初心者の館
俺はその1000円をありがたく頂戴し、宿屋に向かった。
500円を支払い、304号室の鍵を受け取る。
「やっとベッドで寝れるぜーっ!」
ドサリ、とベッドに倒れ込むと、いびきを立てて眠りに着いた。
翌日、朝食を取り、体を洗う為に井戸に向かった。
井戸には毎日行列が出来ている。
この街には、常に一定以上の人間が住んでいて、何人かが街を出ると、見計らったかのように新しい人がやってくる。
こいつらを相手にした商売ができるかも知れない……
俺は列に並びながらそんなことを考えていた。
「試しにやってみっか」
俺が出した結論、それは「初心者の館」の開設だ。
といっても、営業所を構える金はない。
せめて机と看板くらいは欲しかったが、それもないため道端に座り込んで、ヒント1000円から、という紙を置いた。
さすがに生活がかかっているためタダでは教えられないが、1000円払えば必要な情報はほぼ教えた。
俺と似たようなことをしてるやつもいたが、少し荒野を徘徊して戻ってきただけのやつの情報は、はっきり言って役に立たない。
外道サボテンのことを教えてなかったし、スライムへの対処もはまった時のことを教えていなかった。
その日はトータルで5人に情報を提供し、5000円を手に入れた。
「まあまあ稼げるな」
次の日も同じようにして道端で情報を売る。
1回荒野に出て戻ってくる人もいるため、そういう人間は何件か別な情報屋を使う。
「あんたの情報が一番確実だよ。 安いし」
そういうリベンジャーの旅人からは俺の情報は絶賛された。
「とっといてくれ、1000円じゃ安すぎる」
手渡されたのは1万だった。
それも有難く頂戴し、その日は1万5000円の売り上げとなった。
少し金に余裕が出来た為、服を新調し、椅子も購入。
もっと金が貯まったらテーブルと看板を設置する予定だ。
しかし、その日の夕方、思わぬ客人がやって来た。
「なんだ?」
街の中を、傷だらけの男が棒を杖代わりにして、やっとの様子で歩いている。
皆道を開けて、何事かとその男のことを見ていたが、とうとうぶっ倒れた。
「もしかしてこいつ……」
魔族と戦って返り討ちにあった冒険者か?
すると、その男のポケットからねずみ色の生き物が飛び出してきた。
「あっ、お前……」
「ヒロキさん、3日ぶりです!」
出てきたのはジェイムズだった。
「戦いはどうなった?」
「我々の勝利です」
相手がどれくらいの数かは分からなかったが、ゴブリンとたった一人の魔族に全滅させられたのか……
「しかし、ご主人は片腕を失ってしまわれました。 冒険者は再度打って出てくるでしょう。 早急に氷の剣を探さなければなりません」
初心者の館をやってる場合じゃないか。
しかし、どうやって氷の剣を探す?
手がかりは荒野に剣があるということだけだ。
図書館の本にそれ以上のヒントは無かった気がする。
「空でも飛んで、回りを見渡せりゃいいんだがな。 ジェイムズ、お前鳥の知り合いいねーのかよ?」
「ネズミに鳥の知り合いはいないでしょう。 それこそ人間に魔族の知り合いがいるようなものですよ」
……それって俺じゃねーか。
「気球…… 簡単な気球が作れれば、お前を偵察に使えるかも知れないぜ」
突拍子もないアイデアだったが、俺はそんなことを思いついた。
作者は初心者の館はスルーします。




