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幽霊船へ

 魔族の男は説明を始めた。


「かつて王都の船団がドラゴンアイランドに異空間トンネルを隠しました。 その証拠に、以前我々が調査に向かった際、人が立ち入った形跡があったからです。 そして、その船団が王都に戻った記録も残っておらず、魔の三角地帯と呼ばれる海域に、その船が時折出没するとの噂が昔から存在します。 このことから、船団は秘宝を隠すことはできたものの、帰り道に何らかの原因で遭難してしまった、と憶測できます」


「……なるほどな。 だからそのさまよってる船に接触しようってわけか」


「そうです。 その船に何らかの手がかりがあるハズです」


 幽霊船を目指すのは分かったが、どこからどうやってそこに向かえばいい?

中央の街に戻ったところで、俺は犯罪者として知れ渡っちまってる恐れがあったし、うかつに顔は出せない気がする。


「俺は街には戻れないぜ? どうやって三角地帯まで向かえばいい?」


「船はこちらで用意します。 ゴブリンたちに船を作るよう命令しましょう。 そして、三角地帯にはジェイムズが案内します」


 ひょこり、と俺のポケットからネズミが顔を出す。


「私は方角に敏感なので、そこまで案内差し上げます」


 こうして、船の準備がスタートした。

後から聞いた話だと、この森から北東に向かったところに中央の街があるらしい。

しかし、相当な距離があるようだ。

ちなみに北を直進すればレンガの街にたどり着く。


 一週間後、船が完成した。

以前クジラを捕りに行った際使ったような、小型の船だ。


「必要なものは船に積んでおきました。 ゴブリンたちに海まで持っていくよう命令してあるので、ヒロキさんはジェイムズに従ってここから東に向かい、海を目指してください。 それと、ドラゴンアイランドについて私の知っていることを話しておきます」


 ドラゴンアイランド……

名前からして、ドラゴンがうじゃうじゃいるような所か?

そもそもゲームでドラゴンっつったら、大体強力なモンスターだよな。

すっげー不安なんだが……


「ドラゴンアイランドに住むドラゴンは2匹。 空を飛んで侵入者を察知するスカイドラゴン。 そして、空から察知できない森からの侵入者を察知するフォレストドラゴンです。 スカイドラゴンの目をくらますために、入り口は入り江の洞窟からになります。 そこから出た所が森となっていますが、一つ注意することがあります。 それは、この島には特殊な磁場が働いていて、スキルが使えません」


 ……スキルが使えない?

それじゃ、どうやって戦えばいいんだ?


「索敵もないんじゃ、突然ドラゴンに遭遇する事態もあるってことだよな?」


「……あり得ますね」


 おいおい、とんでもない所に送り出すき満々じゃねーかよ!

だから人にやらせようとしてんのか?


「船団の人間が秘宝を隠したということは、少なくともそこにたどり着く方法はあるということでしょう。 対策はその手がかりを見つけてからということで」


 ……まあ、段階を踏むのは当然だよな。


「分かった。 とりあえず幽霊船を探すぜ」


「私の方から、ゴブリンを2匹お貸しします。 もし不足の事態に陥ったら、ゴブリンを使って対処してください。 ジェイムズの命令なら聞きますので」


 俺はゴブリン2匹と、ジェイムズを胸ポケットに入れて、森を出発した。

小屋から西に進んでおよそ20分後、浜辺に到着した。

そこに船が置かれており、かぎ爪付きロープ、食料 (干し肉)、飲み水、寝袋など必要なものが積まれていた。

俺が乗り込むと、ゴブリンに船を押すよう命じる。

オールを漕ぐのもゴブリンの役目なので、俺は何もしなくてもいい。


「楽ちんだな」


 そのまま3点の岩場を結んだ魔の三角地帯を目指す。


「釣り竿でも持ってくりゃ良かったな」


 船に揺られながらそんなことをつぶやく。

三角地帯まではまだかかりそうだ。






 1日、2日と経過した。


「頑張れお前ら~」


 俺は横になりながらひたすら三角地帯に到着するのを待つ。

海上ってのは陸地以上に暇だ。


「もう三角地帯に入ってますね」


 突然ジェイムズがそんなことを言った。


「ほんとか?」


「ええ、あの岩場が多分三角地帯の一点、そしてあれとあれも」


 遠目から3つの岩場が見える。

どうやら目的の海域に到着したらしい。


「……だけど、肝心の幽霊船はどこだよ」


「昼間は現れないんですかね?」


 ……いや、今まであった幽霊は昼夜関係なくそこら辺をうろついていた。


「しばらく待ってみようぜ」


 

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