表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/316

第一話 新米魔法使いの訓練書

 設定は、外伝「忌み子とあやかしの国」の続きですが、単独で読めます。

 こちらが本編になってますので、是非!!


 新たな、睦月の冒険をお楽しみ下さいませm(__)m

 


 ったんだの末、やっと魔法使いの弟子入りが認められて、早一か月。


(ほんと、認められるまで色々あったよ……マジで)


 一度死んで生き返って、誘拐されて、殺され掛けた。何、この三拍子。


 一応、生まれは日本だった筈なんだけど……。


 それにしても、言葉にすると、結構精神的に来るものがあるよね。でもまぁ、その話は別の機会で話すとして。


 私の名前は千葉睦月。一月生まれ、十四歳。日本では中学二年生()()()


 間違いじゃないよ。だったで正解。私は一度死んだからね。


 死亡原因は、インフルエンザで死に掛けた挙げ句、無茶な〈界渡り〉をしたからかな。


〈界渡り〉は、ラノベでいう異世界に渡る事。別の世界へと移動する事からそう呼ばれている。


 そして、その能力を持っているのが〈魔法使い〉と呼ばれる人たち。勿論、私もその一人だよ。まだまだ新米だけどね。


〈魔法使い〉は、それぞれ個人の魔力に応じてだけど、自分の意思で〈界〉を渡る事が出来る。修行とかで身に付けるものじゃなくて、生まれながらに持っている特殊能力なんだ。結構凄いでしょ。


 でもね、これが結構な魔力を消費するんだよね。半端な魔力や中途半端な状態で行うと、私のように途中で死んだりするので要注意。


 じゃあ、何で生き返ったかって?


 それは、神獣森羅様のおかげだ。


 ーー神獣森羅様。


 理に最も近い存在とされ、理そのものとも言われている。驚く事に、死を無効化する事も出来る。凄い神様だ。多くいる神様たちにも一目置かれている。


 森羅様は、主に界と界の狭間を棲みかにしている。そのせいで、他の神様たちにも人の目にも触れる事は、まずない。


 唯一、出会えるとしたら、界を渡る事が出来る魔法使いぐらいだろう。といっても、その確率は皆無に近いと思うけど……。なんせ、世界は無限にあるんだから、勿論その通路も無限にある。


 つまり私は、宝くじで一等前後賞が当たる確率よりも低い確率を引き当てた事になる訳。一生分の運は使い果たしたよね、多分。


 死者を生き返らせる事が出来るんだから、その力は他の神々よりも遥かに強く、最高位に近い神様だ。


 神様にとって、私のようなちっぽけな人間の命を助けたのは気紛れだったと思うけど、私は心から感謝している。


 心から安心出来る居場所と、仲間に出会える事が出来たのだから。


 その一人が私の師匠、伊織さんだ。本名は仲西なかにしさとるっていうらしい。私が本名を知ってるのは内緒。


 師匠は常世の世界で〈なんでも本屋〉という、馬鹿げた名前の本屋を営んでいる。


 先代から店を引き継いだ時に、名前も一緒に引き継いだんだって。先代から聞いた。


 勿論、先代も師匠も魔法使いだ。


 常世で人間は私と師匠だけ。他はあやかしたちだけだ。


 常世は五頭の聖獣たちが治めている世界。


 私が日本から逃げ出して、命懸けで渡って来た世界だ。


 常世って聞くと、死者の国、あの世と混同されがちだけど、実は全く違う。常世の住人は全員生きてるしね。あやかしの世界って言った方がしっくりくるかな。


 私が常世に渡って来たのは、四か月前。


 魔法使いの力を封じて日本に帰る選択もあった。けど、私はそれを断固拒否した。あんな所、正直死んでも帰りたくない。あやかしになぶり殺されるかもしれない未来があったとしても。そう思える程、日本での私の環境は劣悪だった。


 力がものをいう世界で人間が生きて行く訳だから、最低限の力が必要になる。


 私が力を求め、魔法使いとして生きて行くと決意するのは至極当然だった。











 山桜が散り掛け、平野の桜が満開になった。


 いつも通り、本屋の仕事に向かおうと階段を下りかけた時だ。師匠が私を呼び止めた。


「何ですか? 師匠」


 師匠の後ろをついて行きながら尋ねるが、師匠は質問には答えない。曖昧な笑みを浮かべるだけだ。


 嫌な予感がしつつも、付いて行くしかないよね。


 階段を下りると、本屋の一番奥の部屋の前で止まった。今まで、入ることを禁止されてた部屋だ。


 その日、私は初めてその部屋に足を踏み入れた。


 ドアを開けた先には、本屋内とは思えない程の広い空間がひろがっていた。


(凄い……)


 奥が全く見えない。あまりの広さに、口を開けたまま唖然と立ち尽くす。


 白を基調としたその空間には、無数の本が本棚にぎっしりと収納されていた。


 師匠は目の前の空間に視線を向けたまま、この場所が何なのか教えてくれた。


「その一冊、一冊が魔法書であり、持ち出し禁止の本ばかりですよ」


 でしょうね。実際、鑑定に持って来た人もいたし。


「ここは、先代がつくった異空間です。魔法書の収納のためにね。ここはまだその一部ですよ」


(えっ!? 一部!? 魔法書の収納のためだけって!! ……桁が違う)


 再び唖然とした。でもあの人なら、平然とやってのけてそうだから不思議だ。


 でもまぁ、その非常識があり得る世界、それが魔法使いなんだよね。自分もまたその一員なんだけど、いまいち実感がない。


「ここに収納されている魔法書は、比較的、危険性の少ないものだから、安心してもいいですよ」


(……はい?

 …………比較的危険性が少ない?

 ってことは、裏を返せば危険って事じゃないですか!!)


 本棚一杯にぎっしりと並んでいる無数の魔法書の全部が危険物って事ですよね。


 入口で足がすくんで当たり前だ。そんな私の様子に、師匠は声を出して笑う。


 別に、笑わなくてもいいじゃないですか。少しむくれる。

 

「では、行きますか? 大丈夫ですよ。こっちです」


 むくれる私を無視して、師匠はとっとと歩き出す。置いて行かれるのも怖いので、私は師匠の後を内心ビクビクしながら付いて行く。


 矢印も看板もないのに、迷うことなく師匠は歩き、ある本棚の前に立ち止まった。手を伸ばすと、一冊の魔法書を取り出す。


「これです。はい、睦月」


 師匠は表紙を確認すると、私に手渡そうとする。一瞬、躊躇ちゅうちょしたが素直に受け取った。


 英語の辞書の三冊分はあるだろう、分厚い深緑色の魔法書の表紙には、見知らぬ文字が書かれていた。


 おそらくそれが、題名だろう。


 見知らぬ文字のはずなのに、不思議とその文字が読めた。頭の中に浮かんできたといった方が、正確だと思う。


「…………新米魔法使い訓練書?」


 頭に浮かんできた文字を、そのまま口にだす。


 師匠は「良く出来ました」と言い、優しい微笑みを浮かべた。


「睦月、次の課題です。魔法使い系の職種に就かないこと。それ以外の職種で、レベル15を目指して下さい。達したら、自動的に戻って来れますから。ほら、本を開いて!」


(はい? いきなり、何ですか!?)


 魔術師? レベル15?


 師匠が何を言ってるのか分からなかったが、言われるまま魔法書を開いた。


 開けたページから光が溢れ出て来た。真っ白な光に包まれる。次の瞬間、足下の床が無くなった。


「えっ!! 落ちる~~~~~~~~!!」


(何の説明も無しにこれ!? 帰って来たら、絶対殴る!!)


「睦月~~~~。魔術師系以外の職種ですよ!! 僧侶とかも駄目だから、気を付けて下さいね~~~~」


 遠くから、そう叫ぶ師匠の陽気な声が聞こえてきた。


 絶対にぶん殴る!! 私は再度そう固く決心した。






 光が消えると、その場には睦月の姿はどこにもなく、伊織しかいなかった。


 無言のまま、伊織は落ちている魔法書を拾う。


 魔法書の題名が変化していた。



『魔法使いの弟子訓練書〈睦月編〉』とーー。






 最後まで読んで頂き、本当にありがとうございますm(__)m


 大幅に加筆修正しました。


 拙い文章ですが、一生懸命書いていきますので、これからも「魔法使いの修行のために異世界に放り出されたのに、魔術師や僧侶じゃなくて冒険者になりました。〈仮免〉ですが」を宜しくお願い致しますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ