目を開けたら婚約破棄ドラマが俺を置いてけぼりにして始まってた件
異世界憑依モノ。やっぱり、転生ではない……んですよね。難しいなジャンル分けって。あとBLゲームは恋愛ゲームだけど乙女ゲームじゃないよね?
ふっと目を開けたらドラマが始まってた。
「レフィ、すまない。お前の大切な人だと知っていて私は……」
「ラックス王子は悪くありません!僕が、僕が……」
俺一時停止ボタン探す。
「恨むならリフィルではなくどうか私一人を」
「いいえ、いいえ!貴方に惹かれてしまった僕も同罪です!」
俺巻き戻しボタン探す。
「私達は愛し合ってしまったんだ。……だからすまない」
「リフィルとの婚約を破棄して欲しい」
「……あ、はい」
停止ボタンが見つからなかった俺はそれだけ言って退場するしかなかった。
ーーパタン
「うわぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁ!!」
からの絶叫。
あ、うん。中の二人にも聞こえてるよな。でも知らん。っていうか俺耐えた方よ!?つーか何!?何なの!?ここどこなの!?俺誰なの!?可笑しい!俺こんな所に住んでなかったよ!?
……そう!そうそう!名前は何故か思い出せないけど俺日本に住んでた!でもここ日本じゃないよね!?探せばあるかもしれないけどこれお城みたいな内装よ!?
しかもさっきの二人髪赤と緑だった!綺麗な赤と緑だった!?ない!ないない!
あんなに綺麗に染まらない!カツラ!?カツラなの!?あの服はコスプレ!?俺何かのツアーにでも参加したの!?
ーーガシャン!?
壁に体当たりしてなんか色々倒れたけど知らんがな!つーか痛い!夢じゃなかった!!手から血が出てるぅぅぅ!!
「は、はは……はは……」
なんか力抜けた。
カシャンとか言ってるから鏡かなんかの上に乗ったかな知る……か……。
「……ぎゃあぁぁぁぁぁああああぁぁぁ!!」
これ誰ぇぇぇぇ!?銀髪!銀髪のイケメンが絶望して……俺だぁぁぁぁ!!
「あひゃ、ひゃひゃひゃ……」
もう無理。
意識が遠くなった。
鏡が散らばってる所に倒れたらこの綺麗な顔に傷つくなぁとか考えてたら温かい何かに包まれた。
「レフィ!?」
「……あ?」
お前も誰だよ。
言葉にすることは出来なかったけど。
ーーーーー
『お兄ちゃん!ゲームやろ!』
『……何の』
『BLゲーム』
『ざけんな。ギャルゲー持って来い』
『えー!この前やったじゃん!だから次は私だよ!』
『お前な。男が男口説いてどうすんだよ』
『何言ってんの。私だって女だけど可愛い女の子口説くゲーム好きだよ。二次元は皆可愛いもの!』
『…………そうだな』
思い出した、思い出したよ全部。これ妹とやってたBLゲームだ。確か許されない運命の恋を…とかそんなんだった。
思えば妹のあの発言に反論出来なかったのが悪いのか。いやでも皆可愛いのは本当だしな。ブサイクばっかな恋愛ゲームなんて買わねぇよ。でもよりにも寄ってこれかよぉ。確か不倫……あれ?でも結婚してないなら不倫じゃねぇか。不貞?まぁいいや、とにかく許されない恋をしようぜ!っていう奴よ。現実じゃやっちゃダメだけどゲームならってな。
これはリフィルと呼ばれてたあの緑髪が主人公だ。
城の優秀な文官で近衛騎士を務める俺、レフィと婚約してるんだけど他の攻略対象に惹かれていってしまう。婚約者=俺がいるからいけないって分かってんのに……みてぇな。ちなみにこのレフィ君とても優しい。リフィルに尽くしてるから余計に罪悪感がある。
んでもってさっきの赤髪はレフィ君の主である第一王子だ。勿論攻略対象者。レフィ君とラックス王子は親友関係な訳で当然リフィルを紹介すんだけどそこで王子が一目惚れ。そこから二人の関係が始まる。王子は主だけどレフィ君とは親友同士。その親友の婚約者であるリフィルとってんだからまぁ見事に罪悪感半端ねぇわけなんだけど余計に燃えるんだろうね。二人でも会うし三人で会う時もある。三人の時なんてレフィ君にバレないように手を繋いだりもする。二人の時?18禁バージョンのはセックスまでありますけど 。まぁそれは今はいいわ。
この世界、さすがBLなだけあって男同士でも結婚出来る。子供はね、コウノトリが運んでくれんだぜ、すごくね。
だから愛人とかじゃなくって普通にラックス王子と結婚出来る。そう、きちんとハッピーエンドになれるということだ。
流れはこうだ。
レフィ君に連れられながら攻略対象者達と会う。その中で選択してその人との仲を深める。このゲーム皆リフィルに一目惚れするから結構グイグイ来るんだよな。デート繰り返してれば簡単に上がる。んで罪悪感も貯まってく。それで二人はレフィ君に打ち明けることに決める。
そして婚約破棄をするとルートが確定する。しばらくは二人の評判は悪いがその後リフィルとそのルートの人物をレフィが殺しにかかるのだ。二人一緒に危機を乗り越え、最終的にレフィ君は殺され二人は同情され祝福される。
……だって相手主、同僚、上司、後輩、兄だぜ。信じてた相手に婚約者取られて……下手すると寝取られてんだぜ。刺し殺したくなるの当たり前じゃね。
ちなみにレフィ君は実力で上がったので位は低い方だ。描写はされないがかなり弱い立場で婚約破棄を言い渡されると断れない。周りのが高いから。しかもギスギスするから職場の近衛から外れるしかない。何も悪いことしてないのに左遷だぜ。やってらんねぇわ本当。
さて夢での妹とのやり取りでゲームの内容は思い出せた俺がいるのはどこですか。
「レフィ、起きたか」
「……あ」
倒れる前に俺のこと抱えてくれた人だ。この人の部屋かな?それとも俺の部屋に運んでくれたんか?
どっちにしてもどうすっかなぁ。ゲームって主要メンバー以外は出てこないから向こうが俺を知ってても俺は知らねぇんだよなぁ。
……いいや、言っちゃえ。
「あの、すいません。俺、ちょっと、その……何故か記憶がないんです」
「……っ」
あ、誤解されたなコレ。
まぁいいか。それだけの状況だったもんな、アレ。
しかもあの後俺発狂したし。この人が考えてるだろうこととは全く違う方向だけど。
「……俺は、騎士団長のギーグだ。……お前とは……そうだな、一応近衛騎士になれる程に育ててやったつもりだが……」
「っ!それ、は……そのっ、……すいません……」
うわぁ。この人がレフィ君育てた人だったんだ!?……いや、あれ?この人ギーグっつったよな?モブっちゃモブだけど結構出てきた人だよ。声だけだけど。……………あぁ、思い出した。この人もリフィルが好きなんだよ。
……何か胸糞悪い。
「……王子から聞いた。あれ程のことがあったんだ……その……記憶を失っているとは思わなかったが傷ついて当たり前だ……。あそこにはいずらいだろう。お前はこれから俺の補佐になる」
「……そう、ですか」
あれ?もう移動?確かしばらくはそのままだったはずなのに。でもまぁいいか。ギーグさんといた方が今の俺も楽だし。
「これからよろしくお願いします」
「っ……嫌じゃないのか?」
「え?……あ、や、その……今の俺ギーグさん以外頼る人いないんですけど」
「そ、そうだな、すまん」
あっぶねー。記憶失っててよかったぁ。
……でもまぁ、あれだな。良かったのかもな。あいつらに翻弄されずに第二の人生歩めるじゃん!……歩むの俺だけど。
そんなこんなで俺はゲームだけどゲームじゃない世界で生きることになった。
軽いって?悲しむべき記憶ないんだからしょうがない。
ーーーーー
「ギーグ団長!!」
「れ、レフィ!急がなくていい!」
あれから俺は騎士団にてお世話になってます。
ギーグ団長の書類とかの補佐な。って言っても戦えなければ仕方ないので訓練も勿論する。今もそれやっててギーグ団長が迎えに来てくれた所だ。
幸い体は覚えててくれて俺結構強いのよ。
「調子はどうだ?」
「大丈夫ですよ。あ、書類ですね。持ちます」
「いや、いい自分で持てる」
「それ俺がいる意味ないんじゃ……」
「いや、違う。その……あの……傍に……いて、くれれば、その……」
「はい?」
「……少し休んだらお茶を淹れに来てくれ……」
「あ、はい……」
何だ迎えに来てくれたんじゃないのか。
ガッカリ。
実は俺あれからギーグ団長に惚れてしまった。
だって優しいんだもんよ。チョロいって?ほっとけ。
ゲームではギーグ団長はよく出てくるモブで声しかなかったんだけどよくリフィルを何かと理由をつけて攻略対象者から離そうとするんだ。ゲームの時はそれこそリフィルが好きで攻略を邪魔してるってことだったんだけど……今思うと感づいてレフィの元へ戻そうとしてたんだこの人。
「……お前本当記憶無くす前よりも明るくなったよな」
ギーグ団長のことを考えてると後ろから声がかかった。稽古の相手をしてくれていたケイルだ。ちなみに俺に記憶がないことは騎士団の皆は知ってる。
いやだって近衛騎士からこっちだよ。どう考えても可笑しいじゃん。
だから正直に話しました。
記憶がないって。
原因?そんなのラックス王子とリフィルが一緒にいれば皆分かるよ。しかも俺が婚約破棄してあっちなんて結婚してんだから。
騎士団にいる時から皆俺とリフィルが婚約者だって知ってるから余計に。
「そぉ?それならいいんじゃね?」
「まぁな。俺も今のお前のが好きだからいいけどな。前のお前って何でも溜め込むタイプだったし危なっかしい感じもあったからな」
「……ケイル……」
「ただギーグ団長が好みってのはねぇな!と思う」
「……ケイル……」
そう。本人以外にはバレている。でもこれってあれなんかな。逆に応えられないってことなんかなぁ。
「それはない」
「じゃあ何で!?俺結構分かりやすくアピールしてるんだけど!?」
「ギーグ団長の見た目だろうなぁ。鬼だろ。どう見ても。あの人今までもあの見た目でお見合いとかでも相手泣かせてたっていうから」
「なん、だと!?」
「や、もうしてねぇよ。家の方も諦めてくれたからって聞いたことある」
「……………既成事実あればいけるかな」
「おい、騎士が犯罪予告してんじゃねぇよ。つーか何がお前のスイッチ押したの!?」
「だってお見合いって……」
「だから今はしてないって言ってんだろうが!せめてきちんと告白してからにしろよ!」
「分かった。してくる」
「待て。どっちをだ。しかもそんな軽さで決断て今までしてなかったってのも不安だし、むしろ今までどんなアピールしてきたのかも不安なんだが」
「え?媚薬入りの手作り料理を差し入れたりとか、夜にベッドに忍び込んだりとか」
「お前今の時点でもう立派な犯罪者じゃねぇか!」
「……でも手出してくんない」
「あ、大丈夫。俺が責任持って捕まえるから。うん、悪いな。……ちなみに何て言って誘ったんだ」
「同情で良いから慰めてください」
「それアウトだろ!どう考えても記憶ないのに無意識にリフィルのこと想って引きずってる感満載だろ!」
「えぇぇぇ!?あんなビッチどうでもいいよ!アイツ王子だけでなく他の人にまで手出してたんですけど!この前騎士団の方の部屋に移ろうと思って元の部屋の片付けしてたらベッドの下から上司とか後輩のバッチが出てきた時の衝撃!速攻でギーグ団長に言ってベッドとか捨ててもらったわ!」
「お前いくつ爆弾投下してんだボケェェェ!誰かリフィルのこと調べて来いぃぃぃ!」
「え?もう団長調べてるよ。俺も調べるの手伝ったし、毎日料理持ってった」
「誰かギーグ団長に解毒薬持っていってぇぇぇ!」
「でもダメ。抱きしめて寝てくれるだけ」
「ギーグ団長可哀想すぎる!それどう考えたってお前のこと考えて我慢してんじゃん!」
「しなくていいのに!」
「させてんのお前だよ!同情じゃ絶対お前が後悔するって分かってるからだろうよ!」
「なん、だと!?」
「きちんと、正面から、言葉で、いってこい」
「了解!」
後ろからダメだったら責任持って殺すとか聞こえた気がした。
ーーーーー
「ギーグさん!」
「ど、どうしたレフィ」
「俺ギーグさんが好きなんです!だから毎日媚薬入りの料理差し入れたし夜中にベッドに忍び込みました!」
「………それは本当か?」
「はい、だから本当は同情じゃなっ……」
あれ?俺空飛び……ベッドに投げられた?
「ずっと前からお前が好きだった。もう、逃がさない」
「ひゅあっ」
媚薬貯めてた分は全部回収しましたとだけ伝えとく。
あれからリフィルは処刑された。実は結婚前に肉体関係があっても別に問題はないのだがそれが同時に複数となるとそれは違う。コウノトリさんは混じり合った気からその二人の子供を作り運んでくれるので、複数と関係があると誰の子か分からなくなりコウノトリさんが死ぬ。あ、これ国家反逆罪になる。だって子宝授けてくれる霊獣が死ぬんだもの。
勿論相手が亡くなって別な人と結婚するとかもあるけど、それはきちんと半年経ってからコウノトリさんの所に行く。つまりあれだ、コウノトリさんの所に行く時は唯一の人とエッチしててそれ以外の人とは半年エッチしてなければ良いってことなんだけど、リフィルはそうじゃなかったってこと。貴族でも困るけどましてや王子の相手がそれじゃ困る。だってもう王子と結婚して一週間後にコウノトリさんの所に行くつもりだったんだものあの人。王子の相手が複数と関係持ってただけでも犯罪なのに霊獣を殺そうとしたってことでもう本人が何言おうが容赦なく処刑台でした。
第一王子?ただでさえ俺から奪ってたから守ってくれる人からの信用だだ下がりだよね。それでも危なかったんだけど今回のことで廃嫡されました。相手のこと調べてないのも悪いってことで。第二王子もいるしね!え?第一王子が廃嫡じゃ身分はって?平民ですけど。普通それなりのところに落とされるんだけども霊獣の命に関わっちゃったからね。平民じゃ生きていけないだろうから今も生きてるかしらんけどまぁ同じ相手と関係持ってた面子と一緒だから何とかやってんじゃね?いやむしろ憎しみあいかぶはっ!あ、うん、俺の兄含めて皆さん平民になられました。いやだって王子以外は結婚したの知ってて関係続けてたからね。コウノトリさん所に行くの止めろよっていうね。俺が持っていった証拠から調べ始めたら出るわ出るわ肉体関係持っちゃってる人達。
ちなみに俺は結婚前に手を出さなかった清い関係でした。まぁ普通貴族は婚約者いれば結婚してから初夜の流れが普通だからな。
あ、俺とギーグさんはあの後すぐ結婚しました。
新婚楽しんだらコウノトリさんに頼みにいくんだ!あ、俺婿に行くの。家は弟いるから。弟とは仲いいしギーグ団長位高いから両親も喜んでくれてます。やったね!
意外と目の前でドロッドロの昼ドラされても生きていけるどころか幸せになれるもんだね!って話しをしたら何故か同僚の皆には首を横に振られた。俺だけは敵にまわさないとか言われた。
何だよ、あの証拠見つけた後二人の祝福にってリフィルに監視魔法付きペンダントあげただけじゃん。自分は傍にいられないからせめてこれだけでもっ……て涙流しながら渡しただけじゃん。
ちなみにこの時の映像も皆で見たんだけど上層部とか顔引き攣ってギーグ団長に手綱とか何とか言ってた。その横で激しく同僚達も頷いたと思ったら俺見て悲鳴を上げてた。
余談だが俺が料理当番の時は必ず薬を使ってないかの検査がされる。
解せぬ。
リフィルくんはたぶん転生者。あ、じゃあ転生にチェックしとこう。逆ハーレム目指しちゃった所為で処刑。せめて王子だけにしとけば表には出れなかったけどまぁまぁ幸せだった。