない。だけど、それを訊くタイミングが掴めない。ビャッコ様の封印を解くために翠の大陸を訪れている以上、いつまでも、このままじゃいけないことは分かっている。今も、声に出して訊けなくて、念話で尋ねている始末だ。



『我の加護を享けておるが、ビャッコの加護は享けておらん』



 それが、ジェイが白い花畑が見えない理由。



「シュリナ。見えなかったら、結界に入れないの?」

「介助があれば大丈夫だろう」

「介助?」

「見える者。即ち、ムツキ、お前が手を掴み引き込めば、二人とも入れる」



(なるほどね)



「じゃあ、早速入ってみる?」



 私はミレイとジェイの腕をガシッと掴むと、焦る二人を無視して、少し強引に足を踏み出す。シュリナたちも、結界内に足を踏み入れる。



 ーー目の前に広がる白い花畑。



 ユリに似た香りが鼻孔をくすぐる。



 ミレイとジェイは言葉を失い、呆然と立ち尽くしていた。



「「…………この花は……」」



 少しの間が空いた後、絞り出すような小さな声が背後から聞こえた。二人とも、この花のことを知っているようだった。



「蘇生草だよね。ゼロがいたら、すごく喜んだのに」

「摘んでも構わんぞ」

「えっ! 駄目だよ。だって、この薬草園は、シュリナのものじゃないでしょ」

「あいつなら、怒らんぞ。摘まない方が怒るに決まっている」



 そう断言する、シュリナ。



(本当にいいのかな?)



「構わん。摘め!」

「……じゃあ、少し」



 四、五本抜くと「もっとだ」と、シュリナが隣で指示する。四、五本もたくさんも、摘むことには変わりない。



(こうなったら、一杯摘んでやる!!)



 そして、常に持ち歩いている紙袋一杯に、蘇生草を採取した。



「そろそろ、帰るか」

「そだね」

「ココ、サス君、帰るよ」



 花畑で転がっているサス君とココに声を掛ける。サス君とココは起き上がると、軽く伸びをした。まだ呆然としている、ジェイとミレイの服を軽く引っ張ってから、花畑(薬草園)を出ようとした。



 その時だった。



 ーー魔力を感知した。



 瞬時に、私たちは臨戦態勢をとる。



 しかし、魔物の気配はしない。人の気配もだ。



 戸惑ううちに、魔力の波動も薄れていく。



 代わりに、ユリの香りに混じって、鉄分の匂いが鼻についた。慌てて私たちは、鉄分の匂いがする方向に駆け寄った。



 十歳ぐらいの少年が血塗れで倒れていた。少年の体の下敷きになっている蘇生草は、真っ赤に染まっている。魔物の爪痕が、少年の背中を縦に引き裂き、抉っていた。大きな怪我はそこだけかもしれないが、よく見れば、あちこちに切り傷や擦り傷があった。



 私は少年の首筋に手を当てる。微弱だが脈がある。でも、いつ止まってもおかしくない状態だった。



 私は少年の背中に手を翳(かざ)すと、心の中で【ヒール】を唱えた。



 橙色の魔方陣が、少年全体を包み込む。みるみるうちに、少年の背中の傷が消えていく。細かい切り傷や擦り傷も消えた。しかし、少年は目を覚まさない。



「……失った血の量が多い。今すぐ、休ませないと!!」

「分かってる! あいつらの所に行くぞ!」



 ジェイが少年を背負いながら指示する。確かに、そこが一番いい。私は頷くと転移魔法を唱えた。






 お待たせしました("⌒∇⌒")


 蘇生草は超がつくほどのレアな薬草です!!

エリクサーを生成するのに、必要な薬草です。次にムツキが作るのは、エリクサーかな("⌒∇⌒")


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪


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