懐かしいメンツ
「はっ!」
俺は病室のベッドで目が覚めた。
随分長いこと眠っていたような感じがし、頭がボーッとしている。
背中を触ると、ズキリ、と痛みが走った。
「ってえ……」
かなり深手だったはずだ。
あのまま魔族の男に放置されてたら俺は間違いなく死んでいただろう。
わざわざ氷の剣で俺を凍らせたことで、逆に出血を防ぐ形になったってわけか。
それでも、俺は何でこんなところにいるんだ?
すると、病室から誰かが入って来た。
「ドーモ君じゃねえか! 久しぶりだな!」
「大丈夫っすか? 原始人が街に来たときは大変な騒ぎだったんっすよ!」
……ここは中央の街か。
原始人が俺をここまで運んでくれたのか。
「ヒロキ、意識が戻ったようだな」
「お、おっさん!」
なんだか懐かしいメンツだ。
そして、色々と聞きたいことがある。
「俺はまだ犯罪者扱いされてんだろ?」
「それに関しては、疑いが晴れた」
おっさんが事情を説明してくれた。
冒険者協会には鑑識課という部署があって、「透視」スキルの皮手袋を使って捜査を進めたらしい。
このスキルは部屋に漂っている残留思念をかき集めて、触ることでその部屋で起こった出来事を過去を遡って見ることができるようだ。
あの夜セイマが言った、ウェアウルフから奪った人狼スキルだ、というセリフが決め手になったらしい。
「そんな便利なもんがあんなら、もっと慎重に審理を進めろっての……」
それでも内心、かなりホッとしたが。
「それよりもヒロキ、一体何があったんだ?」
今度は俺が事情を説明した。
異空間トンネルと氷の剣を手に入れ、魔族の男と協力して元の世界に戻れる扉を開けたこと。
その際、裏切られたこと。
「えええええええっ、4つの秘宝の内、2つも手に入れてたんっすか!?」
ドーモ君は相変わらずのナイスリアクションだ。
普段冷静なおっさんもこの時はさすがに驚いていた。
「全く、びっくりだな。 ほとんどの秘宝をお前が手に入れてしまったというわけだ。 もし犯罪の疑いがかけられていなければ英雄になっていたぞ」
……まあ、異空間トンネルに関しては、魔族の協力がなけりゃ100パー手に入れるのは不可能だったんだけどな。
氷の剣だってあの憎たらしいネズミがいなけりゃ死んでたし。
「はっきり言って運が良かった気がするけどな。 てか、結構一大事だぜ」
その内、魔族の男が魔王を連れて帰って来るはずだ。
それまでに、何かしら対抗する手を考えないといけない気がする。
とくれば……
「残りの秘宝、か」
おっさんが俺の思ってることを言い当てた。
「そうだ、最後の秘宝を取に行こうぜ」
俺は病室で原始人に文字を教えていた。
ハロワ神殿で仕事を応募するのに、名前を書かなければいけないからだ。
原始人は名前がなかったため、俺が適当に決めた。
「お前の名前はゲンジだ」
「ゲン、ジ」
カタカナで、ゲンジ、という文字を練習させていると、ある人物が部屋に入って来た。
スラムの少年だ。
バアン、と病室に勢いよく入って来た。
「はあ、はあ…… 見つけたよ! 王都の人間かも!」
「静かにしろ…… って、マジかっ!」
思わず俺まで声を張り上げちまった。
少年には街でイフリートの情報を集めてもらっていた。
キーワードはピラミッドだ。
おっさんの推測では、ピラミッドは王族の墓という説が有力だから、王族にまつわる者がヒントを握っているのではないか? とのことだった。
王都の人間はみんな流行り病で死んでしまったハズだったが、少年の調べで、この街に王都を追放された一族の者がいることが分かった。
何でも、最近まで身分を隠していたが、光の剣が協会に献上されたと知ると、その所有権を主張して来たとのことだ。
「スフィンクスって名前の独り身の女性だよ」
「よし、そいつに当たってみるか!」
ケガもある程度治ったし、俺は自分の足でスフィンクスのいる家までやって来た。
その家は一般の市民の住む一角にあり、木造の質素な造りの家だった。
富豪の家みたく塀で覆われているわけでもない。
コンコン、とノックすると、30代半ばくらいの、やや細身の女性が顔を出した。
「……何よ?」
「ちょっと聞きたいことがあってよ。 あんた、王都に住んでた一族の末裔なんだろ? ピラミッドについて何か知らねーか?」
「し、知るわけないじゃないっ」
バン! と扉を閉められた。
オイ、ちょっと待てよ! とドンドン扉を叩くも、一切反応が無くなってしまった。
「なんだよあいつ……」
俺は更にスフィンクスの身辺調査を進めることにした。
スフィンクスは朝の8時から仕事に出かけ、夜5時ごろ帰宅するようだ。
俺が訪れた日はたまたま休みの日だったらしい。
「……あれじゃ、絶対何も話してくれねーよ。 こうなったら部屋ン中に乗り込むしかねーかもな」
「乗り込んでどうするの? 下着でも盗むつもり?」
「んなわけあるかっ! 透視のスキルを借りてきて、情報を探るんだよ」




