恐竜
更に気球は上昇、石が冷えて降りてきたのは辺りが暗くなってきてからだった。
降りてきた時、ガクガク震えて話せなかったジェイムズだったが、次第に落ちつきを取り戻した。
「どうだった?」
「……剣が描かれていました。 そして、辺りが暗くなってくると、剣のライン上の一カ所が光ったんです」
剣が光った?
どういうことだ……
「そこに行けば分かることか。 場所はどの辺りだよ」
「案内します。 方角は分かりますので」
翌日、準備を整えてから、その光った場所を目指すことにした。
スライムとサボテンだらけの荒野をひたすら歩く。
およそ1時間ほどでその場所に到着した。
「洞窟か」
中に入ると、どういう訳か松明は必要なく、モクモクと発光した霧のようなものが立ちこめている。
更に、うっすらと肌寒く、まるで鍾乳洞のようだ。
地面もツルツルと滑りやすい。
「なんだここは…… 早朝の霧の中を歩いてるみてーだ」
「気をつけて下さい、ヒロキさん」
奥に進んでいくと、俺は尻餅を付いた。
「ってえ!」
「言ったそばから転ばないで下さいよ……」
霧におおわれ、イマイチ状況が分からなかったが、体が流されている感覚がある。
どうやら氷った斜面を滑リ出してしまったらしい。
「やべえ、止まらねーぞ……」
ツツツ、とそのまま体は流され、突然地面がなくなった。
眼下に真っ白な森が見えた。
俺は穴から投げ出されて、その森の上に落とされた。
「がはっ」
木と雪がクッションになり、どうにか助かった。
地上を見上げると、かなりの高さから落ちてきたというのが分かる。
「……この前よりずっとたけーな」
王都の時は5、6メーター程だったが、今回は20メーターはあるかも知れない。
「……よく助かったな」
しかし、驚くのはこれからだった。
地下空間はかなりの広さがあり、そこには氷の世界が広がっていた。
「地球空洞説は正しかったんだ……」
ジェイムズがそんなことを呟いた。
「なんだよそれ?」
「ある学者が提示した、地球の中心は空洞になっているという説です。 この空間はそれを実証しています」
……地球の中心はマントルじゃなかったか?
まあ、ここがもはや俺の知ってる地球じゃなければ、そういうのもありかも知れない。
森を抜けると、俺は叫び声を上げた。
「こいつは…… トリケラトプスじゃねーかっ!」
巨大な草食恐竜だが、氷付けのため襲ってはこない。
俺はいやなことを思いついた。
「まさか、氷の剣を手にした瞬間、こいつらが動き出すとか?」
「まさか、そんなベタな」
……いや、この世界にはたまにベタベタなトラップが仕掛けてある。
「入り口に戻る方法を考えとかねーと、こいつらに食われちまうかもな」
「……ネズミなんて、腹の足しにならないですよ」
だが、一体どうすれば地上に帰れるのか。
ロープを結んで降りてくるのが正確だったのだろうが、もはや後の祭りだった。
歩き回った結果、地下空間は東京ドーム1個分くらいの広さ (適当)があることが分かった。
それ以上でかかったら氷の剣を探しきれなかっただろうが、幸い、開けた場所にそれは突き刺さっていた。
「引き抜く前に、脱出方法を検討すっか」
穴は中空にあり、壁をよじ登ってアクセスはできない。
20メーター近いはしごを作ってかけるのが、一番現実的だという結論に至った。
「必要な材料は、ロープ、木を切る道具か。 ナイフじゃ代用できそうにねーな」
「氷の剣ならどうですかね?」
剣じゃ無理だろう。
ギザギザのノコギリみたいな刃物じゃなけりゃ、はしごに使えるような木は切断できない。
「ロープは何かツタみたいな植物で代用できねーかな……」
材料を探してウロウロしてみるが、結局ツタも見つからなかった。
「……もう氷の剣を引き抜いてみるしかねーか」
氷の剣がどういった能力を発揮するかは分からなかったが、もし自在に氷を操れるのなら、ギザギザの氷を剣に纏わせれば、ノコギリとして使えるかも知れない。
「行くぜ」
ぐっと手に力を込め、引き抜いた。
剣は抜けて、回りの氷も溶け始める。
ズン、ズンと地響きがし、恐竜たちが動き始めたようだ。
問題 ロープなしでハシゴを組むには?
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