交渉
何だよその言いぐさ!
と男に突っかかろうとした時、おっさんが割って入って来た。
「申し訳ありません」
頭を下げ、事情を説明し始める。
「そちらのおっしゃる通りです。 何でも頼めば貸してもらえる、というのは虫が良すぎますね。 私共も少し込み入った事情がございまして、今すぐにでもスキル付きのアクセサリーが必要なのです」
「何でそれに俺が協力しなければならない」
ムカつく野郎だ。
どうやら親切心ってもんを持ち合わせていないらしい。
だが、おっさんはそんな相手の気持ちを揺るがすことを言い放った。
「そのメガネを貸していただけたら、後で5000円払いましょう」
「貸すだけで5000だと?」
破格すぎる提案に、思わず男は乗って来た。
「ウソじゃないだろうな?」
「約束します。 明日の夜にどこかで待ち合わせて、差し上げましょう」
まさか、働いて稼いだ5000をそのままこいつに渡しちまうのか?
俺が文句を言うより先に、男は話に乗って来た。
「こんなオイシイ話は無いな。 明日の夜8時にここで待つ」
「分かりました」
おっさんはメガネを受け取ると、それをかけてアクセサリーを見渡した。
数分かけてアクセサリーを物色し終えると、メガネを返した。
「ありがとうございます」
その場を一旦離れ、おっさんに聞いた。
「なんであんな約束したんだよ! 5000って……」
「それなりの額じゃなければ乗ってこなかっただろう。 後日金を受け取るのは手間だからな。 だが、ここでアクセサリーを手に入れてしまえば後でいくらでも稼げるんだ。 安いものさ」
確かに、学校とかで普段顔を合わせてるなら500円でもいいが、わざわざどこかに出向いて金を受け取るってなったらその額じゃバカバカしい。
ここは無理やり自分を納得させる。
「で、見つかったのか?」
「ああ、体力アップの首飾りを発見した。 後はどうやって2000円を稼ぐか、だな」
手元にあるのは先日残った1500円から、宿代を差っ引いた500円のみ。
後は、鍋、ナイフ、火打石、植物図鑑、寝袋、リュックサック、ひのきの棒だ。
「何か売って金にするか?」
ここはフリーマーケットだ。
この中から2000円で売れるものがあるかも知れない。
しかし、どれも必需品で、売れるものではなかった。
「いや、売るのは得策ではない。 この道具と500円を使って何とかするんだ」
しばらく考えていると、おっさんがポンと手のひらを叩いた。
「よし、今から食材を購入しよう」
「食材…… 何か作ってそいつを売るのか?」
「そうだ。 ここで売られている食材を調理し、この道端で売る。 例えばたこ焼きとかなら、元の世界に住んでいた人間が食いついてきそうじゃないか?」
「たこ焼きか。 久しぶりに見たら思わず買っちまうかもな!」
こうして、俺たちは安く買える食材を探しに市場に向かった。
結局、500円で買える食材は限られていて、俺たちは1個30円のジャガイモを10個購入した。
更に、塩と油を購入し、500円を使い切った。
これで「フライドポテト」を作る。
ジャガイモを4等分し、油で揚げ、塩をかける。
最後に森から調達してきた木の皮を器代わりにし、1つ200円で道端で販売を始めた。
物珍しさで買っていく者。
ポテトを知っている者は、言わずもがな買っていく。
用意した10個のポテトは、1時間ほどで売り切れた。
「あっと言う間だったな」
そしてその金で首飾りを購入、そのままハロワ神殿に向かった。
張り出されていた「道路の舗装」の仕事を申し込むため、受付に向かう。
俺の場合は年齢の縛りに引っかからない為、書類に名前を書き込むだけで応募が完了した。
おっさんは体力アップのスキルが必須だが、首飾りのおかげでクリアし、俺たちは明日の早朝、街の西の現場に向かうよう指示が出された。




