〈第十二話 新しいメイドは犯罪級に可愛かった〉
ーー出発前夜。王宮の一室。
「えーと。ポーション二十本作ったし、着替えもいれたよね。魔石も商業ギルドで換金したし、皆の御守りに魔力も込めた。壊れた時用に、予備もちゃんと作った。……後、何かしなきゃいけないことあったかな?」
鞄にいれてた物をもう一度取り出して、確認する。
「ムツキ……それ三度目」
呆れたココが溜め息をつく。
「だって、新しい大陸に行くんだよ! ちゃんと、準備しとかないと、いざって時に困るんだよ!」
「ジェイの転移魔法で、国境近くの村まで移動するんだから、何か必要な物があれば買えばいいじゃん」
少し苛々モードのココの尻尾が、ベッドをパフパフと叩く。
「そうだけと……」
「ココ様の仰る通りですよ、ムツキ様。ムツキ様がすべきことは、明日に備えて眠ることです」
ミレイは温かいカコアをテーブルの上に置きながら、微笑む。
ワゴンの横には、セッカとナナがミレイお手製のメイド服を着て立っていた。
二人は、長めの丈の紺色の半袖のワンピース。襟元と袖口は白い生地。胸元にはワンピースと同じ生地のリボンがついている。腰には小さな白いエプロン。そして、首には赤い首輪。
マジ、可愛い!!
しかも、ミレイの淹れたカコアの甘い匂いに、口から涎が垂れそうになっている。
ーー犯罪級の可愛さだ!!
セッカとナナを熱い目で見詰める私を、残念そうに、冷たい目で見詰める従魔トリオ。
別にいいじゃん。可愛いのを可愛いって思ってもさ。
洞窟のダンジョンで、魔剣化しかけていた、セッカとナナ。
私だと、セッカとナナを甘やかすとして、教育係にミレイが名乗りでた。
同じ主に仕える者として、任せてほしいと言われて、私は二人をミレイに託すことにした。それから、セッカとナナはミレイと共に、メイドの仕事を手伝っている。
結構、スパルタだ。私としては、ミレイもセッカもナナも、大切な仲間で、対等だと思ってるんだけどね。例え、種族が亜神だったとしても。
「二人とも、口元を拭いなさい。主の前で恥ずかしい格好を晒してはいけません」
ミレイに注意を受け、セッカとナナは慌てて口元を拭った。必死で我慢している、セッカとナナ。二人の目が、私たちのコップに注がれている。飲みにくい。
「……ミレイたちも、一緒に飲まない?」
途端に、パッと表情が明るくなるセッカとナナに、苦笑するミレイ。
こういうところが、甘いんだよね。
分かってはいるんだけど、ついつい、甘やかせてしまう。
「仕方ありませんね。今回だけですよ、セッカ、ナナ。さぁ、ムツキ様にお礼を」
「「ありがとうございます!! 主様」」
セッカとナナはちょこんと頭を下げた。
◇◆◇◆◇
執務室で宰相は難しい顔をしていた。
「ムツキ様は、何を考えておられるのでしょうか?」
宰相が心配するのは、翠の大陸に同行する者の中に、〈ユリアス〉のラストネームを持つ者がいることだった。
確認したところ、あのメイドは元貴族。
だとするなら、ゼノム=ユリアスと血縁関係にあってもおかしくない。〈ユリアス〉の名は、母方のラストネーム。
当時の勇王に認知されてたとはいえ、勇王のラストネームを名乗れない、当時のゼノムは、王子とはいえ、カなり下位の身分だった。
この世界において、勇王の子供が王位につけるとは限らない。
王位につけるのは、【勇者】の称号を持つ者のみ。
文献によると、この時期、勇王は重い肺の病気を患っていた。
勇王の死後、【勇者】が現れない以上、ゼノム王子が代理として王位に就くのなら、【勇者】以上の称号が必要だった。【勇者】以上の称号。それが、【護りて】だったのだろう。
宰相がミレイ=ユリアスの同行に異議を唱えるのは、ラストネームのせいだけではなかった。ミレイ=ユリアスがムツキと出会った時期が問題だった。
ミレイ=ユリアスがムツキに出会ったのは、ホムロ山の事件直後ーー。関連性があったと疑われても仕方ない。
それを理解した上で、ムツキはミレイの同行を認めたのだ。それが、宰相には理解出来なかった。
「お前の気持ちは分かる。だが、ミレイ=ユリアスの同行を認めたのは、ムツキだけじゃない。スザク様も同行を認めている。そのことに、我々が異議を唱えるのは不敬だ」
勇王であるジェイソンの言葉に、宰相は口を閉ざす。これ以上、自分が口を挟むことではない。押し黙る宰相に、ジェイソンは笑みを浮かべた。
「俺もちょくちょく顔を見せるつもりだが、留守は任せたぞ」
「畏まりました。王も無茶をなさらぬよう。くれぐれも、ムツキ様に嫌われないように。お願い致します」
宰相はそう述べると、勇王に深々と頭を下げた。
お待たせしました("⌒∇⌒")
ミレイさん(*^ー゜)b グッジョブ!!です。
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




