秘宝の在処
しばらく待っていると、何やら霧が立ち込めてきた。
「おい、なんかもやって来たぜ」
「これは…… 海霧ですね。 暖かい空気が海面によって冷やされて、空気中の水分が凝結することにより発生するものです」
ジェイムズがポケットから顔を出して答える。
なんかパソコンを使ってる時に出てくるヘルプのイルカに似てるな。
「おい! あれって!」
その霧に巨大な影が映し出された。
間違いなく、幽霊船である。
俺はジェイムズに指示を出した。
「ゴブリンにあれに近づくよう言ってくれ!」
ゴブリンたちがオールを漕いで、船を寄せる。
俺はかぎ爪ロープを振り回して、船の手すり目がけて投げた。
爪が船の淵に引っかかると、俺は船の横っ腹をつたって中に入り込んだ。
ゴブリンたちも後を追って中に入る。
死者の指輪を装着し、どれくらい亡霊が潜んでいるのかを目視しようとした。
しかし……
「あれ? 全然いねえ」
見えるのは、残留思念のような形をとどめない魂のみだ。
俺はそのまま中を散策することにした。
船室をくまなくチェックするも、変わったものは見当たらない。
「おかしいな…… アテが外れたか?」
俺は半ばあきらめて、船のデッキに寝転がった。
「何かしら手がかりを見つけねーと帰るに帰れねーんだけどな……」
すると、俺は何かを発見した。
マストの先っちょにある展望台に、何者かがいる。
「あんな所に幽霊がいら」
しかし、だいぶ高い。
あそこまで行くのはかなり勇気がいる。
「行きましょうよ」
「……マジか」
ダメ元で降りて来い! と叫んでみたものの、幽霊は反応を示さない。
「くっそ、やっぱ行くしかねえか……」
マストには梯子が付いており、それを上って行けば展望台までたどり着けるが、よっぽどの用がない限りは絶対使わないだろう。
「はあ、はあ……」
俺はどうにか展望台までたどり着いた。
幽霊は隅の方で縮こまっており、何やら怯えているようにも見える。
「ちょっと教えて欲しいんだけどさ……」
しかし、幽霊と話をすることはできない。
「……しまったな」
本でもあれば、文字を指差して会話することも可能だが……
とその時、幽霊が展望台から飛び降りて逃げ出した。
「あっ! 待ちやがれ!」
「ヒロキさん、一旦石に入れた方がいいかもです」
そうだ、忘れていた。
「入れ!」
幽霊は何かに引っ張られるように石の中に入っていった。
下のデッキに降りて、再度船の中を散策する。
会話するための適当な本が欲しかった。
「まあ、これでいいか」
見つけたのは、ドラゴンの生態、という本だ。
「出ろ」
そうコールし、幽霊を一旦外に出す。
「聞きたいことがある。 この船に異空間トンネルの隠し場所を示した手がかりはないか? この本の文字を指差して答えてくれ」
すると、大人しくなった幽霊は文字を指差し始めた。
「ち、ず、は、と、ら、れ、た……」
地図は取られた?
既に何者かがこの船に侵入したってことか!
幽霊の説明をまとめるとこうだ。
つい最近、ある人間が船に乗り込んで来たそうだ。
その際、持っていた剣で片っ端から仲間を斬っていったらしい。
そして、ドラゴンアイランドに隠してある秘宝の地図を奪って立ち去ったそうだ。
「……光の剣を持ちだした冒険者の仕業だな」
幽霊を斬れる剣は光の剣しかないハズだ。
「ヒロキさん、先を越されたみたいですね」
「……」
これは一刻の猶予もないかもしれない。
早くしなければ冒険者に先を越され、異空間トンネルを取られてしまう。
そうなったら、あの魔族は何をするか分からない。
「ドラゴンアイランドに向かうぞ。 冒険者の後を追うんだ」
幽霊の話では、その冒険者が現れたのは一週間前とのことだった。
急いで自分の船に戻り、そのままドラゴンアイランドに向かうべく、ゴブリンに指示を出した。
三角地帯を脱し、更に先を目指す。
「できるだけ急げ!」
すると突然、ゴブリンが漕ぐのをやめた。
「どうした?」
「ゴブ……」
そう言いながら、後ろを指さす。
後ろを振り向くと、似たような船がこちらに向かってくるのが見えた。
「……チャンスだ」
それは、一旦帰還してから、準備をして戻って来た冒険者の部隊と思われた。




