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〈第六話 呪いと永久奴隷〉

 今回は主人公不在です。

 


 感情が読みとれない目で、真っ直ぐ、自分を見据える男。



 ホムロ村ギルマス、ケイ=パリス。職業、魔法剣士。ゴールドクラスの中で、上位十位に入る実力者。容姿とは違い、その戦い方はえげつないと、前に変態(戦闘狂)に聞いたことがある。その男が、ミレイを見据えている。今室内にいるのは、ミレイとこの男だけだ。



「……それで、ミレイ=ユリウス。君は、ムツキの仲間になったと理解していいのかな」



 ムツキに対して発していた声音とは全く違う温度差に、ミレイは内心呆気にとられる。だが、主であるムツキ様の美しさと、庇護欲をかきたてられる愛らしさを脳裏に思い浮かべ、それも致し方ないと納得する。



 それほどまでに、ムツキ=チバという少女は魅力的だった。



 外見の美しさなど所詮はうわべ、しかしムツキ様は、内面までもが純粋で芯があり、それだけで多くの人を惹き付ける。天然のタラシだと、ミレイは常々思っていた。そういう自分も、惹き付けられた一人だが。あくまで、主としてだ。



 ーー主としてムツキ様に遣えたい。



 そう思ったからこそ、ミレイはムツキ様の後を追い掛けた。考えるより先に行動に移していた。あの変態から逃げだすために就いた、仕事を辞めてまで。



「はい」

「そうか、理解した。それで、ムツキから何か聞いているか?」



 幾分、柔らかくなった口調で、ケイは再度ミレイに尋ねる。



「ホムロ山に出現したシルバータイガーが、何者かの手によって操られていたと、聞いております」



 商業ギルドにも属しているミレイは、ホムロ山で起きた情報は入ってきていた。例え、洞窟のダンジョン内だったとしてもだ。そこに、商業ギルドのギルマスであるゼロが関わっていたなら、尚のことだ。



 てっきり、地脈の影響を受けたからだと思っていたが、それだけではなかったことに、ミレイは驚きを隠せなかった。同時にその内容に、心底恐怖を感じたのも事実だ。



「……【呪い】を掛けられてな」



 ケイの声は低く、暗い。地を這うような声と、放たれる魔力の波動は室内の温度を五度は下げた。



(寒い!!)



 何とか、ミレイは腰を抜かさず立っている。仮にも、ミレイはシルバーランクだ。腰を抜かすような醜態を晒す訳にはいかない。ミレイのプライドが許さなかった。



「…………ギルマスは、【呪い】が存在すると思いますか?」



 力を振り絞って答える。その声は小さく掠れていた。ケイはミレイの様子に満足したのか、ニヤリと笑う。



「ああ。俺は一度、【呪い】を掛けられた人物に会ったことがある。そいつは、〈永久奴隷〉に落とされていたがな」



 ーー会ったことがある。



 確かに、ギルマスはそう告げた。その人物は〈永久奴隷〉だと。




 ーー永久奴隷。


 全ての人権及び、身分そのものを剥奪された者。生きながらの死者であり、存在そのものが物とかわらない者。祝福を受けられない者をいう。その字の如く、永久に解放されることはない呪縛。




 ミレイ自身、聞いたことがあるが、それは知識の世界だけだ。実際、〈永久奴隷〉は禁止されてるはずだった。遠い昔にーー



「さて、それじゃ手伝ってもらおうか」



 その言葉と同時に、ケイから発せられた魔力の波動が治まった。



 全身を締め付けられていた圧迫感が消え失せ、思わず崩れ落ちそうになったが、何とかミレイは踏ん張る。そして、ホッと息を吐きだす。



「ボケッとしてないで。ほら、早く手伝って。皆が戻って来る前に、書類を片付けてしまうぞ」

「は?」



 ミレイの戸惑いをよそに、ケイは急かす。ギルマスからの命令に逆らうことが出来ず、仕方なしにミレイは、書類の片付けを手伝い始めたのだった。






 お待たせしましたm(__)m


 次回から、ムツキ目線に戻ります。


 それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪



 

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