表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/51

仲間

「ジェイムズッ!」


 ジェイムズは憎しみのこもった目でこちらを睨んでくる。

今にもボタンを押しそうな雰囲気だ。


「大切な人を奪われてしまった! もう、こうするしかないんですっ!」


「ふざけんなっ、お前らこそ、俺の大事な仲間をみんな殺しやがって! でもな、だからやり直そうなんてできねえんだよ! リセットボタンなんて都合のいいもんは世の中にはねえんだ」


 もし嫌なことがあるたびにリセットボタンなんて押されたら、周りはたまったもんじゃない。

俺も戦略系のシュミレーションゲームで、仲間が死んだからリセット、なんてよくやったが、その中の人間にしてみたらひどく迷惑な話だ。


 だが、今の俺の言葉は本心か?

手元にリセットボタンがあるこの状況で、俺だったらどうしていた?

……押さない、とは言い切れない。

 この世界で俺が得たもの、それは仲間だ。

それを失って、一体何が残る?

勇者としてこの世界に呼ばれたのなら、世界を救うことはできたかもしれない。

でも、だからどうした。

俺はこれだけの犠牲を払って、一体何を得たんだ?


「リセットボタンなんてない? ここにあるじゃないですか!」


 ジェイムズがいよいよそのボタンを押そうとしている。


「……だったら、お前に任せる」


「……!?」


 俺の意外な言葉に、ジェイムズは驚きと困惑の入り混じったような表情になった。


「突然、どうしたんですか……」


「俺が殺人の疑いをかけられて、元の世界に戻れるってなった時、俺は帰ろうと思った。 別に、この世界にそこまで執着しようとは思ってなかった。 心残りと言えば、ここに残した仲間の存在だ。 それが無くなっちまった今、この世界は俺にとってはどうでもいい世界なんだよ」


 さあ、押せよ、と言ったが中々ボタンを押そうとしない。

すると、ジェイムズの目から大粒の涙がこぼれ始めた。


「私には…… この世界しかなった。 私のようなしゃべるネズミなんて、生まれ変わっても気味悪がられるだけだ。 リセットした後の世界で、もう一度ご主人に会えるとは限らない……」


 こいつにとっては、逆にこの世界しかなかったってことか。

察するに、今まで人間に散々いじめられて生きて来たんだろう。

唯一拾ってくれたのが魔族の男だったってわけだ。


「……悪かった」


 気づいたら、俺は謝っていた。

やつの主人を奪ってしまったということに対して、罪悪感が沸いてきたからだ。


「……私の方こそ、すみませんでした」


 ジェイムズも頭を下げてきた。

俺の仲間を奪ってしまったということに対してだろう。


「……俺と一緒に来こいよ。 俺がお前の友達になってやるからよ」


「……うううっ」


 ジェイムズはその場に泣き崩れた。

もうボタンを押す意味はなくなった。






 荒野では、イフリートが石になっていた。

手には槍を持っていて、それが闘牛のような生物に突き刺さっており、そのまま息絶えていた。

 一体何が起こったのか、全く想像できなかったが、荒野を守っていた冒険者の姿がなく、最後まで事情を知ることはできなかった。

こうして、戦いは終結した。





 あの後、市民に頼んでみんなの亡骸を埋葬してもらうことになった。

俺に、あの遺体を拾い集めて埋葬することはとてもできそうにない。


 中央の街の外れにある墓地にやって来た。

墓参りなんてガラじゃなかったが、素直にしておきたいという気持ちになった。


「ゲンジにゃ、世話になったな。 俺も世話してやったけど」


 ゲンジの墓の前に、干し肉を置く。


「ドーモ君と一緒に旅ができて良かったぜ」


 ドーモ君の墓の前にドッグブリーダーのブレスレットを置く。


「ったく、買った土地どうすんだよ。 死んじまうんならキャバクラにでも行って散財しとくんだったな」

 

 おっさんの墓の前に、防御力アップの指輪を置く。

この後、俺は始まりの街に行く予定だ。

その前に、見送りをさせるために、スラムの少年を呼びに行った。


 少年を伴って、始まりの街に到着すると、祠に向かう。

氷の剣を持ち、鍵穴にささったままの異空間トンネルの鍵を回す。

すると、ゲートが開き、炎が噴き出した。

氷の剣でそれを凍らせ、階段を作る。


「俺が元の世界に戻ったら、3つになっちまった秘宝を隠してくれ。 光の剣と、氷の剣と、そこの鍵だ」


「分かったよ! 気を付けてね、ヒロキ兄ちゃん」


 ヒロキ兄ちゃんか。

なんか初めて名前呼ばれたような……


「じゃあな」






 俺は元の世界に戻って来た。

俺は今、ハローワークにいる。

仕事を紹介してもらい、明日から建築現場で働くことになった。

スキルのないこの世界でうまくやっていけるかは分からない。

それでも、分からない世界の冒険こそが、俺の人生の醍醐味だ!






終わり




 


終わりましたーーーっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ