カード
俺は特別に協会から「透視」スキルの皮手袋を借りることができた。
スラムの少年も誘ったが、デートで来れないと断られてしまった。
それを聞いて、少し憂鬱な気分に浸る。
俺はそんな気持ちを振り払い、スフィンクスの家にやって来た。
ノックして誰もいないのを確認すると、少年から教えてもらった針金による鍵開けのテクで潜入した。
中はさほど広く無く、物が雑多に置かれている。
「独り身だとやっぱこうなるよな」
あんまり部屋の掃除は行き届いていない。
そんなことより、部屋にある残留思念を集めるため、壁に立てかけてあった箒を掴んでホコリの掃き掃除を始めた。
残留思念はホコリのように空中を漂っているらしい。
雑巾でツボや本に付着しているホコリもキレイにとって、家の一か所に集める。
「ふうーっ、結構片付いたな」
見違えるようにキレイになった部屋を見渡し、俺は達成感に浸っていた。
「って、目的ちげーし」
危うく満足して帰りそうになったが、目的を思い出し、皮手袋を装着する。
そして、その手でホコリに触れると、部屋の中の記憶が頭の中に流れ始めた。
スフィンクスは毎日帰って来るなり、部屋に飾ってある絵画を外して何かを確認している。
部屋の中に一人なのに、しきりに背後を振り返って何かを気にしている映像も流れてきた。
そこまで見ると、俺はホコリから手を離した。
「何かに怯えてるみたいだな。 あと、絵画の裏に何かある……」
絵画のある場所に向かい、そっと額縁を持ち上げ、外した。
現れたのは、壁にフラットになるようはめ込まれたカードだった。
「……なんだこりゃ? メモリーカードか?」
まるで、プレ〇テのメモリーカードのように見える。
外してよく見てみようと手を伸ばすと、またしても映像が流れた。
「これは……!」
砂漠地帯の映像だ。
そして、その中に唯一建物が見える。
その建物を確認し、俺は驚愕した。
「ハロワ神殿の登頂部じゃねーか……」
そこで映像は途切れてしまった。
一体、どういうことだ?
カードをこっそり持ち出しては来たものの、俺は頭が混乱していた。
猿の〇星の主人公も、自由の女神を見た時はこんな気分だったに違いない。
ピラミッドの正体がまさかのハロワ神殿の登頂部だったなんて……
だが、腑に落ちない点ばかりが残る。
何で、ハロワ神殿の周りが砂漠だったのか?
そして、なぜ登頂部だけが残っていたのか?
「……もしかしたら、あれは未来の映像だったとか?」
仮に、あのカードが未来の物だとすれば説明がつくが、それならどうやって過去に持ち込んだ?
タイムマシンでもあるのだろうか?
「……そんな馬鹿な」
タイムマシンは非現実的だが、そういう時空魔法が存在するのだろうか?
それならまだ現実味はある。
「てか、それしか考えられねー」
俺はそう決めつけ、部屋に戻って行った。
ケガが完治するまで、病室での生活を余儀なくされていたが、おっさんやドーモ君が頻繁に来るから退屈はしなかった。
ドーモ君が見舞いに来た日、俺は例のカードを見せてみた。
「これを触ったら神殿の登頂部と砂漠の景色が見えてよ。 多分、未来の街の映像じゃねーかなと俺は思ってんだが」
「未来の街が砂漠に? もしかして、魔王の侵略を防げなかったんすかね?」
……なるほど、それで街が砂漠になっちまったのか。
「そう思うぜ。 で、更に推理を進めた結果、神殿の登頂部にイフリートがあると俺は睨んだ」
「神殿の登頂部…… あそこは立ち入り禁止になってるんす。 そんな身近に秘宝があっとは驚きっすね」
イフリートを神殿が守ってるんなら安心だが、あくまで推理だ。
確認しておかなければならない。
「ちょっと、夜侵入してみるぜ」
夜、神殿の階段を上って立ち入り禁止の区画に入り込む。
俺は探検家ってよりは、もはやただの泥棒だ。
扉を開けると、屋根裏のような狭い空間が現れた。
「魔導書じゃねーな。 なんだありゃ?」
部屋の真ん中に、奇妙なものが置かれていた。
まるでプ〇ステのような装置がある。
「……動いてんな」
その装置からは、シュルルル、とディスクが回転するような音が聞こえてくる。
更に、その装置にはスフィンクスの家で見つけたカードと同じものが刺さっていた。
「これ、マジでメモリーカードだったのか?」
「おい! 貴様、そこで何をしている!」
背後から響き渡った怒鳴り声に、思わずビクっとして振り向いた。
そこには神官がいた。
「あんた、この装置は何なんだよ。 もしかして、俺がもともと住んでた世界から持ち出して、一人で楽しんでたのか?」
「……その装置に触れてはならんぞ。 お前にだけ教えてやる。 その装置の右のボタンに触れたら、この世界は消滅し、リセットされる」
「な、何!?」
ゲームのリセットボタンと同じじゃねーかよっ!
「き、貴様…… なぜそのカードを!?」
神官は俺の持っていたカードに気が付いた。
「それは世界を記憶するカードだ。 この世に同じものは1枚しか存在しないハズだぞ」
だんだん見えてきましたね。




