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〈第十八話 穢れてないから〉

 


「魔眼石を壊したのですか!? ムツキ様!! どうやって壊したのですか?」



 普段仕事柄か、感情をあまり表に見せない冷静沈着なザイードが、珍しく大きな声を上げた。



「それ、俺も訊きたい」

 ジェイも訊いてくる。



「神聖魔法を魔眼石に掛けただけですけど……」

「「「神聖魔法!?」」」



 綺麗にハモったね。



(何? そんなに変なこと言ったかな、私。……ん? あれ? 一人多くない?)



「ムツキ様は神聖魔法が使えるのですか!?」

「例えば、どんなものが使える?」

「マジで使えるのか!? 今、見せろ!! さぁ!!」



 一人増えてる。宮廷魔術師長だ。いつの間に現れた。気配なかったし。それよりも、



(顔近いって!)



「さぁ! 今すぐ、僕に見せろ!! ーー痛ッ!!」



 短い悲鳴を上げ、魔術師長が頭を押さえ蹲(うずくま)っている。



「申し訳ありませんでした。ムツキ様」



(もしかして、その冊子の角で殴りました?)



「済まなかったな、ムツキ。こいつ、魔法馬鹿だから」



(ジェイさん、拳で殴りましたね)



「「「自業自得だ(ね)」」」



(いや、違うと思うけど)



「ジェイ様。お話し中すみませんが、ムツキ様をお部屋にお連れしても宜しいでしょうか?」

 さっきまで黙っていたミレイが、ジェイに尋ねる。



「えっ!? どうして? 疲れてないし、このままとって返すつもりだから」



 時間が勿体ないし。でも、ミレイは折れない。



「ムツキ様、体を清めましょう」

「いや、その必要ないから。それに、魔術師長様は汚なくないから」

「何気に、ムツキ様、酷っ!」



 下から聞こえてくる声は無視する。



「魔術師長様は汚なくありませんが、あの中年男の視線は汚いです。穢されます。それに、不可抗力とはいえ、体に触れましたし、体を清めましょう」

「まぁ、確かに気持ち悪い目をしてたけど、あれぐらいで穢れたりしないから」

「穢れます!!」

「穢れないって!」



「お風呂に入るぐらいの時間なら、十分待てるぞ」

 私とミレイの押し問答に、ジェイが割って入る。



(何を言ってるの、ジェイ!)



「待たなくていいから!!」



 キッとジェイを睨み付ける私に、怯むジェイ。



「ありがとうございます、ジェイ様。では、すみませんが、ムツキ様を清めてくるまでの間、暫しお待ち下さい」

「ミレイ~~~~!!!!」



 廊下に木霊する私の悲鳴。ミレイは抵抗する私を無理矢理、部屋に引っ張って行った。



「どうしてそこまで、風呂を嫌がるんだ?」

「ムツキは風呂嫌いじゃないよ。寧ろ、好きだよ。長湯だしね。風呂の後、身体中を磨かれるのか嫌なんだよ」



 自分の体を舌で清めながら言うココの台詞に、男たちは「「「何故!?」」」」と声を揃えて突っ込んだ。









「……ムツキ、大丈夫か?」



 グッタリしている私を気遣うジェイに、私は微笑む。



「大丈夫くないです。すっごく疲れました。精神的に」



 身体はピカピカに磨かれ、全身から良い匂いがする。薄着から覗く肌は、艶やかで、思わずジェイは吸い寄せられそうになる。その時、スザク様がジェイのことを凝視していることに気付いた。そのお陰で、何とかおし留まる。



「行く前に、一度、神聖魔法を見せて欲しい!!」

「…………こりませんね。魔術師長様」

「何度でも言うから。一度ーー」



 ゴツ!! という派手な音の後、その場に崩れ落ちる魔術師長。その背後には、にこやかな笑みを浮かべて立っているザイード。



(また角で殴ったんだ……宰相様)



「それじゃ、行くか」



 ザイードと魔術師長のやり取りに慣れているのか、ジェイは普通にスルーしている。私もスルーしよ。



「はい。朱の大陸の国境まで飛びますね」

「「「「朱の大陸?」」」」



 サス君とココは首を傾げる。てっきり、翠の大陸の国境まで移動するのだと思ったようだ。飛べるけど……



「人前に出る可能性があるからか」

 代わりに、シュリナが答えてくれた。



(さすが! シュリナ。それじゃ、行きます! 【転移魔法発動】行き先は、朱の大陸国境。林の中)



 橙色の魔方陣が床に浮かび上がり、光りだす。光りが私たちを包み込み、消えると同時に、私たちの姿も執務室から消えた。






「おい、ザイード。あの子供、詠唱なしに魔法を発動させたぞ。それも、転移魔法を」

 呆然と呟く、魔術師長。



「ムツキ様と呼びなさい。……まぁ、別に驚きませんよ、私は。ムツキ様は、あの大賢者イオリ様の孫弟子ですからね」

「何っ!! マジで!?」

「さて、我々も仕事をしますよ」



 ザイードは魔術師長の後ろ襟を掴むと、半ば引きずりながら、中年男が捕らえられている牢屋に向かって歩きだした。





 お待たせしました("⌒∇⌒")


 本当、転移魔法って便利ですよね(*´ω`*)

 私も欲しいです!! 心から。


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪



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