〈第四話 戦闘狂、獲物を見付ける〉
悲鳴を上げ、腰を抜かした軟派男こと、私の偽者さんとハーレムの女たちは、係員と王都の警備兵に仲良く連行されて行った。
情けない格好だったよ。マジで。よほど、シュリナたちが怖かったんだね。完全に泣いてたもん。鼻水を流しながら。容姿が整ってた分、悲惨だったわ。同情する。軟派男たちじゃないよ。連行しに来た、ギルドの係員と警備兵にね。腰抜かしているから抱えなきゃいけないでしょ。絶対についてるね。鼻水と涎が。
「はいはい。そこ集まらない。散らばって」
係員かな、ギルドの関係者が、取り囲んでいたハンターたちに散らばるよう、大声で指示をを出す。文句を言いながらも、ハンターたちは従う。大半は、そのまま飲みに隣の食堂に向かった。さっきの出来事を、酒の肴にするのだろう。
(酒の肴になるのは仕方ないと、思うけどさぁ)
思うんだけど……
「はぁ~~」
どうしても、大きな溜め息をついてしまう。知らないうちに、二つの名が有名になっていく。完全に自分を無視して。
(ところで、目の前にいるギルマスは一体なんなの? 今も腕組みをしたまま唸ってるし)
不審に思っていた私の腕を、いきなりミレイが掴んだ。
「えっ?」
戸惑う私を無視して、そのまま外に連れだそうとするミレイ。シュリナたちも何も言わずについてくる。
出口まであと少しのところだった。
「漆黒!! 俺とやろうぜ!!!!」
馬鹿でかい声で、ギルマスが叫んだ。
その声に思わず振り返った瞬間、私は「ヒッ!」と、短い悲鳴を上げた。そこには、目を血走らせたギルマスが、頬を赤く染め興奮していたからだ。
「逃げますよ!!」
ミレイが鋭い声を発したと同時に、何かが、自分たちに向かって放たれた。私は咄嗟にミレイを突き飛ばす。
(かわせない!!)
私は両手を前に突きだし、プロテクトとマジックバリアを瞬時に張る。考えるより先に体が動いていた。両手の先に、何かの塊が、圧力が、私に襲い掛かろうと牙を剥く。私は魔力を両手に集める。
今いる場所が室外だったら、横に逸らせることも出来た。でも、今いるのは室内。それも、人でごった返している、ギルドの中。ギルマスが馬鹿な攻撃を仕掛けたせいで、私の周囲には人はいないが、それでもこれだけの攻撃を逸らせたら、怪我人がでる可能性がある。
(出来る限り、威力を消さないと。でも、どうしたら?)
『魔力をもう少し放出しろ』
シュリナが念話で指示をだす。私はシュリナを信じ、少しだけ両手に魔力を流す。固い壁に水風船が当たって弾けるように、ギルマスの攻撃は霧散される。
「やるじゃねーか! まさか、俺の攻撃を相殺させるとはな!! 思った以上だぜ」
ギルマスは心底嬉しそうに笑う。その目は完全に獲物を見付けた時の目だ。獲物は私。
(ちょっと待って!! 大斧までだしてきたよ!!)
「さぁ!! 俺と愛し合おうぜ!!!!」
血走った目で愛の告白=殺し合い。この図式、絶対に間違ってない。
(ヒッ!! 完全にイッチャてる!!)
室内でギルマスが大斧を振り上げた時だった。
「「ーーーー!!」」
ギルマスの体が突然前に倒れた。顔から床にダイブし、そのまま鼾を掻いて寝ている。その足下に、ハンターたちを散らしていた係員が立っていた。その手には注射器が握られている。
(もしかして、麻酔薬!? 手馴れてるように見えるんだけど……)
呆然とする私に、係員は謝罪する。
「うちのギルマスが、大変、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。チバ様のハンターカードの手続きは無用とさせて頂きます。洞窟のダンジョンの係員に声を掛けて頂ければ、無条件に二十階層までご案内するよう、手筈を整えておきますので、ご安心下さい」と。
そう言ってから、深々と頭を下げる係員。周囲は落ち着きを取り戻す。
「全く、あの戦闘狂は!!」
(ミレイ知ってたんだね。っていうか、全員知ってた? 誰も驚いてないんだけど……)
隣で、ミレイが冷たい目でギルマスを見下ろしながら、小さく毒づくのを聞いた私は、このギルドの実状を肌身で知った。
(このギルドに寄るのは止めとこ……)
鬼門だ。色んな意味で。そう、心の中で決意した私が、皆とギルドを出た時だった。
私の前に、一羽の赤い鳥が舞い降りた。
お待たせしました。
王都ギルド支部のお話は、これにてオシマイ!! まだ名前もないギルマスですが、意外に好きなキャラなので、これから登場するかも……
それでは、次回をお楽しみに(*^▽^)/★*☆♪




