気球
俺はあーでもない、こーでもないと思惑を巡らせた。
「この街にあるもんでどうやって気球を作りゃいいと思う?」
「キキュウですか? 初めて聞きますね」
ジェイムズがいつの間にか入ってきたポケットから顔を出して聞いてくる。
「気球ってのは人を乗せて空を飛ぶバルーンだ。 てか、バルーンが分かんねーか」
「人を乗せて空を飛ぶ…… ヒロキさんのやって来た世界にはすごいものがあるんですね」
もし気球があれば、冒険者の旅は一気に楽になるだろうし、未開地なんてなくなってしまうに違いない。
「で、簡単に作れるもんなんですか?」
……それが問題だ。
必要なのはガスバーナー、空気をため込むバルーン、ジェイムズを入れる籠か。
しかし、この時点でガスバーナーとバルーンがない。
何かで代用する必要がある。
「ちょっと店をウロウロしてみっか」
やって来たのはサバイバルグッズを扱っているカピバラという店だ。
最初は、ここで必要なものを揃えるのが基本だ。
「さすがにこの世界にはねぇよな……」
しかし、そこでバルーンの代わりになるものを発見した。
寝袋である。
「生地もしっかりしてるし、使えるかもしれねーな」
俺はついでに必需品を購入することにした。
リュック、寝袋、ナイフ、火打ち石、鍋、食器類で、トータル14,000円。
所持金の中でギリギリ収まった。
後は、火を放つものだ。
「パッと思いつくのは魔法か」
しかし、俺はまだ火を放つ魔法を見たことがなかった。
実在するにしても、火力が強すぎれば袋が燃えるし、継続して熱を発し続けるもので無くてはならない。
ここまで考えて、魔法にはあまり期待できないな、と思った。
「熱を発し続けるもの……」
俺は街の中をウロウロして、それに該当するものがないか探し始めた。
だが、そんなものはせいぜい太陽くらいだ。
「太陽よりずっと火の弱いもんがあれば丁度いいんだけどな」
「太陽を手に入れようなんて、いつか翼をもがれますよ?」
……どこぞのイカロスだよ。
さすがにそんな物は見当たらず、結局日が暮れてしまった。
「やっべ、所持金もほとんどねーし。 今日泊まったら明日以降また金を稼がねーと……」
熱を発するものを見つけなければ、先に進むことはできない。
頭を抱えながら翌日を迎え、朝食を取りに食堂に降りた。
今日のメニューは石焼きビビンバだ。
いつもなら、この世界で石焼きビビンバかよ! とツッコミを入れていたに違いない。
「石を焼けばいいのか!」
一文無しになった俺は、まず初心者の館で1000円を稼ぎ、その金で足つきの金網を購入。
それをひっくり返し、寝袋をかぶせる。
これで簡単な気球が出来上がった。
次に、広場に捨ててある新聞をかき集めて、ナイフと火打ち石で火をつける。
落ちてる小石を何個か入れて、加熱。
焼け石を金網に乗せて、袋の中の空気を温める。
「ジェイムズ、乗れ!」
「だ、大丈夫ですか?」
「多分大丈夫だ!」
半ば無理やり乗せ、しばらくすると寝袋が膨張して、気球が浮き始めた。
「おおおーっ」
そのままふわふわと上昇し、空を飛んだ。
「ヒロキさん! めちゃくちゃ恐いんですけどっ」
ふん、ざまぁみろ……
「下をよく見ろ! なんか見当たらないか?」
「こ、怖くてそれどころじゃ…… あーっ!」
ジェイムズが雄叫びを上げた。
「地上絵です! まだよく分かりませんけど…… 何かが荒野に描かれています!」




